無伴奏チェロ組曲 第1番の前奏曲は、おそらく誰でも知っているような有名なバッハの器楽曲ではないでしょうか。
無伴奏チェロ組曲のピアノ編として、以前シロティやラフの編曲を紹介しましたが、今回は日本人作曲家による編曲、これがまた大変素晴らしいので紹介します。
一つは、昨年11月に全音ピアノ・ピースとして出版された、後藤丹氏編曲のものです。以前紹介したラフの編曲は、原曲の分散和音を伴奏にメロディーをつけるような編曲で、拒絶反応を示す人が多いだろうと想像しますが、後藤編は決して奇を衒う編曲ではなく、シンプルかつ適度にピアノらしい響きを表現できる編曲だと思います。冒頭の楽譜を見てみると、かなり低い音域で始まることがわかります。このあと徐々に高音域を使って展開されていきます。
終結部は若干音も厚くなり音域が広く、ピアノの特性を生かした華麗さを兼ね備えていることが見て取れるかと思います。
容易に入手できる全音ピアノ・ピースですので、ぜひ多くの人に弾いてもらいたいです。
さてもう一つは、松谷卓氏編曲のもので、「ぷりんと楽譜」で出版されています。こちらはずっと自由な編曲であり、パラフレーズと呼ぶべきかもしれません。23小節に及ぶ前奏。そして楽譜上にはコードネームが付記されていますが、すでに原曲に無い音が(小さい音符で)追加されています。主旋律の残響音の効果を狙っているものでしょうか。
また、カデンツァについては半拍ずらしたオクターブのカノンにしていて、これもまたとても効果的。
私の知る限り、無伴奏チェロ組曲第1番前奏曲のピアノ編曲の中では、最もピアノでよく響く編曲だと思います。素晴らしい作品です。
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レイハ(ライヒャ)『ピアノのための36のフーガ』の出版
前回の更新から3ヶ月以上が経ってしまいました。今年の春から、再び楽譜出版のお手伝いをさせていただきました。アントニーン・レイハ(Antonín Rejcha, 1770-1836, ドイツ名:アントン・ライヒャ)の曲集、『ピアノのための36のフーガ 作品36』で、楽譜の校訂と、解説の執筆を担当させていただきました。何しろ情報が少なく苦労しましたが、大変勉強になりました。解説は、作曲者の紹介、曲集の特徴、フーガ主題の譜例付きの各曲解説などを合わせて10ページほど書きました。
私がこの曲集に着目したのは、中に「バッハの主題によるフーガ」という曲が含まれていたためであり、以前このページでも最古のバッハ・パラフレーズとして紹介しました。それ以外にも、詳しく見ていくと大変興味深い内容満載の曲集でした。ベートーヴェンと同年生まれ、曲集はハイドンに献呈、1805年に出版という年代からみても、非常に先進的な曲集です。フーガ答唱の自由な応答(5度・4度以外も多用)、突発的な転調。跳躍の多い主題旋律。半音階を多用し曖昧な調性感。混合拍子・複合拍子のフーガ。有名な作曲家の主題の借用。このように伝統的なフーガ手法のルールを大きく拡大解釈した独特の理論を様々な形で実践しています。
決して一般に広く求められる曲集ではありませんが、演奏者にとっての珍しいレパートリーとしてだけでなく、作曲学習者の実践的手引きの一つとしても有用かと思います(学習フーガとしては禁じ手ばかりなので模範にはなりませんが)。
いくつかの曲を弾けるようにして紹介していきたいと思っています。
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ナウモフ編曲のバッハ楽譜
ピアニスト、エミール・ナウモフ(Emile Naoumoff, 1962-)編曲のバッハ、3曲がSchott社から出版されました。昨年末に出版され、ようやくSheet Music PlusやAmazonでも入手できるようになったので、紹介したいと思います。ナウモフ編曲のバッハ「Jean-Sebastien Bach – Transcriptions Pour Piano」は昔CDでも出ていましたが、現在AmazonではMP3で試聴・購入できるようです。どの曲もしっとり歌い上げる、大変美しい曲ばかりです。ぜひピアノで弾いてみて下さい。
収録曲は以下の3曲。
(1) 「おお人よ、汝の大いなる罪に泣け」
’O Mensch bewein dein Sünde groß’
→Amazonでの試聴
(2) マタイ受難曲 より アリア「愛よりしてわが救い主は死にたまわんとす」
’Aus Liebe will mein Heiland sterben’
→Amazonでの試聴
(3) ヨハネ受難曲 より アリオーソ「見つめよ、わが魂よ」
’Betrachte, meine Seel’, mit ängstlichem Vergnügen’
→Amazonでの試聴
■楽譜はこちらで購入できます。(Sheet Music Plus)
