最近入手した有森博 氏のCD、「音楽の玉手箱~露西亜秘曲集~ 」がとても良く、また面白かったので紹介したいと思います。CDの内容はロシアの知られざる佳曲を選りすぐって収録しているもので、聴いたことのある曲から初めて聴く曲まで、民族色の強い曲などもあり大変楽しめます。曲目はAmazonのリンクをご参照ください。
これらの収録曲の中にバッハのピアノ編曲、G線上のアリアが収録されており、それがまた秀逸。ニコライ・ヴィゴードスキー(Nikolai Wigodsky, 1900-1939)による編曲で、楽譜は見たことがあったものの今までほとんど情報がありませんでした。これがプロの演奏で聴けるとは思ってもいませんでした。楽譜は3段(高音・中音・低音部)になっていますが、ちょうど二本の手で弾けるように編曲されており、かつ声部が見やすくなっています。以下の楽譜はその冒頭部分です。
興味深いのは、前半・後半ともに繰り返し部分でメロディーラインが中音部に現れるのです。
A – A’ – B – B’ と表記すると、A’とB’のメロディーを中音部で演奏しており、この部分の響きがとても新鮮で、ありがちな編曲と一線を画しています。(さらなるアレンジとして、A – A’ – B’ – B と演奏するのも良いかなと思いました)
ライナーノーツにもチェロによる響きをイメージさせると書いてありましたが、確かにその通りで、例えばカザルスやヨーヨーマがチェロで弾いた演奏がありますが、それと似た感じになります。そして何より、この有森氏の演奏が素晴らしいです。譜例を出して言葉で説明するのは易しいですが、これを確かに演奏するためには繊細なコントロールが必要でしょう。静かに聴き入ってしまう名演です。
何にせよ、このCDには大変楽しませてもらいました。
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カテゴリー: CD/DVD
アムランの弾く「バッハによる幻想曲」
今回はブゾーニの名作「バッハの主題による幻想曲」と、それが収録されたCDの紹介です。原題 “Fantasia nach J. S. Bach” と題されたこの曲は、1909年、彼の父の死に際して3日間で書かれた曲で、静かで瞑想的な土台の上に、力強くバッハのコラールが歌われます。この曲は、編曲というよりも「バッハの音楽をモチーフに作曲されたピアノ曲」という分類になると思います。引用しているのは以下のバッハのオルガンコラールです。
・コラールパルティータ 「キリストよ、汝真昼の光」 BWV 766
・コラール「神の子は来たりたまえり」 BWV 703
・コラール「全能の神を讃えん」 BWV 602
ブゾーニのゆるやかに流れるような瞑想的なファンタジアで始まり、へ短調で物憂げなコラールのテーマによるコラールパルティータ 「キリストよ、汝真昼の光」 BWV 766 が現れます。いくつかの変奏が盛り込まれ、途中でヘ長調のコラール「神の子は来たりたまえり」BWV 703 や、コラール「全能の神を讃えん」 BWV 602が導入されると曲は輝かしく喜びに満ちた音楽に変わっていきますが、その後もヘ短調のコラール変奏は何度も再現され、終結部に向かって静かに安らかな眠りへと誘う、そんな音楽です。
さてこの曲の素晴らしさを最もよく伝えてくれている演奏として、アムランのCD「The Composer Pianists」を挙げたいと思います。ブゾーニの比較的有名な曲だけに、録音も多く残されていますが、私はこのアムランの演奏を凌ぐものをは未だ無いと思ってます(下で挙げるペトリを除いて)。
なお、この曲の初演を果たしたブゾーニの高弟、ペトリの録音「Busoni: Complete Recordings 」も大変素晴らしいです。クリアなサウンドで聴けたら文句なしなのですが。
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Hamelinの演奏 | Petriの演奏 |
—-(ご参考)楽譜—-
Fantasia nach J. S. Bach Fantasia nach J. S. Bach by Ferruccio Busoni (1866-1924). For piano. Paperback. Edition Breitkopf. 16 pages. Published by Breitkopf and Haertel (BR.EB-3054) …more info |
Bach Performance on Piano (Hewitt)
先日リリースされた、アンジェラ・ヒューイットのDVD「Bach Performance on Piano」の紹介です。
