カンツォーナ ニ短調 BWV 588
Canzona d-moll, BWV 588
ストラーダルが手稿譜として残した編曲の中に、この曲が含まれていました。
原曲はバッハの初期のオルガン曲(とされている)で、厳かな雰囲気を持つ対位法的な楽曲です。実は今まで、初期の作品だと勝手に侮っていたのかもしれませんが、この原曲はチェックしておらず知りませんでした。こんな良い曲があったとは。今回ストラーダル編曲の手稿譜を浄書することで、強くこの曲の魅力に惹かれました。まだまだこういう発見がきっとたくさんあると思うだけで、ますますバッハの音楽の研究熱があがるというものです。
曲は大きく2つの部分からなり、どちらも4声のフーガになっています。以下の譜例はそれぞれのテーマですが、テーマに関連があるのは明らかです。第1部は緩やかに展開されるのに対して、第2部は動きが感じられます。
第1部
第2部
ニ短調という調性もあり、曲の雰囲気は最晩年の作品、「フーガの技法」に通ずるものがあると思います。そして対旋律としての半音階との調和が見事です。
さて、これをピアノで弾くとどうなるか。旋律・対旋律ともにピアノの音色で聴くとよりくっきりと聞こえ曲の輪郭が見えてくるので、これがまたとても魅力的です。ストラーダル編の手稿譜を浄書した副産物としてMIDIファイルができましたので、譜例と共に掲載します。機械の演奏ですが音として聞くことでイメージが伝わるかと思います。
■第1部
■第2部
ストラダルが残した手稿譜
ストラダルは、以前取り上げた通り膨大な数のピアノ編曲を残しています。彼の作品リストは文献として残っていますが、その中で出版されずに手稿譜として残されている作品も多くあり、バッハの編曲は20種類を超えます。これらが手稿譜のまま忘れ去られてしまう(現に作成から100年近く経っています)のは大変残念なことです。そこで私は、これらを浄書して後世に残していきたい(大袈裟ですが)と考え、現時点で既に4曲浄書しました。追って紹介していきたいと思います。
さてストラダルの残したピアノ編曲は、とにかく2本の手で可能な限りたくさんの音を拾おうとしており、重厚な音楽となっています。2オクターブ以上にわたる常識はずれな和音や跳躍が平気で出てくるため、楽譜通りにインテンポで演奏するのは不可能なのではないかと思わされます。他の音楽家の編曲作品と比べても、ストラダルの編曲結果は決して傑作と呼べるものではないと思いますが、ストラダルの魅力は、他の音楽家がピアノソロに編曲しようとは思いもしない曲の編曲をたくさん残してくれたことで、強引ですが少なくとも2段譜に収まったピアノ譜として音楽を眺めることができるのです。また、原曲の声部ごとの動きがわかるような記譜になっており、原曲をイメージしやすい編曲とも言えます。
そんなストラダル編の手稿譜を浄書することは、ストラダルの編曲結果をなぞるというよりも、バッハの原曲、その作曲技法を堪能できる(勉強できる)と思います。おかげで私にとって、ストラダル編の浄書はピアノを弾くのと同じくらい楽しい作業になりました。副次的な効果として、楽譜製作ソフト・Finaleの使い方もだいぶわかってきて、入力スキル・スピードも向上しました。
バッハが先輩音楽家の楽譜を写譜することで作曲を学んでいったように、この浄書が私の編曲スキル向上に役立つともっといいなと思いつつ、気長に浄書は続けていこうと思います。
- 【ストラダルが手稿譜として残したバッハ編曲作品リスト】
- カンタータ 第12番 「泣き、嘆き、憂い、おののき」 BWV 12
- カンタータ 第78番 「イエスよ、汝はわが魂を」 BWV 78
- マタイ受難曲 BWV 244 より 合唱「われらは涙してひざまずき」
- ヨハネ受難曲 BWV 245 より 合唱「安らかにお眠りください、聖なる亡骸よ」
- 7つのオルガン曲
1. カンツォーナ ニ短調 BWV 588
2. 前奏曲 イ短調 BWV 569
3. フーガ ト短調「小フーガ」 BWV 578
4. フーガ ロ短調「コレッリの主題による」 BWV 579
5. フーガ ハ短調 BWV 575
6. トリオ ニ短調 BWV 583
7. 幻想曲 ハ短調 BWV 562 - パストラーレ ヘ長調 BWV 590
- コラールパルティータ 「キリストよ、汝真昼の光」 BWV 766
- コラールパルティータ 「おお神よ、汝義なる神よ」 BWV 767
- コラールパルティータ 「喜び迎えん、慈しみ深きイエスよ」 BWV 768
- トッカータ 嬰ヘ短調 BWV 910
- トッカータ ハ短調 BWV 911
