BCJブランデンブルク全曲演奏会

今日はピアノでバッハを楽しむ観点からは離れて、オリジナルのバッハの話題を。バッハ・コレギウム・ジャパンによるブランデンブルク協奏曲の全曲演奏会に行ってきました。生演奏でブランデンブルク協奏曲の全6曲を聴ける機会はなかなか無いと思います。私も今回が初めてでした。冒頭に鈴木雅明氏が曲の説明と共に今回の「試み」について解説してくれました。
一つ目は、近年復元された「ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ」という、ヴァイオリンやヴィオラのように肩に構えるチェロを使用すること。肩に構えるというのも、根拠はモーツアルトの父・レオポルトが何かに書き残した「最近ではチェロを足で抱えて演奏するようになった」という記述から、『ならば少し前までは肩に構えていた』と想像してみたことらしいです。チェロよりも若干音量が弱くなるようで、ヴァイオリンやヴィオラとのアンサンブルのバランスがよくなるとのことです。たとえば第3番でヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラがそれぞれ3人ずつ揃って繰り広げる合奏協奏曲でその真価を聴くことができました。
二つ目は、ブランデンブルク第3番のたった1小節・2和音しかない第2楽章についての補完。今まで私はあまり意識したことがなかったのですが、鈴木氏曰く三位一体を意識して、第3番であり3つの楽器がそれぞれ3人受け持ち、3楽章構成にするために、3という数字にこだわったとのことです。そこで3台チェンバロのための協奏曲ハ長調の第2楽章を、ト短調に移して演奏していました。もともとこの3台チェンバロのための協奏曲も原曲は消失した3台ヴァイオリンのための協奏曲であったと言われており、それも楽器編成にマッチしたとのことです。
今回の演奏会ではどの曲も素晴らしかったのですが、私は前半の最終曲である第3番が特に良かったと思いました。第3番の第1楽章は、CDで音だけを聴いているだけではなかなかわからない、各奏者の共同作業、同じ楽器であっても合奏と掛け合いがある様が視覚的にも楽しめました。第2楽章は先に書いたとおり、3台チェンバロのための協奏曲ハ長調 BWV1064 の第2楽章からの転用。私は先入観が強く、ブランデンブルクの一部として聴くことはできませんでしたが、プログラムにない曲を追加で聴けたような新鮮さがありました。第3楽章は1楽章以上に、各奏者がたたみかけるように矢継ぎ早にメロディーを掛け合い、それが興奮させ曲の中に巻き込んでいきました。
楽器編成が全部異なるこのブランデンブルク協奏曲を、一夜にして全曲聴けたというのはとても貴重な体験だと思います。大満足で帰途につきました。私が「ピアノでバッハを楽しむ」ことは、今回の演奏会のように「古楽器によるバッハの響きの復元の試み」とはほぼ対極に位置しますが、バッハを楽しむことには変わりはありません。ブランデンブルク協奏曲にもいくつかのピアノ編曲が残されていますので、今回の演奏会で刺激を受け、自分でもピアノでブランデンブルク協奏曲を弾いて楽しみたいと強く思いました。

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