無伴奏チェロ組曲 第1番の前奏曲は、おそらく誰でも知っているような有名なバッハの器楽曲ではないでしょうか。
無伴奏チェロ組曲のピアノ編として、以前シロティやラフの編曲を紹介しましたが、今回は日本人作曲家による編曲、これがまた大変素晴らしいので紹介します。
一つは、昨年11月に全音ピアノ・ピースとして出版された、後藤丹氏編曲のものです。以前紹介したラフの編曲は、原曲の分散和音を伴奏にメロディーをつけるような編曲で、拒絶反応を示す人が多いだろうと想像しますが、後藤編は決して奇を衒う編曲ではなく、シンプルかつ適度にピアノらしい響きを表現できる編曲だと思います。冒頭の楽譜を見てみると、かなり低い音域で始まることがわかります。このあと徐々に高音域を使って展開されていきます。
終結部は若干音も厚くなり音域が広く、ピアノの特性を生かした華麗さを兼ね備えていることが見て取れるかと思います。
容易に入手できる全音ピアノ・ピースですので、ぜひ多くの人に弾いてもらいたいです。
さてもう一つは、松谷卓氏編曲のもので、「ぷりんと楽譜」で出版されています。こちらはずっと自由な編曲であり、パラフレーズと呼ぶべきかもしれません。23小節に及ぶ前奏。そして楽譜上にはコードネームが付記されていますが、すでに原曲に無い音が(小さい音符で)追加されています。主旋律の残響音の効果を狙っているものでしょうか。
また、カデンツァについては半拍ずらしたオクターブのカノンにしていて、これもまたとても効果的。
私の知る限り、無伴奏チェロ組曲第1番前奏曲のピアノ編曲の中では、最もピアノでよく響く編曲だと思います。素晴らしい作品です。
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