音楽のささげもの BWV 1079 トリオソナタ より 第1楽章「ラルゴ」
1st. movement ‘Largo’ – Trio Sonata from Musical Offering BWV 1079
私が二つ目に完成させた(曲の最後まで編曲を行えた)曲です。正しくは、4楽章全てを編曲しようとして、まず第1楽章を編曲し終えたけれども、続く第2楽章が難しすぎて頓挫しているというところです。王の主題が現れる第2楽章からがこのトリオソナタの美味しい所なのですが・・・
原曲はフルート、ヴァイオリン、通奏低音。この編曲ではヴァイオリンを1オクターブ低く演奏することでメロディーの衝突を回避しています。下の楽譜がその冒頭部分です。ヴァイオリンパートは右手と左手で分担します。
下の楽譜は、曲中の頂点の部分です。低音・高音ともにオクターブ和音として増強して、響きを豊かにしてみました。
この曲もまだまだ改善の余地がたくさんあると思いつつ、人生長いのでまた経験を積んでから戻ることにしたいと思います。そしていつかは残りの2~4楽章も通して弾けるようにしたいものです。
—-2016年5月31日追記—-
楽譜をSheet Music Plusで運営しているArrangeMeで、PDFで販売してもらうことになりました。(上記楽譜に若干の手直しを加えています)
Largo from Trio sonata in c minor ~ Musical Offering BWV 1079
カテゴリー: My Arrangement
ドッペルコンチェルト より 第2楽章「ラルゴ・マ・ノン・タント」
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV 1043より 第2楽章「ラルゴ・マ・ノン・タント」
‘Largo ma non tanto’ from Concerto for two violins in D Minor BWV 1043
私が初めて自分でピアノ編曲・楽譜化を試みた曲です。昔から2台のヴァイオリンが美しく絡み合うこの第2楽章は大好きでした。2006年の秋に編曲に取り組みはじめ、初冬に完成させました。2007年の各種演奏会では何度か弾かせてもらいました。
さて、どのように編曲したかを簡単に書きとめておこうと思います。当時は楽譜作成ソフトのFinaleもまだうまく使いこなせなかったので、まずはルーズリーフの五線譜に手書きで譜面を作り、それをFinaleに打ち込んでいきました。(今では考えられませんが、一音一音マウスで選択しながら楽譜を書いていました)
原曲は2台ヴァイオリンによる2声の旋律と通奏低音が基本となっています。編曲の基本方針としては、一番高い声部を右手で、通奏低音を左手でそれぞれ演奏し、あとはもう一つの旋律を右手・左手を使い分ける、といった簡単なものです。ただし、どうしても2つのヴァイオリンは同じ音域を演奏するのでメロディを弾き分ける(聴き分ける)のが難しいだけでなく音楽としても面白みに欠けます。そこで、旋律をオクターブ上や下に移動することで、接近した同じ音域での旋律の衝突を少なくし、曲想に変化を与えました。たとえば下の楽譜は冒頭部分ですが、3小節目までが本来の音域ですが、4小節目から1つ目のメロディー(2nd Vn.)をオクターブ下に移し、1st Vn.のメロディーはオクターブ和音に変えています。これはクレッシェンド効果も狙っています。
(Bach=Tanaka/ Largo ma non tanto from Concerto for two violins BWV 1043)
また、ピアノは高音域で輝かしい音色が出せるため、しつこくならないと思う範囲で高音部のオクターブ和音を盛り込みました。たとえば下の楽譜の1・2小節目では2つのヴァイオリンのメロディーを分けるために高音部のオクターブ和音を用い、また3・4小節目では曲の頂点に向かって高音部を多用しています。(私の録音ではここで大きなミスをしてるのです・・・)
そして下の楽譜は、私が最も気に入っている結尾部です。ずっしりした低音の支えの上に高音部の16分音符が流れる中、左手のアルペッジョの頂点で中音部が浮かび上がるようにしました。
素人の習作ながら、自分なりに何度も練り直して作ったので、とても愛着を感じています。数年後にもう少し編曲スキルが向上した後に見直して、より良いピアノ編曲作品として残せればいいなと思っています。
My Arrangement
探せば探すほど、また新たに見つかる度に、バッハのピアノ編曲はまだまだ世の中に数多く眠っていると思わされるのですが、バッハのカンタータや室内楽曲を聴いていて、自分でピアノで弾いてみたいなと思う曲ごとに必ずしもピアノ編曲があるわけではありません。過去の一流音楽家が良い編曲を残してくれていればよいのですが、無いものは自分で作るしかないということで、2006年くらいから編曲にチャレンジしはじめました。
そんな私、音楽を専門的に学んだことがあるわけではない(※2010年以降、作曲の先生に師事し和声法、対位法を基礎から勉強しはじめました)ので、すべて「見よう見まね」でやりはじめました。バッハのピアノ編曲作品の楽譜は多種多量に観察してきたという自負が唯一の支えです。といってもブゾーニやラフマニノフ等の優れた編曲手法などは、見よう見まねでできるものではないでしょうが、「こういう変化をつけると聞き手への効果が高いだろう」という私の主観から抽出したエッセンスを少しずつ盛り込みながら、あとは何十年という経験を積めばだんだん自分のものになっていくのではないか、という長期的かつ楽観的思考で細々と続けています。今まで編曲してきた曲について、今後何回かに分けてそのエピソードと自分なりのこだわりを紹介していきたいと思います。
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<編曲作品リスト(2015/3 時点)>
- 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV 1043 より 第2楽章「ラルゴ・マ・ノン・タント」 (2006.11)
- 音楽のささげもの BWV 1079 トリオソナタ より 第1楽章「ラルゴ」 (2006.12)
- カンタータ 第106番 「神の時こそいと良き時」 BWV 106 より 第1曲「ソナティナ」 (2007.5)
- カンタータ 第182番 「天の王よ、汝を迎えまつらん」 BWV 182 より 第1曲「ソナタ」 (2008.3)
- コラール・ファンタジー「主なる神、我らの側にいまさずして」 BWV 1128 (2008.8)
- 左手のためのサラバンド(パルティータ 第1番 BWV 825 より) (2009.1)
- 片手のためのバッハ編曲(Bach for One Hand)
- カンタータ第196番「主はわれらをみ心にとめたまえり」より「シンフォニア」 (2015.3)