この組曲全曲を通して編曲されており、チェリストのパブロ・カザルスに献呈されています。
楽譜にも「ピアノのために大いに自由な改作を施したもの」と記されており、
低・高音域の拡大、和声の多様化、複数旋律の同時進行等の技法を駆使して
見事なピアノ曲として生まれ変わっています(右の譜例参照)。楽譜に記されたゴドフスキー本人の注釈では、
「私が追加した音・メロディーすべてがバッハの原曲から導き出される音で、それを省く理由はない」
と書かれています。確かにオリジナルのクラヴィーア曲を勉強する時にも、
楽譜上に印刷されていない隠れたメロディーを意識するようにレッスンで教えられますが、
それが譜面上に全て起こされているのですね。もちろんそれが音楽的に自然となるように再構築されて。
ただ組曲全曲通して演奏する場合、「前奏曲」が極めて荘厳な音楽であるのに対して、
終曲のジーグは非常におとなしく終わります。無伴奏チェロで全曲通して聴くのと比べると、
全曲を通じたバランスに違和感があると感じるのは私だけではないと思います。
楽譜に記されたゴドフスキーの注釈をよく読んでみると、
「このハ短調組曲は、演奏会で弾く場合必ずしも原曲と同じ順序で弾く必要はないだろう。
アルマンドは前奏曲と同じくらいこの組曲の始まりにふさわしい。そしてジーグの後、
最後に前奏曲とフーガを演奏するとよい」
と書かれています。なるほど、この曲の前奏曲をゴドフスキーは「前奏曲」と「フーガ」に分けており、
フーガのコーダは全曲を締めくくるのにふさわしいと思えます。
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(Bach=Godowsky:Prelude and Fugue -beginning-)
(Bach=Godowsky:Prelude and Fugue -development of fugue-)
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