look inside | O Mensch Bewein dein Sunde Gross – Aus Liebe will mein Heiland sterben – Betrachte, mein Seel Three Transcriptions for Piano. Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). Arranged by Emile Naoumoff. This edition: Saddle stitching. Sheet music. Piano. Classical. Softcover. 16 pages. Duration 12′. Schott Music #ED20747. Published by Schott Music (HL.49018319). |
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Angela Hewitt’s Bach Book for Piano
昨年末に出版された、興味深い楽譜集の紹介です。
現代の著名なバッハ弾きの一人、アンジェラ・ヒューイット(Angela Hewitt, 1958-)が編纂したピアノ曲集、「Angela Hewitt’s Bach Book for Piano」で、Boosey & Hawkesから出版されました。曲目は、現代の作曲家たちによるバッハの主題(またはB-A-C-Hの主題)を元にした曲が6曲、ヒューイット及び過去の作曲家によるバッハのピアノ編曲が5曲収録されています。
序文にも書いてあるとおり、これは1932年にOxford University Pressから出版された「A Bach Book for Harriet Cohen」(音源は以前紹介した記事参照)を意識していて、その現代版と言えます。コーエン本の方はイギリスの音楽家による、バッハのピアノ編曲が収録されていましたが、ヒューイット本の方はより国際色豊かで、各国の音楽家の委嘱作品を収録しています。
5曲のバッハのピアノ編曲は、2001年にヒューイットがリリースしたアルバム「Bach Arrangements」に収録されています。オルガン小曲集の中から、ヒューイット自身が編曲した3曲も含まれています。
<収録曲>
Dean/ Prélude and Chorale
Bach=Walton/ Herzlich tut mich verlangen, BWV 727
Schwertsik/ Fantaisa & Fuga, op. 105
Holloway/ Partitina: on the opening notes of J.S. Bach’s `Goldberg` bass
Bach=Howells/ O Mensch, bewein dein Sünde gross, BWV 622
Wyner/ Fantasia on BACH
Bach=Hewitt/ Wenn wir in höchsten Nöten sein, BWV 641
Bach=Hewitt/ Das alte Jahr vergangen ist, BWV 614
Muldowney/ Fantasia on BACH
Kats-Chernin/ Bach Study
Bach=Hewitt/ Alle Menschen müssen sterben, BWV 643
■楽譜はこちらで購入できます。(Sheet Music Plus)
look inside | Angela Hewitt’s Bach Book for Piano Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). BH Piano. Classical, Collection. Softcover. 68 pages. Boosey & Hawkes #M060122583. Published by Boosey & Hawkes (HL.48021015). |
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バルトーク版の平均律クラヴィーア曲集
バルトーク(Béla Bartók, 1881-1945)は、多くの自作曲を残した他に、編曲や楽譜の校訂も行っていました。その中で、バッハの平均律クラヴィーア曲集全2巻の校訂版が、EMB(EDITIO MUSICA BUDAPEST)から出版されています。
このバルトーク版平均律曲集、最も特徴的なのは、バッハ・オリジナルの全2巻48曲を教育目的で難易度別に並べ替えてあることでしょう。そして、演奏記号、運指、解釈等が細かく書き込まれた、実用版曲集になっています。また、一部の複雑なフーガは総譜で書かれており、その構造がわかりやすくなっています。曲目順番のオリジナルとの対応は以下の通りです。
<バルトーク校訂版 第1巻>
バルトーク校訂版 | オリジナル | 備 考 |
---|---|---|
No. 1 | 第2巻 第15番 ト長調 BWV 884 | |
No. 2 | 第1巻 第6番 ニ短調 BWV 851 | |
No. 3 | 第1巻 第21番 変ロ長調 BWV 866 | |
No. 4 | 第1巻 第10番 ホ短調 BWV 855 | |
No. 5 | 第2巻 第20番 イ短調 BWV 889 | |