ヒューイットが、バッハを現代のピアノで演奏するための基礎から応用まで、演奏を交えて解説してくれています。実際にヒューイットの弾くピアノで演奏方法とその効果が聞けるので、とても説得力があります。(日本語字幕もあります)
ピアノが無かった時代のバッハの音楽を、現代ピアノの表現力をもって演奏するにはどうすべきか。まさに私が興味を持っている分野で、このページのメインテーマでもありますが、自他共に認めるバッハ一人者であるヒューイットによって見事に最適解の一例が出されています。レクチャーは約150分、密度の高い内容だと思います。
なおこのDVDは2枚組みで、1枚目に上述のレクチャー、2枚目には演奏会でのライブ映像が収録されています。曲目は、パルティータ第4番、イタリア協奏曲、半音階的幻想曲とフーガです。ピアノはファツィオリです。
(※リージョンコードの違いにご注意下さい)
リフシッツのピアノで弾く「音楽のささげもの」
先月末に発売されたばかりのCD、「Bach: Musikalisches Opfer」がなかなか面白い内容でしたので紹介します。
バッハの作品の中で謎かけの多い「音楽のささげもの BWV1079」の中から、3声・6声のリチェルカーレ、カノン、トリオソナタをコンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz, 1978-)のピアノ演奏で聞くことができます。3声・6声のリチェルカーレはピアノでも演奏できるのでニコラーエワをはじめいくつかの録音で聴くことができますが、種々のカノンやトリオソナタを含めてピアノで演奏しているのはこれが初めてではないでしょうか?(もし他にピアノで演奏している録音があれば教えてください)
それにしてもトリオソナタはどうやって一人で弾いているのか?と思い注意深く聴いてみると、どうやら多重録音で一人で二台ピアノ(連弾?)の演奏としているように思われます。CDのライナーノーツにも特にそういった記述は見当たらなかったので、どの曲がソロで弾いていてどの曲が多重録音なのかよくわからないのですが・・・ピアノの音色が好きな私としては、たとえ多重録音であったとしても、「音楽のささげもの」がピアノの響きで聴くことができるというこのCDの意義は非常に大きいものです。
なおこのCDには、他には前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV 552と、フレスコバルディの3つのトッカータの録音も収められています。
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Exquisite Rarities Of Piano Music
久しぶりの更新になってしまいました。さてこのタイトル「Exquisite Rarities Of Piano Music」というCDを手に入れ、その内容が大変興味深いものでしたので紹介します。タイトルの通り、極めて珍しいピアノ音楽ということですが、その中にバッハのピアノ編曲も収録されていました。カバレフスキー編曲のトリオソナタ 第2番 ハ短調です。CDのジャケットはこちら。
Amazon等メジャーな通販サイトでは見かけませんが、Briosoというサイトで購入できます。注文するとCEOの丁寧なメッセージ付でCDが送られてきました。
さて、カバレフスキー編曲のトリオソナタ 第2番 ハ短調、これが非常に優れたピアノ編曲です。煌びやかな高音部、色彩感豊かな中音部、効果的な低音。ブゾーニのバッハの編曲、特にオルガン曲の編曲は、オルガンの重厚な響きとその音楽の本質をピアノで効果的に再現することに成功していると思いますが、一方でカバレフスキーのこの編曲はオルガンの響きを再現するのではなく、原曲の音楽素材をもとに効果的なピアノ曲として生まれ変わっていると思います。このような感想を持つ素晴らしい編曲は、他にはフェインベルグ編曲のラルゴが挙げられます。ぜひこういう曲は広く世に出回って欲しいものです。
<収録曲>
BR143 – Exquisite Rarities Of Piano Music
Rachmaninoff, Bach, Schubert, Mozart, and more
Tobias Bigger, piano
1. Rachmaninoff/ Polka de WR
2. Scarlatti=Granados/ Sonata in a, L 469
3. Brahms=Bigger/ Waltz op. 65a No. 3
4. Bach=Warren/ Aria “If Thou Art Near”, BMV 508
5. Severac/ “Les Muletiers” from Suite “Cerdana”
