レイハ(ライヒャ)『ピアノのための36のフーガ』の出版

前回の更新から3ヶ月以上が経ってしまいました。今年の春から、再び楽譜出版のお手伝いをさせていただきました。アントニーン・レイハ(Antonín Rejcha, 1770-1836, ドイツ名:アントン・ライヒャ)の曲集、『ピアノのための36のフーガ 作品36』で、楽譜の校訂と、解説の執筆を担当させていただきました。何しろ情報が少なく苦労しましたが、大変勉強になりました。解説は、作曲者の紹介、曲集の特徴、フーガ主題の譜例付きの各曲解説などを合わせて10ページほど書きました。
私がこの曲集に着目したのは、中に「バッハの主題によるフーガ」という曲が含まれていたためであり、以前このページでも最古のバッハ・パラフレーズとして紹介しました。それ以外にも、詳しく見ていくと大変興味深い内容満載の曲集でした。ベートーヴェンと同年生まれ、曲集はハイドンに献呈、1805年に出版という年代からみても、非常に先進的な曲集です。フーガ答唱の自由な応答(5度・4度以外も多用)、突発的な転調。跳躍の多い主題旋律。半音階を多用し曖昧な調性感。混合拍子・複合拍子のフーガ。有名な作曲家の主題の借用。このように伝統的なフーガ手法のルールを大きく拡大解釈した独特の理論を様々な形で実践しています。
決して一般に広く求められる曲集ではありませんが、演奏者にとっての珍しいレパートリーとしてだけでなく、作曲学習者の実践的手引きの一つとしても有用かと思います(学習フーガとしては禁じ手ばかりなので模範にはなりませんが)。
いくつかの曲を弾けるようにして紹介していきたいと思っています。
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