バッハが残した、6つのオルガン用トリオソナタ。これら全曲を2台ピアノのための編曲で録音したCDがリリースされました。ほとんどが初録音とのことで、これらの名曲を手軽にCDで聴けるのはとても嬉しいことです。
編曲者を軽く紹介。第1番を編曲したフェルディナント・ティエリオ(Ferdinand Thieriot, 1838-1919)は、ドイツの作曲家・チェリストで、ブラームスをとりまく音楽サークルの一員だったそうです。ピアノを含むアンサンブル曲、管弦楽曲、室内楽曲、合唱等多くの曲を残しています。バッハのピアノ編曲は、この曲のみのようです。
第2番を編曲したイシドール・フィリップ(Isidor Philipp, 1863-1958)は、フランスのピアニスト、ピアノ教育者。バッハのピアノ編曲も数多く残しています。以前このページでも「バッハの主題によるオクターブ練習曲」というタイトルで記事を書きました。
第3番、第4番、第5番を編曲したヴィクトル・バビン(Victor Babin, 1908-1972)は、モスクワ生まれで、その後ベルリンに渡りシュナーベルに師事しました。バビンはこの「6つのオルガン用トリオソナタ」全てを編曲していて、Boosey & Hawkesから出版されていました。
第6番を編曲したヘルマン・ケラー(Hermann Keller, 1885-1967)は、レーガーに作曲を学び、オルガニストや教育者として活躍し、またバッハ研究者として多くの著作を残しています。オルガン曲の魅力を2台ピアノで伝えようと、いくつかのピアノ編曲を残しています。
収録曲は以下の通りです。
・バッハ=ティエリオ/トリオソナタ 第1番 変ホ長調 BWV 525
・バッハ=バビン/トリオソナタ 第3番 ニ短調 BWV 527
・バッハ=バビン/トリオソナタ 第5番 ハ長調 BWV 529
・バッハ=フィリップ/トリオソナタ 第2番 ハ短調 BWV 526
・バッハ=バビン/トリオソナタ 第4番 ホ短調 BWV 528
・バッハ=ケラー/トリオソナタ 第6番 ト長調 BWV 530
・バッハ=ハウ/カンタータ第208番より「羊たちは安らかに草を食み」
HMV Onlineではこちら。
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バッハへのオマージュを込めた作品集CD
今回は、バッハへのオマージュを込めた作品が収録されたCD、「Music of Tribute Vol. 5 – J. S. Bach」を紹介します。
このCDには、バッハへのオマージュを込めた作品群と、バッハのオリジナル曲とが交互に収録されています。作曲家は、デュティーユ、オネゲル、ゴドフスキー、プーランク、ヴィラロボス、バルトーク、クルターク、ライリー、ショスタコーヴィッチ。バッハのピアノ編曲とは若干毛色が異なり、バッハの原曲があるわけではなく、このホームページでも今まで紹介してきませんでした。
ここでのバッハへのオマージュとは、バッハの作曲様式に似せて作曲されたものと、バッハの名(B-A-C-H)をテーマにした作品とに大別できるかと思います。これらの作品は、バッハの原曲がある編曲作品に比べて、より一層作曲者の個性が強く現れます。
編曲作品に比べると私もまだあまり知らない分野ですが、今後も面白い発見があったときに取り上げていきたいと思います。
なお、米アマゾンでのこのCDのページでは視聴することができます。
収録曲は以下の通り。
・Bach: Prelude in E minor, BWV 941
・Dutilleux: Hommage a Bach from Au gre des ondes
・Bach: Fugue in C major, BWV 953
・Honegger: Prelude Arioso Fughette sur le nom de Bach
・Bach: Prelude in C major, BWV 939
・Godowsky: Prelude and Fugue (B.A.C.H.) for the left hand alone
・Bach: Little Prelude in F major, BWV 927
・Poulenc: Valse Improvisation sur le nom de BACH
・Bach: Little Prelude in C major, BWV 924
・Villa-Lobos: Bachianas Brasileiras, No. 4
・Bach: Prelude and Fugue in D major, BWV 874 from WTC Book 2
・Bach: Prelude in C minor, BWV 999
・Bartok: Hommage a J.S.B. from Mikrokosmos Vol. 3
・Kurtag: Hommage a J.S.B. from Jatekok Games Vol. 3
・Riley: G Song
・Bach: Little Prelude in D major, BWV 925
