バッハのピアノ編曲として注目の新譜CD『Bach Illuminationes』の紹介です。ピアニストはアンゲリカ・ネーベル(Angelika Nebel)、以前も「Bach Metamorphosis」や「Bach Transcriptions for Piano」といったバッハのピアノ編曲について意欲的な内容のCDをリリースしており、このサイトでも紹介してきました。今回も、有名どころの編曲はリスト編とペトリ編くらい、他はこのCDでしか聴くことが出来ない編曲ばかりが収録されています。HMVのキャッチコピーで「バッハ編曲ファン狂喜、聴きたかった曲が理想的ドイツ・ピアニズムで再現」 とありますが、まさにその通りです。ライナーノーツにも触れられてましたが、バッハは生涯ドイツ国外に出ることがなかった作曲家だったことに対して、編曲者はオーストリア、ハンガリー、イギリス、ロシア、ブラジル、と国際的な多様性を意図したプログラミング。なお今回も編曲者に名を並べている、ブラジル出身の若い音楽家プラド(Wagner Stefani d’Aragona Malheiro Prado, 1982-)はネーベルの弟子です。プラド編は前回のCD「Bach Metamorphosis」に収録されていた「6声のリチェルカーレ」が素晴らしかったのですが、今回のCDにある有名な 管弦楽組曲第3番の『アリア』も負けじと、音が厚く豊かな響きを持ったとても良い編曲です。なおこのアリアの編曲は10年以上前から別のピアニストの録音『Bach for Christmas』で知っていました。1999年に作られた編曲で、ブラジルでは有名な編曲なのかもしれません。
収録曲は以下のとおりです。
1. 前奏曲とフーガ ハ長調 BWV 545(リスト編)
2. ヴァイオリン・ソナタ BWV 1017より『シチリアーノ』(クールストロム編)
3. 管弦楽組曲第3番 BWV 1068より『アリア』(プラド編)
4. 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 BWV 1004より『ジーグ』(ツァーベル編)
5. 目覚めよと呼ぶ声あり BWV 645(シュタルク編)
6. 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 BWV 1006より『ロンド風ガヴォット』(パウエル編)
7. 深き淵よりわれは呼ぶ BWV 745(サーント編)
8. パストラーレ BWV 590(ウィッテカー編)
9. 主イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BWV 639(ネーベル編)
10. 汝イエスよ、今天より降りたもうや BWV 650(ネーベル編)
11. 小前奏曲とフーガ 第6番ト短調 BWV 558(カバレフスキー編)
12. 甘き喜びのうちに BWV 729(マードック編)
13. トッカータ ハ長調 より 『アダージョ』 BWV 564(ネーベル編)
14. 羊は安らかに草を食む BWV 208(ペトリ編)
15. いざ来たれ、異教徒の救い主よ BWV 62(プラド編)