レスチェンコの弾くバッハ編曲

ロシアの若手ピアニスト、ポリーナ・レスチェンコがバッハの編曲モノもいくつか録音しているため、紹介したいと思います。このピアニストは、かのアルゲリッチがお勧めの新鋭の一人で、過去にEMIからリリースされた「Bach/Brahms/Chopin: Piano Recital」というCDでこの人を知りました。リストとブラームスのパガニーニ変奏曲や、ショパンの華麗なるポロネーズなどの華やかな曲のなかで、落ち着いた佇まいのラルゴ(バッハ=フェインベルグ)が演奏されます。確か2003年の別府アルゲリッチ音楽祭でもこの曲が演奏され、さらに最近では2007年7月にすみだトリフォニーでも演奏されました。NHKの連載番組「ぴあのピア」でも放映されましたが、残念ながらこのラルゴは途中でカットされてしまっていました。このラルゴは私の最もお気に入りな曲の一つですが、しかし、レスチェンコのこの曲の演奏はあまり気に入りませんでした。独立した3声のメロディーのはずが、右手のメロディー+左手の伴奏みたいに聞こえてきてしまう演奏です。またいい気分で聴いている中で突然大音量の低音が鳴り響いたりするところもいただけません。
一方で、以前の記事、リスト編曲の前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543として、この曲についてのいろいろな解釈のCDを紹介しましたが、このレスチェンコの「Liszt Recital」(このアルバムはハイブリッド・タイプのSACDです)に収録された同曲の演奏は、最も過激な解釈でかつピアノ独特の良さが出ていると思います。度を越した自由な溜めや、踏みっぱなしにしたダンパーペダル。はじめてこの録音を聴いたときは相当びっくりしました。原曲を敢えて思い出さないように聴くこと(これが大切!)で、自然なピアノ曲として聴こえてきます。こんなリストの曲がありそうです。このCDではリストのソナタやファウスト・ワルツなども驚異的なテクニックで魅せます。前述のラルゴはイマイチでしたが、前奏曲とフーガ イ短調の演奏は一聴の価値アリです。今後他のバッハの超絶技巧編曲もぜひ手がけて欲しいものです。
Liszt Recital収録曲目
バッハ=リスト/前奏曲とフーガ イ短調
バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ
・グノー/リスト/歌劇『ファウスト』のワルツ
・リスト/ピアノ・ソナタ ロ短調
Bach/Brahms/Chopin: Piano Recital収録曲目
・リスト/スペイン狂詩曲
・クライスラー=ラフマニノフ/愛の悲しみ
・ショパン/ロンド 作品16
・ブラームス/パガニーニ変奏曲
バッハ=フェインベルグ/ラルゴ
・リスト/パガニーニ練習曲 第6番
・ショパン/アンダンテスピアナートと華麗なるポロネーズ
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