F.Busoni nach Bach Piano Works

今回もCDの紹介です。パドヴァ(Andrea Padova)の演奏で、「F.Busoni nach Bach Piano Works」というCDです。このピアニストは、過去にもバッハのややマイナーな幻想曲や組曲を収録したCDをいくつか出していましたが、このCDはブゾーニの編曲モノが集められています。その選曲がまた、シャコンヌやオルガン前奏曲とフーガ、コラール等の一般的な編曲ではなく、やはりマイナーな編曲が集められている点が彼らしいです。

まず、「前奏曲、フーガとアレグロ」は本来リュートのための曲とみなされていますが、そのままピアノで演奏することも可能です。原曲は短い前奏曲、中規模のフーガ、短いアレグロがそれぞれ独立した3曲としてまとめられていますが、ブゾーニは曲集の注釈の中で、フーガとアレグロをまとめて演奏することを提案しています。
Bach=Busoni/ Prelude, Fugue and Allegro BWV 998
(Bach=Busoni/ Prelude, Fugue and Allegro BWV 998)
この譜例はフーガとアレグロの移行部分。フーガの後半部で切れ目無くアレグロに移行し、アレグロの最後にフーガが厚くなって回帰するという構成で、聞いていても自然な流れになっています。つまり、「前奏曲とアレグロ付フーガ」になっているわけです。この編曲での録音は、今まではブゾーニの弟子のエゴン・ペトリによる古い録音がひとつあっただけでしたが、これでクリアなサウンドで聞けるようになったわけです。

次の「幻想曲、アダージョとフーガ」も、面白い構成の編曲です。原曲である幻想曲とフーガ BWV 906は、フーガが未完成だったこともあり一般的には幻想曲のみがよく演奏されますが、ブゾーニは未完のフーガを補筆(というか自分流に展開)させて、間にアダージョ BWV 968を挿入しています。このアダージョは無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番の第1楽章を、バッハ自身(偽作説もありますが)がチェンバロ用に編曲したものです。

もうひとつ紹介しておきたいのが、「前奏曲とフーガ、フーガと装飾」(私の勝手な直訳。原題はPreludio, fuga e fuga figurata)です。原曲は平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第5番の前奏曲とフーガ ニ長調で、ほぼそのまま前奏曲とフーガが演奏された後に、前奏曲の走句とフーガが同時に演奏されます。以下の譜例を見てください。
Busoni/ Preludio, fuga e fuga figurata
(Busoni/ Preludio, fuga e fuga figurata)

なんとうまいことを思いついたことでしょう。ブゾーニ版の平均律曲集には様々な練習のための変奏が掲載されており、このアイデアも載っています。後に、ブゾーニの曲集「若者のために」(An die Jugend)の中に収められました。

他の収録曲については、またいつか紹介します。


  • Preludio, fuga e allegro

  • Fantasia, adagio e fuga

  • Fantasia, fuga, andante e scherzo

  • Fantasia nach Bach

  • Preludio, fuga e fuga figurata

  • Fantasia in modo antico Op.33b No.4

  • Drei Albumblatter


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    プロフィール

    田中 博幸 (Hiroyuki Tanaka
    hiro105@cc.rim.or.jp
    音楽、バッハ、ピアノが好きなサラリーマン。バッハのピアノ編曲に関する楽譜/音源を収集、研究している。フーガやカノンなどの対位法的楽曲を好む。ピアノの他、和声と対位法を勉強中。片手のためのピアノ編曲を創作。「左手のアーカイブ」プロジェクトで編曲家として活動。
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