・Shostakovitch: Prelude and Fugue No. 24 in D minor
・Bach: Italian Concerto BWV 971
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バルトーク版の平均律クラヴィーア曲集
バルトーク(Béla Bartók, 1881-1945)は、多くの自作曲を残した他に、編曲や楽譜の校訂も行っていました。その中で、バッハの平均律クラヴィーア曲集全2巻の校訂版が、EMB(EDITIO MUSICA BUDAPEST)から出版されています。
このバルトーク版平均律曲集、最も特徴的なのは、バッハ・オリジナルの全2巻48曲を教育目的で難易度別に並べ替えてあることでしょう。そして、演奏記号、運指、解釈等が細かく書き込まれた、実用版曲集になっています。また、一部の複雑なフーガは総譜で書かれており、その構造がわかりやすくなっています。曲目順番のオリジナルとの対応は以下の通りです。
<バルトーク校訂版 第1巻>
バルトーク校訂版 | オリジナル | 備 考 |
---|---|---|
No. 1 | 第2巻 第15番 ト長調 BWV 884 | |
No. 2 | 第1巻 第6番 ニ短調 BWV 851 | |
No. 3 | 第1巻 第21番 変ロ長調 BWV 866 | |
No. 4 | 第1巻 第10番 ホ短調 BWV 855 | |
No. 5 | 第2巻 第20番 イ短調 BWV 889 | |
No. 6 | 第1巻 第11番 ヘ長調 BWV 856 | |
No. 7 | 第1巻 第2番 ハ短調 BWV 847 | |
No. 8 | 第1巻 第9番 ホ長調 BWV 854 | |
No. 9 | 第1巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV 858 | |
No. 10 | 第2巻 第21番 変ロ長調 BWV 890 | |
No. 11 | 第2巻 第6番 ニ短調 BWV 875 | |
No. 12 | 第2巻 第19番 イ長調 BWV 888 | |
No. 13 | 第2巻 第11番 ヘ長調 BWV 880 | |
No. 14 | 第1巻 第19番 イ長調 BWV 864 | |
No. 15 | 第1巻 第14番 嬰ヘ短調 BWV 859 | |
No. 16 | 第1巻 第18番 嬰ト短調 BWV 863 | |
No. 17 | 第2巻 第2番 ハ短調 BWV 871 | |
No. 18 | 第1巻 第5番 ニ長調 BWV 850 | |
No. 19 | 第1巻 第7番 変ホ長調 BWV 852 | |
No. 20 | 第2巻 第14番 嬰ヘ短調 BWV 883 | |
No. 21 | 第2巻 第7番 変ホ長調 BWV 876 | |
No. 22 | 第1巻 第1番 ハ長調 BWV 846 | |
No. 23 | 第1巻 第17番 変イ長調 BWV 862 | |
No. 24 | 第2巻 第13番 嬰ヘ長調 BWV 882 |
<バルトーク校訂版 第2巻>
バルトーク校訂版 | オリジナル | 備 考 |
---|---|---|
No. 25 | 第1巻 第15番 ト長調 BWV 860 | |
No. 26 | 第2巻 第12番 ヘ短調 BWV 881 | |
No. 27 | 第2巻 第1番 ハ長調 BWV 870 | |
No. 28 | 第2巻 第24番 ロ短調 BWV 893 | |
No. 29 | 第2巻 第10番 ホ短調 BWV 879 | |
No. 30 | 第1巻 第16番 ト短調 BWV 861 | フーガが総譜 |
No. 31 | 第2巻 第5番 ニ長調 BWV 874 | フーガが総譜 |
No. 32 | 第2巻 第18番 嬰ト短調 BWV 887 | |
No. 33 | 第1巻 第24番 ロ短調 BWV 869 | |
No. 34 | 第2巻 第9番 ホ長調 BWV 878 | |
No. 35 | 第2巻 第4番 嬰ハ短調 BWV 873 | |
No. 36 | 第1巻 第23番 ロ長調 BWV 868 | |
No. 37 | 第2巻 第3番 嬰ハ長調 BWV 872 | |
No. 38 | 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV 857 | |
No. 39 | 第1巻 第3番 嬰ハ長調 BWV 848 | |
No. 40 | 第2巻 第8番 嬰ニ短調 BWV 877 | |
No. 41 | 第1巻 第22番 変ロ短調 BWV 867 | フーガが総譜 |
No. 42 | 第2巻 第17番 変イ長調 BWV 886 | |
No. 43 | 第1巻 第4番 嬰ハ短調 BWV 849 | フーガが総譜 |
No. 44 | 第1巻 第8番 変ホ短調 BWV 853 | フーガもes(オリジナルはdis) |
