左手のためのトッカータとフーガ(BWV565)出版

ちょうど11年前に、演奏会用の左手用編曲として左手のためのトッカータとフーガ ニ短調(BWV 565)を創作した記事を書きました。今年の秋に演奏機会があり、改めて手直しを加え、楽譜ストアで公開することにしました。編曲曲目データベースを見ても、トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565にはたくさんの編曲が存在しますが、その中に私の片手編曲も末席に加えられたかなと思います。参考演奏としてトッカータ部分のみYouTubeにアップしました。編曲としてはフーガまで通して作っていますので、腕に自信がある方に是非演奏してもらいたいです。

参考演奏(トッカータのみ):

Piascore楽譜ストア:https://store.piascore.com/scores/229606

Sheet Music Plus:

Product Cover look inside Toccata and Fugue in d minor for the left hand, BWV 565 Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). Arranged by Hiroyuki Tanaka. Baroque, Classical. Score. 14 pages. Hiroyuki Tanaka #902964. Published by Hiroyuki Tanaka (A0.1314225).

バッハ「左手のための前奏曲集 vol.1」(田中編)

2011年から続けている左手のためのバッハ・ピアノ編曲の中から、オルガン曲を中心とした前奏曲とフーガからの編曲を、出版社のMuse Pressで曲集として出版してもらいました。
バッハ「左手のための前奏曲集 vol.1」です。古いものでは2013年に編曲した左手のためのオルガン前奏曲(BWV535より)に遡りますが、今回曲集にまとめるにあたり、「左手のためのバッハ・編曲プロジェクトチーム」(左手のピアニストとして活動する智内威雄氏、山中哲人氏、及び田中)による企画に乗せてもらう形で、以下のような編曲方針に統一して全曲を手直ししました。

(楽譜の緒言より抜粋)
バッハ自身による左手のためのオリジナル作品や編曲が存在しない以上、「バッハによる左手ピアノの音楽」は想像の域にあることは言うまでもありません。そこで、原曲に対して音数を敢えて減らすからこそ表現できるハーモニーやフレーズの魅力、リズムの連続性などを発見しながら、原曲の価値を損ねることがないように編曲すること。この一点を方針としてプロジェクトチームと共有し、世に問う価値があると判断した編曲のみを曲集に採用しました。
編曲にあたっては「左手による演奏」に無理が生じないように配慮したことはもちろんですが、他方でなるべくバッハ本来の響きを損なわないようにするために、ピアノ特有のダイナミズムに依存することのない編曲を心がけました。そうすることで、片手奏法の面からバッハ作品の解釈幅を広げる可能性を模索しました。

こうして出来上がった曲集は、左手のための新たなバッハ・レパートリーとして完成度の高いものになったと自負しています。今回Vol.1として出版してもらったため、Vol.2以降も出せるように引き続き編曲を続けていこうと思います。

バッハ「左手のための前奏曲集 vol.1」
<収録曲>
前奏曲 ト短調 BWV535/1
前奏曲 イ長調 BWV536/1
前奏曲 ヘ短調 BWV534/1
前奏曲 変ホ短調 BWV853/1
前奏曲 ハ長調 BWV531/1
前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533

¥2,500
税込|菊倍|24頁
https://muse-press.com/item/mp03301/

レオンハルト編曲の楽譜

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レオンハルトがチェンバロ用に編曲したバッハ無伴奏弦楽器組曲等の楽譜がついにベーレンライターから出版されました。ところどころ自筆譜も掲載されています。もちろんピアノでも演奏可能で、豪華な技巧系ピアノ編曲を好まない層にとっても、良いレパートリーになるはずです。
レオンハルトが、単旋律に隠れたポリフォニーをどう感じ取って楽譜に固定化したのか。バッハを勉強したい音楽愛好家にとっては絶対「買い」の楽譜だと思います。
<収録曲>
ソナタ ニ短調(無伴奏ヴァイオリンソナタ 第1番)
パルティータ ホ短調(無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第1番)
パルティータ ト短調(無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第2番)
ソナタ ト長調(無伴奏ヴァイオリンソナタ 第3番)
パルティータ イ長調(無伴奏ヴァイオリンパルティータ 第3番)
組曲 変ホ長調(無伴奏チェロ組曲 第4番)
組曲 ハ短調(無伴奏チェロ組曲 第5番)
組曲 ニ長調(無伴奏チェロ組曲 第6番)
アルマンド イ短調(無伴奏フルートパルティータ イ短調より)
サラバンド ハ短調(リュート組曲 ハ短調より)
アカデミアのリンクはこちら
https://www.academia-music.com/shopdetail/000000176928/
以前はLP、CDも流通していましたが、Amazonでは高く売られているようです。Amazonでもストリーミング・デジタルミュージックとしては直ぐ入手できます。
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

Sheet Music Plus:

Product Cover look inside Suites, Partitas, Sonatas Suites, Partitas, Sonatas. Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). Edited by Siebe Henstra. Arranged by Gustav Leonhardt. Paperback. Performance score, anthology. Baerenreiter Verlag #BA11820_00. Published by Baerenreiter Verlag (BA.BA11820).

