今回は、バッハがチェンバロソロ用に編曲した曲の、ピアノでの演奏を紹介します。バッハが既に編曲済みなので、カテゴリとしては、「ピアノ編曲」ではなく「オリジナル曲」ということになります。
編曲という作業は、バッハの得意技でもありました。編曲を通してバッハの作曲技法が確立されたとも言えます。バッハは、ヴィヴァルディやテレマン、マルチェッロ等の先輩音楽家の協奏曲を、鍵盤楽器ソロ用に編曲しました。そのうちチェンバロ用の曲が16曲と、オルガン用の曲が6曲現存します。色々なバッハ文献に必ず書いてある「イタリア体験」、バッハはこれらの編曲を通じてイタリア形式を学習したとされています。
さて、チェンバロソロで演奏できるということは、ピアノソロでも演奏できるわけですが、残念ながらその数はほとんどありません。私が持っている、実際にピアノで演奏されているCDをいくつか紹介したいと思います。
この分野で最近発売されたのが、ヒールホルツァー(Babette Hierholzer)のCD「Bach: Concerto Transcriptions」です。Amazonにはジャケット画像も曲目も載っていなかったので、ここに載せておきます。
・協奏曲 ニ短調 BWV 974 (原曲:A.マルチェッロ)
・協奏曲 ニ長調 BWV 1054 (原曲:バッハのヴァイオリン協奏曲)
・協奏曲 ト短調 BWV 975 (原曲:ヴィヴァルディ)
・協奏曲 ト短調 BWV 985 (原曲:テレマン)
・協奏曲 ハ長調 BWV 977 (原曲不明)
・協奏曲 ヘ長調 BWV 978 (原曲:ヴィヴァルディ)
・イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971 (オリジナル)
このCDは、各先輩作曲家ごとに偏りなく抜粋し取り上げてありますが、異色なのがバッハのヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV 1042のバッハ自身による編曲版、クラヴィーア協奏曲 ニ長調 BWV 1054をピアノソロで演奏していることです。ヴァイオリンソロをチェンバロソロに編曲する際に、バッハはメロディーを装飾したり細かい音に分けたりしていますが、それを生かし、ソロパートとオケパートを両方ピアノで弾いたというものです。それ以外の曲も、全体的に大人しい演奏ではありますが、クセがなくじっくりと楽しむことができます。
この他には、アレクサンドル・タローのCD「Concertos italiens」や、シプリアン・カツァリスのCD「Italy In Bach 」があります。特にカツァリスのCDは、ヴィヴァルディ=バッハの協奏曲のピアノでの演奏のパイオニアでした。(以前にBach’s Italian Journey, Vol. 1というタイトルで発売されていたものの再発売だと思います)
なお、上に挙げたどのCDにも、編曲ではないにもかかわらず、イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971が収録されています。バッハの協奏曲様式の集大成として書き上げた曲ですし、CD企画としても当然のことなのでしょう。
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-