No. 6 | 第1巻 第11番 ヘ長調 BWV 856 | |
No. 7 | 第1巻 第2番 ハ短調 BWV 847 | |
No. 8 | 第1巻 第9番 ホ長調 BWV 854 | |
No. 9 | 第1巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV 858 | |
No. 10 | 第2巻 第21番 変ロ長調 BWV 890 | |
No. 11 | 第2巻 第6番 ニ短調 BWV 875 | |
No. 12 | 第2巻 第19番 イ長調 BWV 888 | |
No. 13 | 第2巻 第11番 ヘ長調 BWV 880 | |
No. 14 | 第1巻 第19番 イ長調 BWV 864 | |
No. 15 | 第1巻 第14番 嬰ヘ短調 BWV 859 | |
No. 16 | 第1巻 第18番 嬰ト短調 BWV 863 | |
No. 17 | 第2巻 第2番 ハ短調 BWV 871 | |
No. 18 | 第1巻 第5番 ニ長調 BWV 850 | |
No. 19 | 第1巻 第7番 変ホ長調 BWV 852 | |
No. 20 | 第2巻 第14番 嬰ヘ短調 BWV 883 | |
No. 21 | 第2巻 第7番 変ホ長調 BWV 876 | |
No. 22 | 第1巻 第1番 ハ長調 BWV 846 | |
No. 23 | 第1巻 第17番 変イ長調 BWV 862 | |
No. 24 | 第2巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV 882 |
<バルトーク校訂版 第2巻>
バルトーク校訂版 | オリジナル | 備 考 |
---|---|---|
No. 25 | 第1巻 第15番 ト長調 BWV 860 | |
No. 26 | 第2巻 第12番 ヘ短調 BWV 881 | |
No. 27 | 第2巻 第1番 ハ長調 BWV 870 | |
No. 28 | 第2巻 第24番 ロ短調 BWV 893 | |
No. 29 | 第2巻 第10番 ホ短調 BWV 879 | |
No. 30 | 第1巻 第16番 ト短調 BWV 861 | フーガが総譜 |
No. 31 | 第2巻 第5番 ニ長調 BWV 874 | フーガが総譜 |
No. 32 | 第2巻 第18番 嬰ト短調 BWV 887 | |
No. 33 | 第1巻 第24番 ロ短調 BWV 869 | |
No. 34 | 第2巻 第9番 ホ長調 BWV 878 | |
No. 35 | 第2巻 第4番 嬰ハ短調 BWV 873 | |
No. 36 | 第1巻 第23番 ロ長調 BWV 868 | |
No. 37 | 第2巻 第3番 嬰ハ長調 BWV 872 | |
No. 38 | 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV 857 | |
No. 39 | 第1巻 第3番 嬰ハ長調 BWV 848 | |
No. 40 | 第2巻 第8番 嬰ニ短調 BWV 877 | |
No. 41 | 第1巻 第22番 変ロ短調 BWV 867 | フーガが総譜 |
No. 42 | 第2巻 第17番 変イ長調 BWV 886 | |
No. 43 | 第1巻 第4番 嬰ハ短調 BWV 849 | フーガが総譜 |
No. 44 | 第1巻 第8番 変ホ短調 BWV 853 | フーガもes(オリジナルはdis) |
No. 45 | 第1巻 第20番 イ短調 BWV 865 | |
No. 46 | 第2巻 第22番 変ロ短調 BWV 891 | |
No. 47 | 第2巻 第16番 ト短調 BWV 885 | |
No. 48 | 第2巻 第23番 ロ長調 BWV 892 |
楽譜はこちらで購入できます。(Sheet Music Plus)
look inside | Well Tempered Clavier – Volume 1 BWV 846-869 Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). EMB. Classical. Editio Musica Budapest #Z4475. Published by Editio Musica Budapest (HL.50511459). |
look inside | Well Tempered Clavier – Volume 2 BWV 870-893 Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). EMB. Editio Musica Budapest #Z4476. Published by Editio Musica Budapest (HL.50511460). |
さて、先日購入したA Cathedral for BachというCDに、このバルトーク版平均律を元にした録音が含まれていました(抜粋で4曲ほどですが)ので、紹介したいと思います。