左手のためのバッハ小前奏曲集と演奏会

2017年5月17日、大阪のザ・フェニックスホールにて、『左手のピアノ音楽史編纂プロジェクト ~バッハを中心とするバロック時代編~』というコンサートが開催されます。ピアニストは智内威雄さんと有馬圭亮さん、左手演奏のみでオールバッハのプログラムを組むという、大変意欲的な取り組みです。この演奏会の中で、私が編曲した曲も演奏されます。
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2年前の冬から、「左手のアーカイブ」内のプロジェクトとして『左手のためのバッハ:小前奏曲集』の編纂(編曲)に取り組んできました。試作を繰り返し、これまでに30曲を超える候補曲が出来上がりましたが、作曲理論や演奏上の方法論など様々な観点から「バッハらしさ」を追求し完成度を高められたものから厳選、6曲ずつを1巻にまとめる方針で製作していきました。昨年6月に第1巻を出版し、第2巻は5月17日のコンサートに合わせて出版・販売開始することになっています。編曲は私のほか、山中哲人氏、作曲家の石坂真帆さん・長谷部瑞季さんとで作成し、演奏の観点からは左手のピアニストである智内威雄さん、有馬圭亮さんから助言を、およびプロジェクトの良き理解者の方々に編集・校訂に協力してもらい、チームとして楽譜を仕上げてきました。
5月17日のコンサートでは、この出版済み第1巻第2巻の小前奏曲と、近い将来予定している第3巻以降の候補曲やオルガン曲の編曲(田中編)が演奏されます。大曲としてはヴィットゲンシュタイン編曲のシャコンヌも演奏されます。
大変楽しみな演奏会です。
左手のためのバッハ:小前奏曲集 第1巻の収録曲》
1. 小前奏曲 ハ長調 BWV924 (編曲:田中博幸)
2. 小前奏曲 ニ短調 BWV926 (編曲:山中哲人)
3. 小前奏曲 へ長調 BWV927 (編曲:山中哲人)
4. 小前奏曲 変ホ長調 BWV815a/1
4-1. 展開1 after BWV815a/1 (展開:石坂真帆)
4-2. 展開2 after BWV815a/1 (展開:長谷部瑞季)
5. 小前奏曲 ハ短調 BWV999 (編曲:田中博幸)
6. 小前奏曲 ト短調 BWV598 (編曲:山中哲人)

変奏曲形式によるカノンの展開 BWV1087

Canon realization in the form of variations on bass-ostinato (from Bach’s 14 Canons on the first 8 fundamental notes of the Aria from Goldberg Variations, BWV 1087), compiled and transcribed for piano left hand only by Hiroyuki Tanaka.
左手のための、変奏曲形式によるカノンの展開(バッハ:ゴルトベルク変奏曲のバス8音に基づく14のカノン BWV1087)編作:田中博幸
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片手用のバッハ編曲、理論先行型でありつつ演奏・鑑賞にも耐えうる作品が書けました。
BWV1087の14のカノンを、4つのカノン構成要素と10の応用カノンとみなして、カノン構成要素2つで主題提示、10のカノン変奏、カノン構成要素2つに回帰するという構成。10のカノン変奏では、すべてバスは繰り返し、繰り返し時に各対位主題の反行形、逆行形、拡大形、縮小形などを使いました。
同一バス上の変奏とするために、反行形では途中から繰り返し後の途中までという形でまとめ、片手演奏用に音形音域を変更したものも忠実に反行させています。上の譜例で、右上の第10変奏などは、前半は1/2縮小形として、後半は等倍・2倍拡大形をそれぞれバス主題(4倍拡大形)に組み合わせています。
カノンは、本来は複数声部の重なりと掛け合いがあってこそ味わえる魅力がありますが、残念ながら片手用編曲としては離れた音域の複数声部を重ねることは難しいです。一方でバッハが用意した対位主題の反行形、逆行形、拡大形、縮小形などを、バス主題上の変奏曲の形で並べることで新しい魅力が引き出せました。

左手のための組曲 ホ短調 BWV996

Suite in e minor, BWV 996, transcribed for the left hand only by Hiroyuki Tanaka. Happy belated J. S. Bach’s birthday.
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プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ、ジーグ、舞曲全てを左手用に編曲しました。
以前プレリュードの前半を小前奏曲として作っていましたが、後半のフガートもうまく編曲できたため、全曲の編曲に挑戦してみることにしました。
結果、ジーグ以外はかなりうまくいったと思います。ジーグについてはやや弾きづらく、改善の余地があります。
また、全体的に音域が低い方に偏っているため、イ短調にして少し音域を上げても良いかもしれません。

ターリアピエトラ編のパッサカリア(2台ピアノ)

