今日は、すみだトリフォニーホールでファジル・サイのピアノリサイタルに行ってきました。
サイの演奏会は、何日かあるリサイタルシリーズの中で大抵1日はバッハかバッハの編曲物が含まれているので、今までも何度か足を運んできました。今回も前半はオールバッハ(の予定でしたが、曲目変更でパッサカリアからヤナーチェクのソナタになってました)。中でも私が最も楽しみにしていた曲目が、初めて聴くことになるサイ編曲の幻想曲 ト短調 BWV 542。オルガン曲の中でも特に有名なこの曲、サイは一体どのように編曲して魅せてくれるのか。曲目に「幻想曲」とだけ書いてあって、続くフーガは弾いてくれるのか、など心配しつつ、幻想曲部分が始まりました。出だしは非常にシンプル、改訂前のリスト編曲と同じような始まり方でした。幻想曲について言えば、私の予想は完全に裏切られ(悪い意味ではなく)、オルガンの響きを思わせる迫力のある音使いはほとんどありませんでした。リスト編などでは多くのピアニストが盛り上げる部分を、全体的に速いテンポで微妙なニュアンス(弱め)の音使いをしていて、新鮮な趣でした。その効果はフーガに入ってようやく気づかされました。フーガはかなりの迫力をもった編曲で、サイ得意の大音量の低音を鳴らしていました。きっとこの曲もそのうち楽譜として出版されることでしょう。
サイの弾くバッハは、シャコンヌにしても、オリジナルのフランス組曲にしても、強弱・緩急が激しく、実を言うと私好みの解釈ではありませんが、演奏会で弾く姿とともに入ってくる音楽としては惹きこまれていく感覚があり、不思議です。独特のリズム感があるのでしょうか。
終演後のサイン会で、サイ編曲のパッサカリアの楽譜にサインしてもらいました。当初プログラムに予定されていたサイ編のパッサカリアがなくなってしまったのは残念でしたが、なかなか楽しめた演奏会でした。今回のプログラムは以下の通り。
ファジル・サイ・プロジェクト in Tokyo 2008
2008/12/4(木) 第1夜:ピアノ・ソロ
バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ
バッハ=サイ/幻想曲 ト短調 BWV542
バッハ/フランス組曲第6番 ホ長調 BWV817
ヤナーチェク/ソナタ 1.X.1905
(休憩)
スカルラッティ/ソナタ へ長調 K.378、ニ短調 K.1、ハ長調 K.159
ラヴェル/ソナチネ
プロコフィエフ/ソナタ第7番 「戦争ソナタ」
(アンコール)
ムソルグスキー/展覧会の絵(途中から)
サイ/黒い大地
ベートーヴェン/ソナタ「テレーゼ」
さすが ファジル・サイならではの豪華なプログラムですね!聴き応えたっぷりだったのでは?
さりげなく スカルラッティや フランス組曲 ラヴェル ベートーベンが入っているのも良いですね!とても楽しめる演奏会だったのではと思います。
クジーナさん、こんにちは。聴き応えたっぷりでした。この人は、作曲家ごとの個性を引き出す演奏ではなく、どの作曲家の曲もサイ流になりますね。スカルラッティのソナタやフランス組曲は、もはやバロックの曲ではありませんでした。