6. Tchaikovsky=Wild/ “At the Ball” Op. 38, No. 3
7. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Allegro
8. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Largo
9. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Allegro vivace
10. Faure=Cartot/ Berceuse from Suite “Dolly” op. 56
11. Medtner/ Dithyrambe op. 10, No. 1
12. Schoeck=Bigger/ Lullaby
13. Purcell=Stevenson/ Hornpipe
14. Schubert=Godowsky/ “Good Night” from “Winterreise”, D 911
15. Mozart=Stradal/ Minuet from Symphony No. 40
16. Foster=Warren/ “Beautiful Dreamer”
17. Brahms=Cziffra/ Hungarian Dance No. 9
18. Handel=Wild/ Aria and Variations (“Harmonious Blacks,ith”)
レスチェンコの弾くバッハ編曲
ロシアの若手ピアニスト、ポリーナ・レスチェンコがバッハの編曲モノもいくつか録音しているため、紹介したいと思います。このピアニストは、かのアルゲリッチがお勧めの新鋭の一人で、過去にEMIからリリースされた「Bach/Brahms/Chopin: Piano Recital」というCDでこの人を知りました。リストとブラームスのパガニーニ変奏曲や、ショパンの華麗なるポロネーズなどの華やかな曲のなかで、落ち着いた佇まいのラルゴ(バッハ=フェインベルグ)が演奏されます。確か2003年の別府アルゲリッチ音楽祭でもこの曲が演奏され、さらに最近では2007年7月にすみだトリフォニーでも演奏されました。NHKの連載番組「ぴあのピア」でも放映されましたが、残念ながらこのラルゴは途中でカットされてしまっていました。このラルゴは私の最もお気に入りな曲の一つですが、しかし、レスチェンコのこの曲の演奏はあまり気に入りませんでした。独立した3声のメロディーのはずが、右手のメロディー+左手の伴奏みたいに聞こえてきてしまう演奏です。またいい気分で聴いている中で突然大音量の低音が鳴り響いたりするところもいただけません。
一方で、以前の記事、リスト編曲の前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543として、この曲についてのいろいろな解釈のCDを紹介しましたが、このレスチェンコの「Liszt Recital」(このアルバムはハイブリッド・タイプのSACDです)に収録された同曲の演奏は、最も過激な解釈でかつピアノ独特の良さが出ていると思います。度を越した自由な溜めや、踏みっぱなしにしたダンパーペダル。はじめてこの録音を聴いたときは相当びっくりしました。原曲を敢えて思い出さないように聴くこと(これが大切!)で、自然なピアノ曲として聴こえてきます。こんなリストの曲がありそうです。このCDではリストのソナタやファウスト・ワルツなども驚異的なテクニックで魅せます。前述のラルゴはイマイチでしたが、前奏曲とフーガ イ短調の演奏は一聴の価値アリです。今後他のバッハの超絶技巧編曲もぜひ手がけて欲しいものです。
■Liszt Recital収録曲目
・バッハ=リスト/前奏曲とフーガ イ短調
・バッハ=ブゾーニ/シャコンヌ
・グノー/リスト/歌劇『ファウスト』のワルツ
・リスト/ピアノ・ソナタ ロ短調
■Bach/Brahms/Chopin: Piano Recital収録曲目
・リスト/スペイン狂詩曲
・クライスラー=ラフマニノフ/愛の悲しみ
・ショパン/ロンド 作品16
・ブラームス/パガニーニ変奏曲
・バッハ=フェインベルグ/ラルゴ
・リスト/パガニーニ練習曲 第6番
・ショパン/アンダンテスピアナートと華麗なるポロネーズ
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ニコラーエワの初出ライブ録音
オリジナルのバッハの曲の話題です。最近発売された、久しぶりのニコラーエワの初出ライブ録音、「Bach: Goldberg Variations」が良かったので紹介します。