収録曲目は以下の通り。
・ブゾーニ/バッハの主題による幻想曲
・バッハ/平均律第2巻 第21番 変ロ長調 BWV 890 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「アダムの罪によりてすべて損なわれぬ」 BWV 637
・バッハ/平均律第2巻 第20番 イ短調 BWV 889 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「今ぞ喜べ、愛するキリスト者の仲間たち」 BWV 734
・バッハ/平均律第1巻 第2番 ハ短調 BWV 847 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「汝のうちに喜びあり」 BWV 615
・バッハ/平均律第1巻 第24番 ロ短調 BWV 869 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「アダムの罪によりすべては失われぬ」 BWV 705
・ブゾーニ/対位法的幻想曲
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フーガの技法(連弾版)
先日演奏会で、音楽仲間が弾いたフーガの技法(連弾版)がとても良い編曲だと思ったので(今まで知りませんでした)、早速購入してみました。改めて譜面を見て、やはり良い編曲なので、ぜひともここで紹介したいと思います。
編曲者はヤーノシュ・ツェグレディ(Janos Cegledy, 1937-)、全音ピアノライブラリーの「ピアノ連弾名曲選集(1)」に含まれています。収録曲はフーガの技法の中から、コントランプンクトゥスの第1番と第4番。ツェグレディの編曲では、低音・高音それぞれを効果的に使って音楽を立体的に表現し、対位法的な音の扱いを聞き手にわかり易い形で表現しています。
なおツェグレディについて調べてみると、ピアニスト兼作曲家で、日本レシェティツキ協会を発足させた人のようです。
何にせよ、良い編曲を教えてくれた音楽仲間にも感謝です。
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ストラダル編曲のブランデンブルク協奏曲集
この冬、私は初めて楽譜校正・解説執筆という、楽譜出版のお手伝いをさせていただきました。その楽譜がようやく発売されましたので紹介したいと思います。J.S.バッハ/ストラダル ブランデンブルク協奏曲(ピアノソロ版)です。ブランデンブルク協奏曲の編曲ということで、「アレンジによる抜粋・ハイライト版、または簡易版か?」というお問い合わせを何件かいただきましたが、全6曲省略等は一切無い完全版です。
ところでストラダル (以前は「ストラーダル」とも表記していましたが、「ストラダル」に統一しました)については、このページ内でも何度も紹介してきました。曲目データベースを見てわかる通り、たくさんのバッハのピアノ編曲を残しています。過去の文献(ストラダルの妻による伝記)には出版社・曲名・プレート番号のみが曲目リストに掲載されており、見ただけでは同じ調の楽曲の区別がつきませんでした。そこで、今回出版した楽譜の解説ページには、ストラダルが出版した楽譜(未出版の手稿譜含む)の一覧をBWV番号と紐付けて掲載しました。
そしてリプリントといっても、全てデジタル浄書し直したもので、読譜しやすくなっています。Schuberth社から出版されていたオリジナルの楽譜上いくつもの誤植と思われる箇所についても、原曲と比較して修正を加えました。
何にせよ、ブランデンブルク協奏曲は私がバッハの曲の中で最も好きな曲集なので、その出版に携わることができて幸せです。
最後になりましたが、校正や独語文献和訳のお手伝いをして下さったHさん、Yさん、Mさん、ありがとうございました。
2台ピアノ編のパッサカリア BWV 582
ここ三ヶ月くらい楽譜出版のお手伝いをしていたことでなかなか更新ができず、二ヶ月ぶりになってしまいました。今回は、今週末の演奏会で演奏する予定の、二台ピアノ編のパッサカリアを紹介したいと思います。
J. S. Bach = G. Tagliapietra
Passacaglia in C minor BWV 582 (free transcription for two pianos)
バッハ=ターリアピエトラ パッサカリア ハ短調 BWV 582 (二台ピアノの為の自由な編曲)
バッハはパッサカリアと題した曲を1曲だけ残しました。原曲はオルガン曲で、8小節の低音主題をもとに20の変奏を繰り広げ、その後124小節に及ぶフーガが続きます。そのため、「パッサカリアとフーガ」という曲名もよく使われます。
さて編曲者ターリアピエトラ(Gino Tagliapietra, 1887-1955) は、イタリア生まれの作曲家兼ピアニストであり、ブゾーニの弟子でした。バッハのピアノソロ用編曲もいくつか残しています。この編曲の楽譜は、昨年国立音大の図書館で見つけることができました。ピアノソロのための編曲は他にも多く残されていますが、ブゾーニは残念ながらパッサカリア全曲の編曲を残しませんでした。ターリアピエトラのこの編曲はブゾーニの編曲技法をよく継承しており、音域を拡大しながら音の厚みを増やし、原曲の持つ壮大な響きを果敢にピアノ二台で再現した、充実した音楽になっています。