- トッカータ ホ短調 BWV 914
- 前奏曲 変ホ長調(第1版) ~ 無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV 1010 より
- 前奏曲 変ホ長調(第2版) ~ 無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV 1010 より
- 管弦楽組曲 第1番 ハ長調 BWV 1066
- 管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV 1067
- 管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV 1068
- モテット「われは憂い多く」による序奏とフーガ(リストによるオルガン編曲による)
(カンタータ 第21番より)
カンタータ第182番より第1曲「ソナタ」
カンタータ 第182番 「天の王よ、汝を迎えまつらん」 BWV 182 より 第1曲「ソナタ」
‘Sonata’ from Cantata No.182 “Himmelskönig, sei willkommen” BWV 182
私が完成させた4曲目の編曲作品です。2007年の秋ごろに思い立って作り始め、少し時間に余裕ができた今年の3月に完成させました。前作のカンタータ第106番のソナティナに続き、この原曲もリコーダーが活躍するほのぼのとした曲で、器楽のみの編成の楽曲です。このゆったりとした付点リズムには、イエスがロバに乗ってエルサレムに入城する歩みという情景描写があるようです。
さて、下の楽譜は私の編曲の冒頭部分です。バスのピッチカートは、ほとんどが10度のアルペッジョとして編曲しました。そこそこ手を大きく広げられる人でないと演奏難易度が増すかもしれません。また付点リズムの歩みは主に右手で演奏しますが、その中に聞こえてくる和声を少し付け足しています。ヴァイオリンとリコーダーの二つの旋律が絡み合う部分は、中音部を左右の手で分担します。アルペッジョの最高音が中音部のメロディーの一部を形成するので、メロディーラインを意識しやすいと思います。
(Bach=Tanaka/ Sonata from Cantata No.182 BWV 182)
以下は曲の後半~結尾部です。今回もピアノの高音部を使いました。私はリコーダーの高い音を聞くとピアノの高音部オクターブを連想するのです。結尾部は音こそ多いものの、フォルテにはせずに静かに、豊かな響きをイメージしました。
—-2016年6月30日追記—-
楽譜をSheet Music Plusで運営しているArrangeMeで、PDFで販売してもらうことになりました。(上記楽譜に若干の手直しを加えています)
‘Sonata’ from Cantata No.182 “Himmelskönig, sei willkommen” BWV 182
カンタータ 第106番 より 第1曲「ソナティナ」
カンタータ 第106番 「神の時こそいと良き時」 BWV 106 より 第1曲「ソナティナ」
‘Sonatina’ from Cantata No.106 “Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit” BWV 106
私がピアノソロに編曲した3作目です。この編曲も去年何度か人前で演奏させてもらいました。
このカンタータはバッハの最初期のカンタータの一つで、原曲はヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音の歩みの上で、2本のリコーダーが同じ音形を一致させたりずらしたりしながら静かに奏でられます。メロディーが美しいというよりもリコーダー二重奏の響きが朴訥とした雰囲気を作り出しており、心が洗われる名曲です。
編曲にあたって、ピアノ特有の響きと広い音域を活かしながら、リコーダーデュオの対話がピアノで単調になってしまわないように気をつけました。そして通奏低音部も響きを豊かにする工夫として、2拍目または4拍目をオクターブ下にしました。下の楽譜は冒頭部分です。
そして曲が進むにつれ、少しずつ使う音域を広げていきました。リコーダーの二重奏は、音だけを拾うと全く同じ動きになってしまいますが、奏者ごとにずらして吹いているところの自然の変化を表現するために、オクターブ上や下の音を織り交ぜて変化をつけてみました。
