2009年3月のエントリー 一覧

以前CDの紹介「ブゾーニ版バッハ集のCD 第1弾」で取り上げた、ブゾーニ編曲のピアノ協奏曲 ニ短調 BWV1052について、改めて楽譜を交えて紹介したいと思います。

これは当時のチェンバロ協奏曲を、ピアノでもっと良く響くように、ブゾーニが数々の工夫を加えたものです。たとえば通奏低音パートとしてのピアノパートは排除し、ピアノの音域をフル活用するようにピアノならではのパッセージに書き換えられています。
以下、オリジナルのチェンバロパートとブゾーニ版の同じ部分を見比べてみます。

Bach/ Concerto d-moll BWV 1052
(Bach/ Concerto d-moll BWV 1052)

オリジナルでは同じ音域でのパッセージを、音楽の流れそのものは変えずに、ブゾーニ版では高音まで演奏音域を拡大しているのがわかります。

Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052
(Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052)

この手法はあらゆる場所で活用されています。また次の例は、音域の拡大に加え、和音に音を追加することで響きを豊かにしています。

Bach/ Concerto d-moll BWV 1052
(Bach/ Concerto d-moll BWV 1052)

Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052
(Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052)

そしてカデンツァはこうなってます。小さくて見えないかと思いますが、ピアにスティックな様はわかると思います。
Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052
(Bach=Busoni/ Piano Concerto d-moll BWV 1052)

さてその録音ですが、まずは近年のクリアな音質での録音はとしては、以前紹介した「ブゾーニ版バッハ集のCD 第1弾」のほかに、「アダム・スコウマルの演奏によるCD」が挙げられます。このCDには、この協奏曲の他に、ラフマニノフ編曲の無伴奏ヴァイオリンパルティータ、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が収録されており面白いカップリングです。

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そして、ヒストリカルな録音としては、リパッティのCD「Dinu Lipatti plays Bach」や「Lipatti Liszt, Bartok, J.s.bach: Piano Concerto」が挙げられます。特に前者はリパッティが残したバッハの名録音が多く含まれており、ぜひ手にしておきたい一枚です。

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以上、主にHMVへのリンクを張りましたが、Amazonでは以下のリンクをご参照ください。

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ハイドシェックのパルティータ

今回はバッハのオリジナル作品の録音についてです。
エリック・ハイドシェック(Eric Heidsieck, 1936-)、フランスの大ピアニストですが、私のCD棚にはモーツアルトとフォーレの録音が数枚ある程度で、バッハを弾いている録音があるなど、知りませんでした。

パルティータ第1番、第2番、第3番 ハイドシェック

先月HMVの新着情報でハイドシェックのバッハ録音が再発売されるという情報を知り予約注文しており、今日届いて早速聴いている次第ですが、その素晴らしさに吃驚させられました。強弱やペダルを多用していますが、細かいところまで配慮が行き届いているというか、丁寧に曲の良さを訴えかけてくるというか、なかなか言葉で表せないながら大変気に入ったのは確かです。曲目は、パルティータ全曲と、イタリア協奏曲、フランス風序曲というバッハの出版された代表作をカバー。よく聴いてみると、なにやら随所に音が追加され艶やかな音楽になっています。もしやブゾーニ版(ペトリ編)?と思いきや、それらとも違いました。ハイドシェックのセンスなのでしょうね。
なお、以下のリンクで、HMVで購入できます。

パルティータ第1番、第2番、第3番 ハイドシェック
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パルティータ第4番、第5番、第6番 ハイドシェック
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イタリア協奏曲、フランス風序曲 ハイドシェック
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バッハの二台ピアノ協奏曲作品の録音(ハイドシェック夫妻での演奏)もあるようで、そちらも到着が待ち遠しいです。

2台のピアノのための協奏曲集 ハイドシェック、T.ハイドシェック、グラン・リュエ音楽祭管
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左手のためのバッハ編曲

左手のためのバッハ編曲。先日は、私が自分で編曲した左手のためのサラバンドについて書きましたが、今回は名のある音楽家が残した左手のためのバッハの編曲を紹介しようと思います。結構数があるようで、曲目データベースの方でも、左手のための曲目が網羅できていなかったので、この機会に整理してみました。
もっとも有名なものとしては、ブラームス編曲のシャコンヌでしょう。記録によれば、1879年に書かれたようです。

Bach=Brahms/ Chacconne for left hand only

次に有名どころとして、ラヴェルから左手のための協奏曲を献呈された左手ピアニスト、ヴィットゲンシュタイン(Paul Wittgenstein,1887-1961) の残した「左手のための練習曲集」(Schule für die linke Hand)の中にも、バッハの編曲がいくつか含まれています。
 →ヴィットゲンシュタインによる編曲リスト