1986年11月10日、ロンドンでのライブ録音で、音質も良いです。メインはゴルトベルク変奏曲です。ニコラーエワのゴルトベルクはほかにもいくつか出てますが、これが一番迫力と熱気に溢れている録音です。(後半はミスも多くもたつくところもありますが)
アンコールでパルティータ5番のプレアンブルムと主よ人の望みの喜びよが演奏されています。このパルティータ5番のプレアンブルムがびっくり、速い。興奮気味ながら、力強く突き進み、決して崩壊することなく弾ききっています。すごい演奏だと思います、何度も聴いてしまいました。
そういえばニコラーエワのパルティータの録音は、CDになっているのはまだ4番だけです。メロディアのディスコグラフィーによると、パルティータの全曲を録音しているはずなのですが、なぜ出てこないのでしょうか。
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ウィーン旅行での収穫
しばらく更新が滞ってしまいました。11/14~21まで、ザルツブルクとウィーンへ旅行に行ってきました。ウィーンでは、バッハというよりもモーツアルトやシュトラウスが中心でしたが、観光の合間に立ち寄った楽譜店にて、持っていなかったバッハ編曲モノの楽譜を3点ほど入手しました。小品を2曲、大曲を1曲。
まずは、アレクサンドル・タロー編曲の「シチリアーノ(ヴィヴァルディの協奏曲のオルガン編曲より)」と「アンダンテ(原作者不明の協奏曲のクラヴィーア編曲より)」です。両曲ともにアレクサンドル・タローのCD「Concertos italiens 」に収録されているものです。
(Bach=Tharaud/ Sicilianne from Concerto nach Vivaldi d-moll BWV 596)
次に大曲の方は、ファジル・サイによる「パッサカリア ハ短調」の編曲。ただ分厚い和音だけでなく高音域をよく使ったピアニスティックな編曲になっています。
(Bach=Say/ Passacaglia c-moll BWV 582)
こちらは音源は出ていないものの、来日演奏会でも何度か演奏されており、私も王子ホールで聴きました。終演後のサイン会で私は「楽譜を出版するつもりがあるか?」という質問をしましたが、「もちろんそのつもりだ」という答えをもらっていました。SCHOTT社の「The Virtuoso Piano Transcription Series」の第12巻として今年出版されたばかりのようです。帰国後検索してみたところ、楽譜オンラインショップ di-arezzoでも入手できるようです。
追記: SheetMusicPlusでのリンクはこちらです。
Passacaglia and Fugue in C Minor (The Virtuoso Piano Transcription Series, Volume 12). By Johann Sebastian Bach (1685-1750). Arranged by Fazil Say. This edition: ED20137. Piano. 20 pages. Published by Schott Music (HL.49016112) …more info |
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トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565 (1)
トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565は、バッハの音楽のピアノ編曲を語る上で欠かすことはできません。あまりに有名すぎて、この曲を取り上げて記事を書くのは躊躇われます。明らかに1回の記事で想いのすべてを書ききることはできないと思いましたので、続編を思わせるタイトルにしました。
原曲はオルガン曲。タララ~と始まる激しい下降音形と、続く大量の音と早急なパッセージとで情熱的なトッカータ。間にフーガが演奏され、最後にまた激しく盛り上がるという、後世の音楽家たちにとっても、ピアノの腕自慢として弾くのにもってこいの楽想。オリジナルの冒頭はこうなっています。
(Bach/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
さて、私が保有するこの曲のピアノ編曲版の楽譜は20種類を超えており、まだまだ他にもどんどん出てくる気がします。今日はその中から4つほど紹介します。まずは最も有名なブゾーニによる編曲。下の方でいろいろな編曲を紹介しますが、他の編曲はピアニスティックな派手な効果を狙おうと、色々な工夫(悪あがき?)をしているのに対して、ブゾーニ編がもっとも原曲の構成に忠実です。バッハの楽譜の通りのリズムで音を配置した上で、音を分厚くしたりペダル効果をめいいっぱい使った編曲です。
