数あるオルガン自由曲の中でも、音の動きが美しく、とりわけ人気の高い名曲です。
比較的短い前奏曲は不協和音が効果的に登場し自由に展開されますが、
後に続く均整の取れたフーガによって曲全体が引き締まっています。
バッハ=リスト
リスト編のこの曲は、数あるバッハのピアノ編曲版の中でも、トッカータとフーガ ニ短調と同様に、
頻繁に演奏される曲の一つではないでしょうか。
CDで聴くことができる録音も、いろいろなアプローチで演奏されており、聴き比べをするのが楽しい曲でもあります。
ペダルをめいいっぱい活用し強弱・緩急をつけることであたかもロマン派の楽曲のようになりますし、
ペダルを控えめにしノンレガートで軽く奏せばクラヴィーア曲のような趣になります。
これはバッハの原曲に非常に忠実で、演奏表現の指示や新たな音符はほとんど追加されていないことがかえって功を奏しているのでしょう。
楽譜はたくさんの出版社から出ており、おそらくある程度の規模の店なら必ず手に入れることができます。
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(Prelude)
(Fugue)
<楽譜>
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バッハ=ターリアピエトラ
ブゾーニの弟子・ターリアピエトラの編曲は、リスト編の不足した響きを補うかのように、
要所要所で低音を活用して響きを豊かにしています。
右の譜例を見てもわかるとおり前奏曲の冒頭からオクターブで演奏させます。
楽譜は半世紀くらい前にリコルディから出版されたようですが、以前コピーさせてもらったものしか持ってません。
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(Bach=Tagliapietra/Prelude)
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バッハ=小林
小林先生の編曲ではリスト編よりも高い音域を多く使っているのが特徴的です。
ソプラノのメロディーが1オクターブ高い音域が指定されていることもいくつかあり、
ピアノならではの独特の響きを得るために効果的な手法だと思います。
コーダに向かうにつれ三段譜になり、広い音域の音を響かせ壮大な雰囲気を作り上げるのに成功しています(右の譜例を参照)。
フーガの後半では、リスト編で終始低音オクターブの連続に徹している部分について、単音からオクターブに、
さらに3オクターブから4オクターブまで次第に拡大し、クライマックスに向けて盛り上げていく様は
よりインパクトの強いものになっています。
なお、楽譜は全音のピアノピースとして出版されており、容易に入手できます。
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(Bach=Kobayashi/Prelude - coda)
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