スヴェティスラフ・スタンチッチ(Svetislav Stančić, 1895-1970)、クロアチアのピアニスト、作曲家、そして音楽教育者です。去年、黒岩悠氏のCD「Inspire To/From J.S.Bach」で初めて知った音楽家でした。興味深いバッハのピアノ編曲を残していたため、その後この音楽家について調べ、楽譜を探していました。
英語圏の情報を探してもなかなか見つけられず、YouTubeで見つけたスタンチッチを弾くピアニストにメールで頼み込み、楽譜をコピーしてもらいました。感謝です。
スタンチッチは、1920年から1922年にかけて、ブゾーニの元で作曲を学びました。そのワークショップの中で1922年に創られた編曲が、今回紹介する『カンタータによる4つの前奏曲』(Vier Kantaten – Vorspiele)で、ブゾーニに捧げられたようです(an Feruccio Busoni, Berlin 1922. と書いてありました)。収録曲は以下の4曲、それぞれカンタータの冒頭楽章をピアノ・ソロ用に編曲しています。さすがブゾーニの弟子、分厚い音で豊かな響きを出すことに成功しています。また、この4曲を続けて演奏すると、緩-急-緩-急、長-短-短-長、バランスの良い4楽章の楽曲として演奏可能です。以下、譜例とともに紹介します。
1. Prelude from Cantata BWV 106 “Actus tragicus”
2. Prelude from Cantata BWV 18 “Sinphonia”
3. Prelude from Cantata BWV 12 “Weinen, Klegen, Sorgen, Sagen”
4. Prelude from Cantata BWV 31 “Am ersten Osterfesttage”
録音は、前述した黒岩氏のCD(1曲目)の他、いくつかはYouTubeで聴くことができます。
こちらはKadri-Ann Sumera による3曲目の演奏。YouTubeには2曲目の演奏もアップされています。
こちらは全曲を通した、スタンチッチの弟子であるRanko Filjak の録音。
手の込んだ素晴らしい編曲であるため、もっと世に広まってもらいたいものです。
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