前奏曲 ロ短調

引き続きシロティの話題です。シロティ編曲の前奏曲 ロ短調、原曲はバッハの息子のために書いたと言われる「W.フリードマンのための音楽帳」に含まれる前奏曲 ホ短調 BWV855aです。まずは原曲の楽譜を見てみましょう。
Bach/ Prelude No.5 W. F. Bach Book, BWV 855a
(Bach/ Prelude No.5 W. F. Bach Book, BWV 855a)
平均律 第1巻 第10番(BWV 855)の前奏曲によく似ていることはすぐおわかりでしょうか。平均律に収録された前奏曲では右手で演奏する旋律はさらに装飾されていますが、BWV 855aでは和音進行のみが記譜されています。
さて、次にシロティ編曲の前奏曲 ロ短調を見てみましょう。より音楽的な深みをもたせるために原曲のホ短調からロ短調に書き換えられています。
Bach=Siloti/ Prelude h-moll
(Bach=Siloti/ Prelude h-moll)
また非常にゆっくりとしたテンポ指定でささやきかけるような弱音で始まり、高音部に移された分散和音の中に哀愁漂う低音のメロディーが浮き立ち、なんともロマンチックな曲になっています。
この編曲はシロティの娘、キリエナ・シロティに献呈されています。バッハの編曲モノとしてはめずらしくいろいろなCDに収録されていますが、手に入れやすいものとしては以下のリンクを参考にしてください。たとえば最近ようやくCD化された、ワイセンベルグの「バッハ:主よ、人の望みの喜びよ(ピアノ曲集)」にも収録されています。
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■楽譜
追記:The Alexander Siloti CollectionのSheetMusicPlusのリンクはこちら。

The Alexander Siloti CollectionLook Inside The Alexander Siloti Collection (Editions, Transcriptions and Arrangements for Piano Solo). By Nikolai Rimsky Korsakov Franz Liszt. Edited by Alexander Siloti. Piano. For Piano Solo. Soft Cover. Standard notation. 288 pages. Published by Carl Fischer (CF.PL112)
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Alexander Siloti (1863-1945)

シロティ(Alexander Siloti)に関する書籍、「 Lost in the Stars: The Forgotten Musical Career of Alexander Siloti 」が最近届きましたので紹介します。(日本では一般にカタカナで「シロティ」と表記されますが、発音は「ジロティ」の方が近いようです。ですが、このサイトでは「シロティ」と統一しています)
シロティはリスト、アントン・ルビンシュタイン、チャイコフスキーの弟子であり、ラフマニノフの師でもあります。バッハのピアノ編曲を多く残しており、Carl Fischer社から出版されているThe Alexander Siloti Collectionにも大多数の作品が収録されています。
この本には、シロティが残したバッハの編曲作品のうち14曲を収録したCDが付録で付いています。このCDでしか聞けない編曲(2007.8時点)もいくつかあり、かなりマニアックな音源の一つです。
シロティ編曲の録音で、より手に入れやすいCDとして「Bach Piano Transcriptions – 5 」があります。このCDには、シロティのほか、ゲディケカバレフスキーカトワールなどロシアの音楽家による編曲が収録されています。
追記:The Alexander Siloti CollectionのSheetMusicPlusのリンクはこちら。

The Alexander Siloti CollectionLook Inside The Alexander Siloti Collection (Editions, Transcriptions and Arrangements for Piano Solo). By Nikolai Rimsky Korsakov Franz Liszt. Edited by Alexander Siloti. Piano. For Piano Solo. Soft Cover. Standard notation. 288 pages. Published by Carl Fischer (CF.PL112)
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カンタータ 第29番 より 第1曲「シンフォニア」

今日紹介するのは、カンタータ第29番の序曲の編曲です。原曲はオルガンにトランペットやティンパニーが加わり、祝祭的な雰囲気いっぱいの曲ですが、さらにさかのぼると無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ ホ長調と同じ音楽になります。今回は出版譜として持っている以下4つの編曲を比較してみました。
まず最近手に入れたものとして、カートゥン(Leon Kartun)の編曲です。カートゥンについては何の情報も持っていません(カタカナ表記が妥当かどうかもわかりません)。
Bach=Kartun/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Kartun/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29)
次に紹介するのは、サンサーンスによる編曲。Kartun編曲よりもオクターブを多用しているため、より派手になっています。楽譜が入手できる店は限られますが、CDはNAXOSから出ているため比較的容易に入手できます。(アマゾンではこちら→Piano Transcription
Bach=Saint-Saens/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Saint-Saens/ Ouverture from Cantata No.29 BWV 29)
サンサーンス編よりさらに音が多いのが、ケンプ編です。こちらは日本では全音から出版されていますし、比較的手に入れやすい部類の楽譜です。
(たとえばAmazonではこちら→楽譜:バッハ=ケンプ ピアノのための10の編曲、CD:Bach Arrangements
Bach=Kempff/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Kempff/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29)
4つ目に紹介するのは、リストやチャイコフスキーの弟子であり、ラフマニノフの師として有名なシロティの編曲。非常にわかりやすくシンプルな編曲です。
Bach=Siloti/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29
(Bach=Siloti/ Prelude(Sinfonia) from Cantata No.29 BWV 29)
こうして4つ並べてみると、それぞれずいぶんとちがった手法で編曲しているのがよくわかります。優劣をつけるのではなく、楽しみ方が違うと私は思っています。
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