この曲の前奏曲の始まりはゆるやかで、気づくと急激に走り上がる単声のパッセージがあり、
その後半音階の下降、最後に盛り上がってフーガに続きます。
そんな即興的な前奏曲の中に実はフーガの主題がほのめかされており、
フーガの最後には前奏曲の曲想を回帰しているという全体の統一感があります。
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バッハ=シロティ/前奏曲 ト短調
この曲は、楽譜に書いてある情報によるとサーントによる編曲の改編です。
バッハ=ブゾーニのシャコンヌのシロティ改編版のように元編曲より若干音を減らして再構築しています。
サーント編は前奏曲とフーガを通して編曲していますが、シロティはなぜ前奏曲だけをとりあげたのか不明です。
この曲は明らかにフーガがないと引き締まりません。前奏曲はどちらかというと即興的な楽想ですが、
その前奏曲の中ではっきりとフーガの主題が提示されているわけですから。
とはいえこの前奏曲の編曲はピアノを使うことによる効果をうまく引き出しており、
右下の譜例を見ていただくとわかるかと思いますが、低音から高音まで使うことにより壮麗な響きを演出しています。
サーント編よりもすっきりとしながらも演奏効果が高くなっていると思います。
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(Bach=Siloti)
(Bach=Siloti)
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バッハ=サーント/前奏曲とフーガ ト短調
上記のシロティ編の元となったサーント編は、フーガまで通して編曲されています。右の譜例はフーガの冒頭です。
ブゾーニの弟子ということもあり、編曲は全体的に重厚。
右下の譜例、フーガの後半部ではテーマをオクターブにし、広い音域を使いながら分厚く華やかな展開を見せます。
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(Bach=Szanto)
(Bach=Szanto)
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