トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565 (1)

トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565は、バッハの音楽のピアノ編曲を語る上で欠かすことはできません。あまりに有名すぎて、この曲を取り上げて記事を書くのは躊躇われます。明らかに1回の記事で想いのすべてを書ききることはできないと思いましたので、続編を思わせるタイトルにしました。
原曲はオルガン曲。タララ~と始まる激しい下降音形と、続く大量の音と早急なパッセージとで情熱的なトッカータ。間にフーガが演奏され、最後にまた激しく盛り上がるという、後世の音楽家たちにとっても、ピアノの腕自慢として弾くのにもってこいの楽想。オリジナルの冒頭はこうなっています。
Bach/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
(Bach/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
さて、私が保有するこの曲のピアノ編曲版の楽譜は20種類を超えており、まだまだ他にもどんどん出てくる気がします。今日はその中から4つほど紹介します。まずは最も有名なブゾーニによる編曲。下の方でいろいろな編曲を紹介しますが、他の編曲はピアニスティックな派手な効果を狙おうと、色々な工夫(悪あがき?)をしているのに対して、ブゾーニ編がもっとも原曲の構成に忠実です。バッハの楽譜の通りのリズムで音を配置した上で、音を分厚くしたりペダル効果をめいいっぱい使った編曲です。
Bach=Busoni/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
(Bach=Busoni/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
一方で、この曲のピアノ編曲としては草分け的な存在なのが、タウジッヒによる編曲。出だしのトリル(A-B-A-B-A)が、現代の感覚では違和感がありますが、ブゾーニ編よりも派手で、時には原曲の音の形を変えて、ピアノならではの演奏効果を狙っています。
Bach=Tausig/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
(Bach=Tausig/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
なお、オーストラリアのピアニスト、グレインジャー(ブゾーニの弟子の一人)はブゾーニ編とタウジッヒ編の良いところを混ぜ合わせて演奏会で弾いていたようです。ハワードがその演奏をグレインジャー編として譜面に起こしており、数名のピアニストがCDに録音しています。私は、このグレインジャー編がピアノで弾いた際に最もバランスが良いと思っており、演奏会で何度か弾いたこともあります。
続けて紹介する2曲は、比較的マイナーなものになりますが、冒頭の編曲手法の違いが如実に出ていることから紹介したいと思います。まずは、ピアニストとしては有名なコルトーによる編曲。コルトー編の楽譜は何度も店頭で見かけたことがあり、日本でも手に入りやすいものだと思います。冒頭のトリルからして、右手はA-A-Aのオクターブ移動、左手はA-G-A。下降音形も、3連符の連続。ペダル低音の上に乗る和音進行も分散和音化。冒頭部分だけを見ても、いろいろな工夫をしようとしています。
Bach=Cortot/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
(Bach=Cortot/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
次に、ストラーダルによる編曲。これまた重たい編曲で、すべてオクターブ和音で演奏されます。ペダル低音の上に乗る和音進行は、コルトー編よりもさらに派手に、広い音域のスケールで盛り上げています。続きもずっとこの調子で派手に展開されます。
Bach=Stradal/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565
(Bach=Stradal/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
今日紹介したもののうち、ブゾーニ編、タウジッヒ編、グレインジャー編については以下に紹介するCDで聞くことができます。
続きは、また別の日に書きます。


—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

Busoni編
Tausig編
Grainger編

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