ところで、おそらく左手だけのピアニストとしてはもっとも古いと思われる、ゲザ・ジチー(Géza Zichy, 1849-1924) も、1883年に左手用のシャコンヌを残しています。この編曲はブラームスによるものよりもずっと難しく、結尾部には独自のカデンツを付け加えていたりと、非常にピアニスティックな編曲になっています。ブラームス編と並べて見てみるとその凄まじさがよくわかります。冒頭部分はそれほど変わりませんが、音域は1オクターブ高く設定しています。
Bach=Zichy/ Chacconne for left hand only

まだまだあります。大量のバッハの編曲を残している、イシドール・フィリップ(Isidor Philipp, 1863-1958) は、「バッハによる、左手のための4つの練習曲」という曲集を残しています。この曲集には、無伴奏ヴァイオリン曲の中から、ホ長調の前奏曲ロ短調のブーレト短調のプレスト、そしてシャコンヌ(下図)が含まれています。
Bach=Philipp/ Chacconne for left hand only

さらに、現役のピアニスト、ラウル・ソーザが編曲した半音階的幻想曲とフーガは驚異的な編曲です。1999年に来日したときに実際に聴きましたが、独自の創造を織り交ぜながら、 メロディーの音型や音域を変えつつ音楽の持つ精神そのものを見事に表現しています。これはCDでも聴けるのでぜひ聞いてみて下さい。

 →「Amazon: An Anthology for the Left Hand

ソーザの他の左手用編曲としては、3声のインヴェンション(シンフォニア) 第14番 変ロ長調もあります。





その他、ジョセフィー(Rafael Joseffy, 1852-1915)は、無伴奏ヴァイオリンパルティータのガヴォットを左手用に編曲しています。これも見事な編曲だと思います。
Bach=Joseffy/ Gavotte for left hand only

最後に紹介するのは、楽譜は見たことが無いですが、トレインという人が編曲した、無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードの左手版の映像はYouTubeで見ることができます。

以上、私が知る左手のためのバッハ編曲を網羅したつもりです。他にご存じの方がいらっしゃれば、ぜひご教示下さい。

hyperionレーベルが定期的にリリースしてきたバッハ編曲集、次は第7弾で、マックス・レーガー(Max Reger, 1873-1916) の編曲集、発売は2009年6月とのことです。ピアニストはマルクス・ベッカー(Markus Becker)。レーガーの編曲は音が多く重厚なもので、どのような音楽として再現されているか非常に楽しみです。hyperionバッハ編曲集 第4弾・フェインベルグ編と同様に、CD2枚組、1CDプライスだそうです。以下のhyperionサイトへのリンクで、曲の冒頭が試聴できます。やはりテンポは遅め、ロマン派風解釈っぽいです。発売後にまたレビューを書きたいです。

Bach J S: Piano Transcriptions, Vol. 7 – Max Reger


ピアノ・トランスクリプションズ第7集~レーガー編曲全集 ベッカー(2CD)

収録曲は以下の通りです。
Prelude and Fugue in D major, BWV532
O Mensch, bewein' dein' Sunde gross, BWV622
Durch Adams Fall ist ganz verderbt, BWV637
Ach wie nichtig, ach wie fluchtig, BWV644
Nun danket alle Gott, BWV657
Herzlich tut mich verlangen, BWV727
Wenn wir in hochsten Noten sein 'Vor deinen Thron tret ich', BWV668
Valet will ich dir geben, BWV736
Es ist das Heil uns kommen her, BWV638
Liebster Jesu, wir sind hier, BWV730
Vom Himmel hoch, da komm ich her, BWV606
Prelude and Fugue in E flat major 'St Anne', BWV552
Prelude and Fugue in E minor 'The wedge', BWV548
Christ lag in Todesbanden, BWV Anh 171
Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ, BWV639
An Wasserflussen Babylon, BWV653b
Komm, heiliger Geist Herre Gott, BWV651
Schmucke dich, o liebe Seele, BWV654
Das alte Jahr vergangen ist, BWV614
Toccata and Fugue in D minor, BWV565

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プロフィール

田中 博幸 (Hiroyuki Tanaka
hiro105@cc.rim.or.jp
音楽、バッハ、ピアノが好きなサラリーマン。バッハのピアノ編曲に関する楽譜/音源を収集、研究している。フーガやカノンなどの対位法的楽曲を好む。ピアノの他、和声と対位法を勉強中。片手のためのピアノ編曲を創作。「左手のアーカイブ」プロジェクトで編曲家として活動。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
IMSLPに公開した作品は、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0 非移植 ライセンスに基づく。

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