(Bach=Busoni/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
一方で、この曲のピアノ編曲としては草分け的な存在なのが、タウジッヒによる編曲。出だしのトリル(A-B-A-B-A)が、現代の感覚では違和感がありますが、ブゾーニ編よりも派手で、時には原曲の音の形を変えて、ピアノならではの演奏効果を狙っています。
(Bach=Tausig/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
なお、オーストラリアのピアニスト、グレインジャー(ブゾーニの弟子の一人)はブゾーニ編とタウジッヒ編の良いところを混ぜ合わせて演奏会で弾いていたようです。ハワードがその演奏をグレインジャー編として譜面に起こしており、数名のピアニストがCDに録音しています。私は、このグレインジャー編がピアノで弾いた際に最もバランスが良いと思っており、演奏会で何度か弾いたこともあります。
続けて紹介する2曲は、比較的マイナーなものになりますが、冒頭の編曲手法の違いが如実に出ていることから紹介したいと思います。まずは、ピアニストとしては有名なコルトーによる編曲。コルトー編の楽譜は何度も店頭で見かけたことがあり、日本でも手に入りやすいものだと思います。冒頭のトリルからして、右手はA-A-Aのオクターブ移動、左手はA-G-A。下降音形も、3連符の連続。ペダル低音の上に乗る和音進行も分散和音化。冒頭部分だけを見ても、いろいろな工夫をしようとしています。
(Bach=Cortot/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
次に、ストラーダルによる編曲。これまた重たい編曲で、すべてオクターブ和音で演奏されます。ペダル低音の上に乗る和音進行は、コルトー編よりもさらに派手に、広い音域のスケールで盛り上げています。続きもずっとこの調子で派手に展開されます。
(Bach=Stradal/ Toccata and Fugue in D minor BWV 565)
今日紹介したもののうち、ブゾーニ編、タウジッヒ編、グレインジャー編については以下に紹介するCDで聞くことができます。
続きは、また別の日に書きます。
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Busoni編 | Tausig編 | Grainger編 |
グールドのイタリアン・バッハ
今回もバッハオリジナルの曲の紹介です。前回バッハが編曲した協奏曲についての話題を書きましたが、かの有名なグールドのCD「未完のイタリアン・アルバム」にもマルチェッロのオーボエ協奏曲の編曲、協奏曲 ニ短調 BWV 974が収録されています。さてこのCD、定番のイタリア協奏曲も素晴らしいですが、中でも最も優れた演奏と感じるのはアルビノーニの主題によるフーガ・ロ短調。グールドならではの完璧なまでに独立した声部の歌い回しには、曲の良さと共鳴し、あらためて感動させられます。跳躍と半音階下降のある、興味をそそられるテーマが重ねられていきます。
(Bach/ Fugue on a theme by Albinoni h-moll BWV 951)
その他の曲としては、レチタティーヴォを大胆な解釈で演奏していく半音階的幻想曲も、グールド本人曰く好きなタイプの曲ではないとのことですが、惹きつけられる魅力を持っています。続くフーガの録音が残されなかったことが残念でなりません。
—-収録曲—-
- バッハ: マルチェルロの主題による協奏曲 BWV 974
- バッハ: アルビノーニの主題によるフーガ BWV 951
- バッハ: アルビノーニの主題によるフーガ BWV 950
- スカルラッティ: ソナタ ニ長調 K.430
- スカルラッティ: ソナタ ニ短調 K.9
- スカルラッティ: ソナタ ニ長調 K.13
- C.P.E.バッハ: ヴュルテンブルク・ソナタ第1番イ短調
- バッハ: イタリア風のアリアと変奏 BWV 989
- バッハ: イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971
- バッハ: 半音階的幻想曲 ニ短調 BWV 903/1
- バッハ: 幻想曲 ト短調 BWV 917
- バッハ: 幻想曲 BWV 919
- バッハ: 幻想曲とフーガハ短調 BWV 906
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