バッハのカンタータは本当に音楽の宝庫だと思います。このカンタータは、実は伯父の葬儀のためにかかれた曲とされており、第1曲は幸せな浄土への旅立ちを描いているようです。このことに限らず、バッハのカンタータには宗教的な理解が必要とされていますが、残念なことに私にはまだその点の教養・感覚を持っておりません。将来的にキリスト教を知ってからバッハのカンタータに立ち戻る機会があれば、きっとまた違った魅力を感じられるのかもしれません。今のところは、絶対音楽として主観的に良いと思った曲を気軽に楽しみたいと思っています。
音楽のささげもの トリオソナタ より 第1楽章「ラルゴ」
音楽のささげもの BWV 1079 トリオソナタ より 第1楽章「ラルゴ」
1st. movement ‘Largo’ – Trio Sonata from Musical Offering BWV 1079
私が二つ目に完成させた(曲の最後まで編曲を行えた)曲です。正しくは、4楽章全てを編曲しようとして、まず第1楽章を編曲し終えたけれども、続く第2楽章が難しすぎて頓挫しているというところです。王の主題が現れる第2楽章からがこのトリオソナタの美味しい所なのですが・・・
原曲はフルート、ヴァイオリン、通奏低音。この編曲ではヴァイオリンを1オクターブ低く演奏することでメロディーの衝突を回避しています。下の楽譜がその冒頭部分です。ヴァイオリンパートは右手と左手で分担します。
下の楽譜は、曲中の頂点の部分です。低音・高音ともにオクターブ和音として増強して、響きを豊かにしてみました。
この曲もまだまだ改善の余地がたくさんあると思いつつ、人生長いのでまた経験を積んでから戻ることにしたいと思います。そしていつかは残りの2~4楽章も通して弾けるようにしたいものです。
—-2016年5月31日追記—-
楽譜をSheet Music Plusで運営しているArrangeMeで、PDFで販売してもらうことになりました。(上記楽譜に若干の手直しを加えています)
Largo from Trio sonata in c minor ~ Musical Offering BWV 1079
ドッペルコンチェルト より 第2楽章「ラルゴ・マ・ノン・タント」
2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV 1043より 第2楽章「ラルゴ・マ・ノン・タント」
‘Largo ma non tanto’ from Concerto for two violins in D Minor BWV 1043
私が初めて自分でピアノ編曲・楽譜化を試みた曲です。昔から2台のヴァイオリンが美しく絡み合うこの第2楽章は大好きでした。2006年の秋に編曲に取り組みはじめ、初冬に完成させました。2007年の各種演奏会では何度か弾かせてもらいました。
さて、どのように編曲したかを簡単に書きとめておこうと思います。当時は楽譜作成ソフトのFinaleもまだうまく使いこなせなかったので、まずはルーズリーフの五線譜に手書きで譜面を作り、それをFinaleに打ち込んでいきました。(今では考えられませんが、一音一音マウスで選択しながら楽譜を書いていました)
原曲は2台ヴァイオリンによる2声の旋律と通奏低音が基本となっています。編曲の基本方針としては、一番高い声部を右手で、通奏低音を左手でそれぞれ演奏し、あとはもう一つの旋律を右手・左手を使い分ける、といった簡単なものです。ただし、どうしても2つのヴァイオリンは同じ音域を演奏するのでメロディを弾き分ける(聴き分ける)のが難しいだけでなく音楽としても面白みに欠けます。そこで、旋律をオクターブ上や下に移動することで、接近した同じ音域での旋律の衝突を少なくし、曲想に変化を与えました。たとえば下の楽譜は冒頭部分ですが、3小節目までが本来の音域ですが、4小節目から1つ目のメロディー(2nd Vn.)をオクターブ下に移し、1st Vn.のメロディーはオクターブ和音に変えています。これはクレッシェンド効果も狙っています。
(Bach=Tanaka/ Largo ma non tanto from Concerto for two violins BWV 1043)
また、ピアノは高音域で輝かしい音色が出せるため、しつこくならないと思う範囲で高音部のオクターブ和音を盛り込みました。たとえば下の楽譜の1・2小節目では2つのヴァイオリンのメロディーを分けるために高音部のオクターブ和音を用い、また3・4小節目では曲の頂点に向かって高音部を多用しています。(私の録音ではここで大きなミスをしてるのです・・・)
そして下の楽譜は、私が最も気に入っている結尾部です。ずっしりした低音の支えの上に高音部の16分音符が流れる中、左手のアルペッジョの頂点で中音部が浮かび上がるようにしました。