二台ピアノのために編曲されたパッサカリアは、他にはフィリップ編、ケラー編があります。三者三様ですが、ピアノの広い音域を活用し二人の奏者にうまく割り振っている点など、ターリアピエトラ編が最も優れた編曲ではないかと私は思っています。
残念ながら、この編曲の演奏録音は残されていないと思われます。
プロの演奏家にももっと取り上げて欲しい作品です。
(2016/10/31追記)
CD/DVDでリリースされました。
記事:ブゾーニ関連の2台ピアノ作品CD/DVD参照
カツァリス、サイの編曲譜到着
Schott社から新たに出版された二つの楽譜が届きました。シプリアン・カツァリス編曲のバディヌリーと、ファジル・サイ編曲の幻想曲とフーガ ト短調 BWV542です。
カツァリスのバディヌリーは以前CD紹介したもので、リストの「超絶技巧」トランスクリプションの世界を彷彿させるアクロバティックな編曲です。
(Bach=Katsaris/ Badinerie)
サイ編曲の幻想曲とフーガ ト短調 BWV542は、昨年の冬に演奏会で聴いた曲です。この楽譜には、強弱・緩急・細かい表現まで指定されています。
(Bach=Say/ Fantasy and fugue g-moll BWV 542)
Schott社なので日本でも買えるようになると思いますが、di-arezzoとSheetMusicPlusでのリンクを書いておきます。
カツァリス編曲 バディヌリー
→http://www.di-arezzo.jp/detail_notice.php?no_article=SCHOM03562
Badinerie (Piano Solo). By Johann Sebastian Bach (1685-1750). Arranged by Cyprien Katsaris. Piano. Softcover. 12 pages. Schott Music #ED20615. Published by Schott Music (HL.49017736) …more info |
サイ編曲 幻想曲とフーガ ト短調 BWV542
→http://www.di-arezzo.jp/detail_notice.php?no_article=SCHOM00720
Fantasie and Fugue in G minor, BWV 542 (The Virtuoso Piano Transcription Series, Vol. 15). By Johann Sebastian Bach (1685-1750). Arranged by Fazil Say. Piano. Softcover. 20 pages. Schott Music #ED20635. Published by Schott Music (HL.49017786) …more info |
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無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番(全曲)のピアノ編曲版
先週末店頭にて、全音から出版された無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番(全曲)のピアノ編曲楽譜を購入しました。出版日を見ると、2009年6月15日。先日blogで紹介した菊地裕介氏のCD「変貌するバッハ」に収録されていた曲で、あの有名なブゾーニ編のシャコンヌを終曲とする組曲全体(アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ)を菊池氏がピアノソロ用に編曲したものです。適度に挿入された対旋律が、ピアノで弾く豊かさを増しています。解説も充実しており、編曲にあたっての姿勢・考え方が論理的に書かれていました。共感するとともに、あまりに的確な表現だと感じましたので、そのままの文章を引用させてください。
全曲を通すことによってしか迫れない「何か」を求めた結果である。
・・・・
ヴァイオリンによる演奏をピアノによって模倣しようとしたのではない、という筆者のスタンスを強調しておきたい。ピアノという楽器の特徴を活かし、的確で簡潔なイントネーションによって、「音符」によって象徴される幾何学的な美学をより一層浮き彫りにし、ヴァイオリンでの演奏とはまた異なる楽曲の魅力を追求したい。
さらに、ブゾーニ編のシャコンヌにも数多くの校訂報告がなされています。今後シャコンヌを勉強する人々にとっても、有意義な指南となることでしょう。私はまだシャコンヌには挑戦していませんが、その際にはぜひこの楽譜も参考にしたいと思います。何にせよ楽譜全体を通して、非常に密度の濃い素晴らしい内容、価値のある一冊だと思いました。
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