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今まで何度か取り上げてきた、ターリアピエトラ(Gino Tagliapietra, 1887-1955) 編曲のパッサカリア (昨年秋の記事「ブゾーニ関連の2台ピアノ作品CD/DVD」や、六年前の記事「2台ピアノ編のパッサカリア」)について、ついに出版譜で入手することができました。
Ricordiから1955年に出版されたものです。あらためて、譜例とともに紹介したいと思います。
Bach=Tagliapietra/ Passacaglia in C minor BWV 582 (free transcription for two pianos)
↑冒頭はこのように3オクターブで演奏されます。
Bach=Tagliapietra/ Passacaglia in C minor BWV 582 (free transcription for two pianos)
↑旋律の端々をオクターブ化し、かつオクターブ上・下への移動によって広い音域を使って壮大さを表現するとともに、弾きやすさも確保しています。もし全てオクターブになっていたら弾きづらくかつ鈍重になっていたことでしょう。
Bach=Tagliapietra/ Passacaglia in C minor BWV 582 (free transcription for two pianos)
↑ここに挙げたような書法も随所にみられます。音の追加により和声も増強されています。
Bach=Tagliapietra/ Passacaglia in C minor BWV 582 (free transcription for two pianos)
↑極めつけはフーガの後半、この不協和音のトレモロに、オルガンペダル部もまたトレモロで重ね、その後への盛り上がりを表現しています。
タイトルに「自由な編曲」とある通り、三度や六度の和音増強の他、広い音域を駆使して二人の奏者にうまく割り振っており、ブゾーニ的な重厚なパッサカリアを期待する方にはすぐれた編曲と映ることでしょう。
音源はHMV、Amazonそれぞれ以下で入手可能です。
HMVでの商品リンク
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

シーモア・バーンスタイン編曲のバッハ

シーモア・バーンスタイン(Seymour Bernstein, 1927-)編曲の楽譜が2冊届きました。カンタータ第106番からの前奏曲「神の時こそいと良き時」と、カンタータ第147番からのコラール「主よ人の望みの喜びよ」
特に前者については、今年日本でも公開された、シーモア氏についての映画『シーモアさんと、大人のための人生入門』 (原題: Seymour: An Introduction) の中で演奏されたこともあって、多くの音楽愛好家に注目を浴びた曲でした。
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元はフリスキン編曲のものですが、既に絶版かつ、著作権も出版権も切れていないため、楽譜の入手が極めて難しくなっていました。私のもとにも多くの楽譜捜索のお問い合わせをいただきました。
シーモア氏のもとにも、楽譜はどうやったら入手できるか世界中から問い合わせが来ていたようで、自身の編曲を書くことに決めたとのこと。そしてその本人の解釈・編曲が施された楽譜が、Manduca社から出版されました。
フリスキン編との違いは、多くは詳細な指示(デュナーミク、ペダリング、装飾音)の書き込みと、低音の演奏が合理的になるような修正がいくつか見受けられます。
こうして良曲が入手し易くなることは大変喜ばしいことですし、今後は楽譜捜索の問い合わせへの回答にも明確に応えることができるのも良かったです。

カバレフスキー編曲のトッカータとフーガ「ドリア調」BWV538

カバレフスキー編曲のトッカータとフーガ「ドリア調」BWV538
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2000年頃にNAXOSから出たCD、J.S.バッハの作品のピアノ用編曲に収録されて以来、この編曲の楽譜がどうやったら手に入るかと色々な方から問い合わせを受けました。私もコピーのコピーとしてしか持っておらず、自信を持って回答できずもどかしい思いをしてきました。
その後もhyperionからもロシア音楽家による編曲集有森氏によるカバレフスキー集、などにも取り上げられ、音楽愛好家の中ではバッハのピアノ編曲の傑作の一つとみなされてきた感があります。
そんなこの編曲、ようやく出版譜を入手することができました。輸入楽譜のカマクラムジカさんのメルマガでさらっと取り上げられていたのを見つけ、取り寄せてもらい購入しました。
今回はじめて知りましたが、Chant du Mondeというパリの出版社から、1994年に出版されていたようです。楽譜の注文は、カマクラムジカのブログ記事を確認してください。
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

‘Sonata’ from Cantata No.182 for piano solo

前回更新に引き続き、昔の作品、カンタータ 第182番 「天の王よ、汝を迎えまつらん」 BWV 182 より 第1曲「ソナタ」 を、見直して細かい手直しを加え、楽譜をSheet Music Plusで運営しているSMP Pressにて、PDFで販売することにしました。
‘Sonata’ from Cantata No.182 “Himmelskönig, sei willkommen” BWV 182

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look inside
Sonata from Cantata No.182, for piano solo
Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). Arranged by Hiroyuki Tanaka. For Piano Solo. Baroque Period. Advanced Intermediate. Piano Reduction,Solo Part. 3 pages. Published by Hiroyuki Tanaka (S0.130151).