No. 45 | 第1巻 第20番 イ短調 BWV 865 | |
No. 46 | 第2巻 第22番 変ロ短調 BWV 891 | |
No. 47 | 第2巻 第16番 ト短調 BWV 885 | |
No. 48 | 第2巻 第23番 ロ長調 BWV 892 |
楽譜はこちらで購入できます。(Sheet Music Plus)
look inside | Well Tempered Clavier – Volume 1 BWV 846-869 Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). EMB. Classical. Editio Musica Budapest #Z4475. Published by Editio Musica Budapest (HL.50511459). |
look inside | Well Tempered Clavier – Volume 2 BWV 870-893 Composed by Johann Sebastian Bach (1685-1750). EMB. Editio Musica Budapest #Z4476. Published by Editio Musica Budapest (HL.50511460). |
さて、先日購入したA Cathedral for BachというCDに、このバルトーク版平均律を元にした録音が含まれていました(抜粋で4曲ほどですが)ので、紹介したいと思います。
収録曲目は以下の通り。
・ブゾーニ/バッハの主題による幻想曲
・バッハ/平均律第2巻 第21番 変ロ長調 BWV 890 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「アダムの罪によりてすべて損なわれぬ」 BWV 637
・バッハ/平均律第2巻 第20番 イ短調 BWV 889 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「今ぞ喜べ、愛するキリスト者の仲間たち」 BWV 734
・バッハ/平均律第1巻 第2番 ハ短調 BWV 847 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「汝のうちに喜びあり」 BWV 615
・バッハ/平均律第1巻 第24番 ロ短調 BWV 869 (バルトーク版に基づく)
・バッハ=ブゾーニ/「アダムの罪によりすべては失われぬ」 BWV 705
・ブゾーニ/対位法的幻想曲
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カンタータ第106番 第1曲のピアノ編曲
カンタータ 第106番 「神の時こそいと良き時」 BWV 106 より 前奏曲(第1曲「ソナティナ」)
Prelude(‘Sonatina’) from Cantata No.106 “Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit” BWV 106
この曲、以前私が弾きたいと思ったときに、ピアノ編曲が見つからなかったため、自分でピアノ編曲を試みた曲ですが、ピアノ関係の先輩から以下の編曲とその演奏録音(YouTube)を教えてもらいましたので、紹介したいと思います。
編曲者はフリスキン(James Friskin, 1886-1967)、スコットランド生まれでアメリカで活躍した作曲家兼ピアニストです。
この編曲は、1957年にFischer社から出版され、マイラ・ヘスに献呈されました。
Bach=Friskin/ Prelude from the Cantata “Gottes Zeit ist die allerbeste Zeit”
Seymour Bernstein(pf)
情報提供ありがとうございました。
hyperionバッハ編曲集 第9弾
hyperionのバッハピアノ編曲集、今年春にリリースされた第8弾に続き、今回は半年で第9弾が出るようです。今回はOxford University Pressから出版された「A Bach Book for Harriet Cohen」に収録されたバッハ編曲集と、その他のイギリスの音楽家によるピアノ編曲が収録されています。ピアノストはJonathan Plowright、第6弾のルンメルによる編曲集を録音したピアニストです。
hyperionのページのリンクはこちらで、試聴することもできます。
Piano Transcriptions, Vol. 9 – British Bach Transcriptions
A Bach Book for Harriet Cohen and other British transcriptions
Jonathan Plowright (piano)
HMVはこちら
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Nebel: Bach Transcriptions For Piano
