昨年末、とある演奏会で取り上げた、ブランデンブルク協奏曲 第1番のピアノ編曲を紹介します。
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 1st. mov.)
このブランデンブルク協奏曲 第1番の楽譜(全楽章がピアノソロに編曲されています)は、モスクワのムジカ社から1961年に出版されていたもので、プラハの音楽学校の図書館に眠っていました。編曲者テューリン(Juri Tulin, 1893-1978)については、ロシアの音楽家ということ以外は詳しいことはまだ判明していませんが、この編曲は見事です。原曲が比較的大きな規模の楽器編成ということもあって、ピアノソロで弾けてしまうこと自体が驚きです。
音が密集している中で音域の交換や思い切ったパートの省略(フォッフォッフォッ フォッフォッフォッ フォ- という特徴的なホルンの合図を無視しています)をうまく活用し、ピアノ1台で生み出せる最大限の効果を出せていると思います。下の譜例のように、ピアノの高音域を随所に織り交ぜていることから、ピアノならではの輝かしい響きを出しています。また、同じパッセージを異なる楽器で掛け合う部分についても、3度、6度、音域、とそれぞれ変化をつける工夫をしていることも見てとれます。
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 1st. mov.)
とはいえ、シャコンヌなどの編曲とは違ってピアノに適した楽想ではなく、純粋なピアノ曲としては鈍重な感は否めません。バッハの音楽をピアノの音色で楽しむということに割り切ることです。(実際に私がこの曲を演奏した後、数名の方から「わざわざピアノで弾かなくても・・・」と評判は概ねマイナスでした。。。)
ところで、ブランデンブルク協奏曲は、バッハの全楽曲の中でも私が最も好きな曲集です。全6曲、全てが異なる楽器編成で、この第1番はコルノ・ダ・カッチャ(ホルン)、オーボエ、ファゴット、ヴィオリーノ・ピッコロが独奏楽器群、ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオローネ、通奏低音が合奏楽器群ということで、曲集の中でも大規模な編成です。それぞれの独奏楽器群が緊密に掛け合う論理的・幾何学的な構成がこの曲の魅力です。
ブランデンブルク協奏曲集の全6曲について、ピアノソロ用の編曲をようやく全て揃えることができました。原曲の方が素晴らしいのは当り前の話ですが、楽団を率いることができるわけではないので、このピアノソロ編曲をいつか全曲制覇したいものです。
以下第2~4楽章までの譜例です。演奏者に無理を要求するような編曲ではありません。
◎第2楽章の譜例
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 2nd. mov.)
◎第3楽章の譜例
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 3rd. mov.)
◎第4楽章の譜例
(Bach=Tulin/ Brandenburg Concerto No.1 BWV 1046 4th. mov.)
とりあえずオリジナルはそれで置いといて。。
自分の得意楽器で演奏すると言うのが魅力ですよね(^^)
私がブランデンブルクを弾くとしたら6番あたりかなと思っておりますが、今はチャンバロ協奏曲を頑張ります~
アリヤさん>
コメントありがとうございます~。そうですよね~、自分の得意楽器でやってみたい、というところに尽きますね。