ブゾーニ編曲の「聖アン」初版

ブゾーニ(Ferruccio Busoni, 1866-1924)編曲の、オルガン前奏曲とフーガ、変ホ長調 BWV552。通称は「聖アン」。そのフーガは私が最も好きなフーガであり、今まで何度か挑戦し弾いたことがあります。バッハのピアノ編曲の中では比較的有名な部類に入りますが、世の中に出回っている楽譜は改訂されたものであり、ほとんど知られていない初版があります。存在は知りつつも、なかなか入手できずにいたこの初版、ようやく入手しました。
Bach-Busoni BWV 552 (first edition, 1889)
さてこの初版は1889年にRahter社から出版されました。改訂版は、細かい点でいくつか改良されているのですが、その際に大きくカットされてしまった部分があります。それが、前奏曲とフーガの間に任意で挿入されるカデンツァ。前奏曲の最後の和音を偽終止とするOssiaが付き、11小節にわたるカデンツァが二種類用意されています。
この初版をカデンツァ付きで演奏した録音は、私が知る限り二つあります。
まずは、hyperionのバッハ編曲集CDの第1弾、ニコライ・デミジェンコの演奏。こちらでは一つ目のカデンツァを演奏しています。
Bach=Busoni/ Cadenza I of Prelude and Fugue in E flat Major, BWV 552
昔この演奏を聴いた時には、楽譜が存在することは知らずに、奏者のアドリブで弾いていると思い込んでいました。前奏曲の中でも度々登場するジグザグ音形をオクターブ重音、トレモロで演奏させるカデンツァです。
もう一つは、以前にも紹介した ホルガー・グロショップのブゾーニ編曲作品集 に含まれたもの。こちらは二つ目のカデンツァを演奏しており、このCDのライナーノートを見て、この初版の存在とカデンツァが二つ存在することを知りました。こちらは、一つ目と同じ音形を単音で弾きつつ模倣的書法で重ねていく形で頂点を築いています。
Bach=Busoni/ Cadenza II of Prelude and Fugue in E flat Major, BWV 552
初版と改訂版の一番大きな違いはこのカデンツァの有無ですが、それ以外にも細かい違いがいくつかあります。まずは前奏曲の冒頭、初版では下降音形をトレモロにしていますが、改訂版では3オクターブで弾かせます。前奏曲の終結部では、改訂版ではトリルをより長く聞かせる編曲上の工夫を加えています。全般的に初版には第三のペダル(ソステヌート・ペダル)の明確な指示があるのに対して、改訂版にはその指示は見られません。最後にコーダは、初版では高音域でのトレモロなのに対し、改訂版では中音域でかつアラルガンドを表現するために1小節追加しています。多くは改良されたと見做せますが、カデンツァやソステヌート・ペダルの指示が初版にしかない部分などには疑問も残ります。何にせよ、貴重な資料となりました。
来年2016年はブゾーニの生誕150年となります。いい機会なので、この初版を使ってカデンツァも含め、再度演奏してみたいと考えています。

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