先月、興味深いCD「Bach Transcriptions For Piano: Nebel」がリリースされました。バッハのピアノ編曲を集めたCDですが、他では聞くことのできない、知られざる編曲がたくさん収録されています。ヘス編曲の主よ、人の望みの喜びよやシロティ編曲の前奏曲 ロ短調以外は馴染みの薄い曲ばかりでしょう。
中でも出色なのはフランツ編曲の、組曲 ハ短調 BWV 997 の全曲。前奏曲、フーガ、サラバンド、ジーグ、ドゥーブルの5曲で構成されています。この組曲はもともとはリュートのための楽曲と分類されており、ピアノソロでの録音は見かけません。そのままピアノで弾くと、どうしても音域が偏っていて美しいピアノ曲に仕上げづらいかと思います。この編曲では、適度に音を増やして音楽を充実させることに成功しており、クラヴィーアのためのパルティータに匹敵する組曲になりうると思います。以下は冒頭の譜例です。オリジナルとっか他編曲の比較は曲目データベースをご参照下さい。
また、ツァーベル編曲の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001もまた、全曲を通してなかなか良い編曲です。ツァーベルについては今まで知りませんでしたが、現役の音楽家のようで、他にも色々な編曲作品を作っているようです(ツァーベルのホームページをご参照ください)。
このCDでしか聴けない編曲が多数あるということで、バッハ好きにはぜひ聴いていただきたい一枚です。
なお、NAXOSのNMLではこちらで試聴することができます。
<収録曲>
ストラダル/オルガン小曲集より「主イエス・キリスト、われらを顧みたまえ」 BWV 632
ウォーレン/「御身が共にいるならば」 BWV 508
ツァーベル/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV 1001
シロティ/前奏曲 ロ短調 BWV 855a
クーパー/カンタータ 第4番 BWV 4 より 「イエス・キリスト、神の御子」
ルンメル/「急げ、渦巻く風ども」 BWV 201
タウジッヒ/「われらみな唯一なる神を信ず」 BWV 680
ムリル/カンタータ 第75番 BWV 75 より「神の御わざは ありがたきこと」
フランツ/組曲 ハ短調 BWV 997
ルンメル/カンタータ 第22番 BWV 22 より「汝の善行により我らを浄めたまえ」
ヘス/カンタータ 第147番 BWV 147 より「主よ、人の望みの喜びよ」
HMV:「Bach Transcriptions For Piano: Nebel」
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最古のバッハ・パラフレーズ
アントニーン・レイハ(Antonín Rejcha, 1770-1836, ドイツ名:アントン・ライヒャ)はチェコ出身の作曲家で、ベートーヴェンと同年生まれで、のちにパリ音楽院でリスト、ベルリオーズ、フランクなどに作曲を教えました。詳細はWikipediaの解説をご参照下さい。
さてこの音楽家、現在では主に管楽曲が有名ですが、ピアノ曲も協奏曲をはじめソナタ、変奏曲、幻想曲などいくつか残しています。その中で、「ピアノのための36のフーガ Op.36」という曲集があり、他の作曲家のテーマやオリジナルの主題を使った個性豊かなフーガが展開されています。
その第5曲が「バッハのテーマによるフーガ」で、平均律第2巻・ト長調 BWV 884 のフーガを元にしています。以下が冒頭部分。3小節目からテーマが変容していることがわかります。
これが、こんな風にも展開されます。とても愛らしい軽妙な音楽なのです。
Amazon.deで試聴できるようなので、聴いてみてください。
この曲集の初版は1805年とのことですから、現在私が知る限り、バッハの音楽を元にしたパラフレーズとしては最も古いものと言えます。(もし他にあればぜひ教えて下さい!)
楽譜はベーレンライターから再版され、IMSLPのReichaのページでも見ることができますが、残念なことに、ちょうど「バッハのテーマによるフーガ」の途中部分のページが欠落してしまっています。演奏してみたい方は、私までご連絡下さい。
また、この曲集のピアノ演奏が収録されたCDは過去にいくつか発売されました。現状廃盤のようで、Amazon等ではなかなか入手が難しい(高価)ですが、以下リンクを貼っておきます。
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バッハ弾き~ヴラジーミル・フェルツマン
バッハを弾くピアニストとして以前リストアップしましたが、その中で私が個性的で良い演奏だと思っている、ヴラジーミル・フェルツマン(Vladimir Feltsman)について、最近録音が入手しやすくなったので紹介したいと思います。