素人の習作ながら、自分なりに何度も練り直して作ったので、とても愛着を感じています。数年後にもう少し編曲スキルが向上した後に見直して、より良いピアノ編曲作品として残せればいいなと思っています。
My Arrangement
探せば探すほど、また新たに見つかる度に、バッハのピアノ編曲はまだまだ世の中に数多く眠っていると思わされるのですが、バッハのカンタータや室内楽曲を聴いていて、自分でピアノで弾いてみたいなと思う曲ごとに必ずしもピアノ編曲があるわけではありません。過去の一流音楽家が良い編曲を残してくれていればよいのですが、無いものは自分で作るしかないということで、2006年くらいから編曲にチャレンジしはじめました。
そんな私、音楽を専門的に学んだことがあるわけではない(※2010年以降、作曲の先生に師事し和声法、対位法を基礎から勉強しはじめました)ので、すべて「見よう見まね」でやりはじめました。バッハのピアノ編曲作品の楽譜は多種多量に観察してきたという自負が唯一の支えです。といってもブゾーニやラフマニノフ等の優れた編曲手法などは、見よう見まねでできるものではないでしょうが、「こういう変化をつけると聞き手への効果が高いだろう」という私の主観から抽出したエッセンスを少しずつ盛り込みながら、あとは何十年という経験を積めばだんだん自分のものになっていくのではないか、という長期的かつ楽観的思考で細々と続けています。今まで編曲してきた曲について、今後何回かに分けてそのエピソードと自分なりのこだわりを紹介していきたいと思います。
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<編曲作品リスト(2015/3 時点)>
- 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV 1043 より 第2楽章「ラルゴ・マ・ノン・タント」 (2006.11)
- 音楽のささげもの BWV 1079 トリオソナタ より 第1楽章「ラルゴ」 (2006.12)
- カンタータ 第106番 「神の時こそいと良き時」 BWV 106 より 第1曲「ソナティナ」 (2007.5)
- カンタータ 第182番 「天の王よ、汝を迎えまつらん」 BWV 182 より 第1曲「ソナタ」 (2008.3)
- コラール・ファンタジー「主なる神、我らの側にいまさずして」 BWV 1128 (2008.8)
- 左手のためのサラバンド(パルティータ 第1番 BWV 825 より) (2009.1)
- 片手のためのバッハ編曲(Bach for One Hand)
- カンタータ第196番「主はわれらをみ心にとめたまえり」より「シンフォニア」 (2015.3)
Bach Performance on Piano (Hewitt)
先日リリースされた、アンジェラ・ヒューイットのDVD「Bach Performance on Piano」の紹介です。
ヒューイットが、バッハを現代のピアノで演奏するための基礎から応用まで、演奏を交えて解説してくれています。実際にヒューイットの弾くピアノで演奏方法とその効果が聞けるので、とても説得力があります。(日本語字幕もあります)
ピアノが無かった時代のバッハの音楽を、現代ピアノの表現力をもって演奏するにはどうすべきか。まさに私が興味を持っている分野で、このページのメインテーマでもありますが、自他共に認めるバッハ一人者であるヒューイットによって見事に最適解の一例が出されています。レクチャーは約150分、密度の高い内容だと思います。
なおこのDVDは2枚組みで、1枚目に上述のレクチャー、2枚目には演奏会でのライブ映像が収録されています。曲目は、パルティータ第4番、イタリア協奏曲、半音階的幻想曲とフーガです。ピアノはファツィオリです。
(※リージョンコードの違いにご注意下さい)
リフシッツのピアノで弾く「音楽のささげもの」
先月末に発売されたばかりのCD、「Bach: Musikalisches Opfer」がなかなか面白い内容でしたので紹介します。
バッハの作品の中で謎かけの多い「音楽のささげもの BWV1079」の中から、3声・6声のリチェルカーレ、カノン、トリオソナタをコンスタンチン・リフシッツ(Konstantin Lifschitz, 1978-)のピアノ演奏で聞くことができます。3声・6声のリチェルカーレはピアノでも演奏できるのでニコラーエワをはじめいくつかの録音で聴くことができますが、種々のカノンやトリオソナタを含めてピアノで演奏しているのはこれが初めてではないでしょうか?(もし他にピアノで演奏している録音があれば教えてください)
