ストラダル(August Stradal, 1860-1930)(ストラーダル)、チェコのピアニストで、1860年に生まれ1930年3月13日に没しています。ブルックナーやリストの弟子に当たり、リストの名演奏家として名を馳せていたようです。この音楽家は私にとって長い間謎の存在でした。大量のピアノ編曲を残しており、バッハのピアノ編曲も膨大な数が残されています。当然ほとんどが絶版になっているため世界各地に散らばって残っているものをかき集めるしか方法がありません。その編曲作品のリストには、バッハやブクステフーデのオルガン曲、ヘンデルの協奏曲、リストの交響詩、ブルックナーの交響曲など通常ピアノ編曲など考えられないような大曲が並び、抜粋でなく全曲が編曲されておりその量に圧倒されます。ことバッハに関しても、多くのオルガン曲や、ブランデンブルグ協奏曲の全6曲など相当数の編曲を残しています。本ページの曲目データベース上も、まだすべて整理し終わっていません。
ところで、最近ストラダルの真相に近づくひとつの契機がありました。チェコに住む音楽愛好家と知り合いになり、その彼がストラダルについて研究していたのです。彼曰くストラダルは国内でも忘れ去られておりほとんど知られていないそうですが、各種図書館や博物館には数多くの楽譜や自筆譜が残されているとのことでした。残された自筆譜は、出版されている編曲作品以外にも多く存在するようです。実際にいくつかの自筆譜を見せてもらいましたが、発想記号や指使い、ペダル指示等が細かく書き込まれ、かつ非常に見やすいものでした。
さて、ストラダルの編曲手法は比較的単純で、原曲の音をできる限りたくさん拾おうとするものです。結果、インテンポで演奏するのはかなり難しい編曲になっていると思います。中には常識を超えた、2オクターブ以上にわたるアルペッジョや重音進行を多用されています。たとえば、以下の譜例はブランデンブルグ協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV 1046のピアノソロ編です。音も多く、「重厚派手」という言葉がぴったりな編曲です。
(Bach=Stradal/ Brandenburg Concerto No.1 in F major BWV 1046)
作品によっては音を追加しているものもあれば、原曲の音をそのままピアノ譜におこしているものもあります。ある程度分類できそうですが、また後日作品を取り上げて書いていきたいと思います。
(2010.4.1追記)
ストラダル編曲のブランデンブルク協奏曲集の出版のお手伝いをさせてもらいました。ストラダルについて調査した内容を、解説にまとめました。
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