私がフェルツマンのバッハ録音に初めて触れたのは5~6年前、国内盤のパルティータ全集でしたが、 これがまた素晴らしい演奏で、「この人の弾くバッハを聴きたい」という気にさせられた、私にとって久しぶりのヒットでした。同CDに収録されている2声のインヴェンションもアーティキュレーションが独特でとても楽しく、15曲一気に聴いてしまいたくなる演奏でした。
そんな中、とあるネット通販の店主からフェルツマンの弾くゴルトベルク変奏曲のCDが素晴らしいとの情報をもらいました。 そこで中古市場を探してフェルツマンの弾くバッハの録音(当時はMaster Musicから出ていましたが、廃盤とのことでした)を集中的に 買い集めました。手に入れたのは平均律第1巻・第2巻、フーガの技法、ゴルトベルク変奏曲、協奏曲集(これらのリンクは近年の再販盤です)。 この人の弾くバッハは、何というか、聴いていてワクワクさせられるような独特の解釈でありながら、それは決して奇異なものでなく、 吸い込まれていくような魅力に溢れています。特にゴルトベルク変奏曲や平均律、こんな曲だったっけと随所で思わされます。 聴いてみるとすぐに気づくと思いますが、リピートでの即興の展開がバリエーションに富んでいるのです。 よくメヌエットなどでリピートでは1オクターブ高く弾いたりする演奏家もいますが、フェルツマンは カノンやフーガのある声部がオクターブ高かったり低かったり、巧妙に組み合わせピアノの特性を上手く音楽表現に用いています。 「バッハの音楽をピアノで」という当サイトの考え方からしても、このフェルツマンの演奏は理想的な演奏のひとつだと私は思いました。
その後、国内盤としてイギリス組曲集がリリースされ、さらには近年、廃盤だったMaster Musicからの録音がNimbusから廉価版として再リリースされました。これによって、彼のユニークなバッハ演奏が少しでも多くの音楽愛好家に聴かれることを願ってます。そして、まだ出ていない、フランス組曲や3声のシンフォニア、その他の自由曲なども、ぜひ録音して欲しいものです。
(注:その後、2016〜2017年にフランス組曲や3声のシンフォニア・小前奏曲等もリリースされました)
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-
パルティータ集 | イギリス組曲集 | 平均律集 |
ゴルトベルク変奏曲 | フーガの技法 | 協奏曲集 |
フランス組曲 | インヴェンションとシンフォニア・小前奏曲 |
フーガの技法(連弾版)
先日演奏会で、音楽仲間が弾いたフーガの技法(連弾版)がとても良い編曲だと思ったので(今まで知りませんでした)、早速購入してみました。改めて譜面を見て、やはり良い編曲なので、ぜひともここで紹介したいと思います。
編曲者はヤーノシュ・ツェグレディ(Janos Cegledy, 1937-)、全音ピアノライブラリーの「ピアノ連弾名曲選集(1)」に含まれています。収録曲はフーガの技法の中から、コントランプンクトゥスの第1番と第4番。ツェグレディの編曲では、低音・高音それぞれを効果的に使って音楽を立体的に表現し、対位法的な音の扱いを聞き手にわかり易い形で表現しています。
なおツェグレディについて調べてみると、ピアニスト兼作曲家で、日本レシェティツキ協会を発足させた人のようです。
何にせよ、良い編曲を教えてくれた音楽仲間にも感謝です。
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ストラダル編曲のブランデンブルク協奏曲集
この冬、私は初めて楽譜校正・解説執筆という、楽譜出版のお手伝いをさせていただきました。その楽譜がようやく発売されましたので紹介したいと思います。J.S.バッハ/ストラダル ブランデンブルク協奏曲(ピアノソロ版)です。ブランデンブルク協奏曲の編曲ということで、「アレンジによる抜粋・ハイライト版、または簡易版か?」というお問い合わせを何件かいただきましたが、全6曲省略等は一切無い完全版です。
ところでストラダル (以前は「ストラーダル」とも表記していましたが、「ストラダル」に統一しました)については、このページ内でも何度も紹介してきました。曲目データベースを見てわかる通り、たくさんのバッハのピアノ編曲を残しています。過去の文献(ストラダルの妻による伝記)には出版社・曲名・プレート番号のみが曲目リストに掲載されており、見ただけでは同じ調の楽曲の区別がつきませんでした。そこで、今回出版した楽譜の解説ページには、ストラダルが出版した楽譜(未出版の手稿譜含む)の一覧をBWV番号と紐付けて掲載しました。
そしてリプリントといっても、全てデジタル浄書し直したもので、読譜しやすくなっています。Schuberth社から出版されていたオリジナルの楽譜上いくつもの誤植と思われる箇所についても、原曲と比較して修正を加えました。
何にせよ、ブランデンブルク協奏曲は私がバッハの曲の中で最も好きな曲集なので、その出版に携わることができて幸せです。
最後になりましたが、校正や独語文献和訳のお手伝いをして下さったHさん、Yさん、Mさん、ありがとうございました。