それにしてもトリオソナタはどうやって一人で弾いているのか?と思い注意深く聴いてみると、どうやら多重録音で一人で二台ピアノ(連弾?)の演奏としているように思われます。CDのライナーノーツにも特にそういった記述は見当たらなかったので、どの曲がソロで弾いていてどの曲が多重録音なのかよくわからないのですが・・・ピアノの音色が好きな私としては、たとえ多重録音であったとしても、「音楽のささげもの」がピアノの響きで聴くことができるというこのCDの意義は非常に大きいものです。
なおこのCDには、他には前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV 552と、フレスコバルディの3つのトッカータの録音も収められています。
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-
Exquisite Rarities Of Piano Music
久しぶりの更新になってしまいました。さてこのタイトル「Exquisite Rarities Of Piano Music」というCDを手に入れ、その内容が大変興味深いものでしたので紹介します。タイトルの通り、極めて珍しいピアノ音楽ということですが、その中にバッハのピアノ編曲も収録されていました。カバレフスキー編曲のトリオソナタ 第2番 ハ短調です。CDのジャケットはこちら。
Amazon等メジャーな通販サイトでは見かけませんが、Briosoというサイトで購入できます。注文するとCEOの丁寧なメッセージ付でCDが送られてきました。
さて、カバレフスキー編曲のトリオソナタ 第2番 ハ短調、これが非常に優れたピアノ編曲です。煌びやかな高音部、色彩感豊かな中音部、効果的な低音。ブゾーニのバッハの編曲、特にオルガン曲の編曲は、オルガンの重厚な響きとその音楽の本質をピアノで効果的に再現することに成功していると思いますが、一方でカバレフスキーのこの編曲はオルガンの響きを再現するのではなく、原曲の音楽素材をもとに効果的なピアノ曲として生まれ変わっていると思います。このような感想を持つ素晴らしい編曲は、他にはフェインベルグ編曲のラルゴが挙げられます。ぜひこういう曲は広く世に出回って欲しいものです。
<収録曲>
BR143 – Exquisite Rarities Of Piano Music
Rachmaninoff, Bach, Schubert, Mozart, and more
Tobias Bigger, piano
1. Rachmaninoff/ Polka de WR
2. Scarlatti=Granados/ Sonata in a, L 469
3. Brahms=Bigger/ Waltz op. 65a No. 3
4. Bach=Warren/ Aria “If Thou Art Near”, BMV 508
5. Severac/ “Les Muletiers” from Suite “Cerdana”
6. Tchaikovsky=Wild/ “At the Ball” Op. 38, No. 3
7. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Allegro
8. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Largo
9. Bach=Kabalevsky/ Sonata for Organ, BWV 526, Allegro vivace
10. Faure=Cartot/ Berceuse from Suite “Dolly” op. 56
11. Medtner/ Dithyrambe op. 10, No. 1
12. Schoeck=Bigger/ Lullaby
13. Purcell=Stevenson/ Hornpipe
14. Schubert=Godowsky/ “Good Night” from “Winterreise”, D 911
15. Mozart=Stradal/ Minuet from Symphony No. 40
16. Foster=Warren/ “Beautiful Dreamer”
17. Brahms=Cziffra/ Hungarian Dance No. 9
18. Handel=Wild/ Aria and Variations (“Harmonious Blacks,ith”)