ロシアで出版されているバッハ・オルガン作品のピアノ編曲集を紹介します。Ruslania というロシアの書籍を扱うフィンランドのオンラインショップで入手できます。ブゾーニ以外はロシアの音楽家による編曲が収録されており、ほとんどがコラール前奏曲のピアノ編曲ですが、ブゾーニと同様にピアノの響きをよく考慮にいれた改変が多く、「とても良いピアノ編曲」が集まっていると思います。
中でもゲディケ(Alexander Goedicke, 1877-1957)の「6つのコラール前奏曲集」は、自身がピアニストでありながらオルガニストでもあり、オルガンとピアノの両方を熟知した上での編曲ということで興味深い存在です。なおゲディケは、コラール前奏曲集以外にも、いくつかの「オルガン前奏曲とフーガ」の編曲も残しており、その見事な編曲はCD「Bach Piano Transcriptions – 5」として聴くことができます。
また、シロティ(ジロティ)編曲のコラールパルティータ BWV 770は、カール・フィッシャーから出ている「The Alexander Siloti Collection」にも含まれていなかった曲です。パルティータの中でテーマ(変奏1)、変奏3、変奏5、変奏7の抜粋であるものの、ピアノで演奏して自然な音楽となるように編曲されています。
その他、フェインベルグ編曲が素晴らしいのは今までに何度も書いてきたことですが、その中でなぜBWV 647の1曲だけがこの曲集で採用されたかは謎です。ネメロフスキー編曲のトッカータとフーガ ニ短調 ニ短調 BWV 565は、それほど特筆すべき特徴は見いだせませんでした。
全体として、私にとっては出版譜として初めて入手できた編曲が多かったので、非常に満足した一冊でした。
<収録曲(目次順ではありません)>
ゲディケ編
・コラール前奏曲 人皆死すべきもの BWV 643 ト長調
・コラール前奏曲 わが心の切なる願い ロ短調 BWV 727
・コラール前奏曲 古き年は過ぎ去り イ短調 BWV 614
・コラール前奏曲 我が魂は主をあがめ ニ短調 BWV 648
・コラール前奏曲 我らの救い主、イエス・キリスト イ短調 BWV 626
・コラール前奏曲 主なるイエス・キリストよ、我ら汝に感謝す ト長調 BWV 623
フェインベルグ編
・コラール前奏曲 尊き御神の統べしらすままにまつろい ハ短調 BWV 647
シロティ編
・コラールパルティータ ああ罪人なる我、何をなすべきか ホ短調 BWV 770
ブゾーニ編
・コラール前奏曲 目覚めよ、と我らに呼ばわる物見らの声 変ホ長調 BWV 645
・コラール前奏曲 いざ来れ、異教徒の救い主よ ト短調 BWV 659
ネメロフスキー編
・トッカータとフーガ ニ短調 ニ短調 BWV 565