Alexander Ioheles plays Bach

Transcribed For Piano: Antony Gray今回もバッハのピアノ編曲が収録されたCDの紹介です。Alexander Ioheles/Alexander Ioheles Vol.1 – J.S.Bach: Lute Partita BWV.997, Partitas for Solo Violin No.2, No.3, etc [VVCD00246]
アレクサンドル・イオヘレス(Alexander Ioheles, 1912-1978) は、ロシアのピアニストであり教育者。ヨヘレス(Jocheles)と表記されることもあるようです。
私は今回初めて知りましたが、レパートリーの中心にバッハの音楽があり、しかもバッハの王道プログラムではなく、若干知名度の低い名曲を中心に取り上げていたとのことで、バッハ好きの私から見て大歓迎な音楽家でした。ピアニストとしてはイグムノフの弟子であり、その後モスクワ音楽院、グネーシン音楽学校で後進の指導に当たっていました。
Vista Vera のライナーノーツによると、このCDに収録された録音も今回初出(録音年代は1960年~1975年)とのこと。他で聞けないペトリ編のリュート・パルティータや、イオヘレス本人の編曲など、興味深いプログラムです。全体的にゆったりと味わい深く、ペダルを多用した演奏です。
なお、CDにも一部の曲目には編曲者名が無く、タワーレコードなど日本のサイトでも「編曲者不詳」と表示されていますが、おそらくサン=サーンス編曲で間違いないと思われます。
また、ネメロフスキー(Aleksandr Nemerovsky, 1859-1915)はロシアの作曲家で、トッカータとフーガヴィヴァルディ=バッハの協奏曲などの編曲を知っていましたが、シチリアーノの編曲があるとは知りませんでした。なお、日本の通販サイトは一律「メネロフスキー」と表記されていますが、おそらく間違いでしょう。

2013/8/15追記:ネメロフスキー編のシチリアーノイオヘレス編の各種編曲、それぞれ楽譜を入手しました。

<収録曲目>
ペトリ編曲:リュートのためのパルティータ ハ短調 BWV997
ゴドフスキー編曲:「サラバンドとドゥーブル」~無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ロ短調 BWV1002 より
サンサーンス編曲:「序奏とコラール」~カンタータ第3番 BWV3 より
サンサーンス編曲:「レチタティーヴォ、アリアとコラール」カンタータ第30番 BWV30 より
サンサーンス編曲:「アリア」~カンタータ第36番 BWV36 より
サンサーンス編曲:「ガヴォット」~無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006 より
サンサーンス編曲:「ラルゴ」~無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 BWV1005 より
イオヘレス編曲:コラール前奏曲「おお、人よ、自分の罪の大きさを嘆け」 BWV622
ペトリ編曲:「羊たちは安らかに草を食み」~カンタータ第208番 BWV208 より
イオヘレス編曲:「レチタティーヴォ」~カンタータ第51番 BWV51 より
イオヘレス編曲:「アリア」~マニフィカト BWV243 より
ネメロフスキー編曲:「シチリアーノ」~フルートとチェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031 より
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Transcribed For Piano: Antony Gray

Transcribed For Piano: Antony Gray
今回もCDの紹介です。少し前になりますが、今年の春、バッハのピアノ編曲をたくさん集めた興味深いCDが発売されました。「Transcribed For Piano: Antony Gray」で、CD3枚組です。1枚目は「A Bach Book for Harriet Cohen」やコーエンの編曲を中心に、2枚目はサン=サーンス、ケンプ、ブゾーニ、タウジッヒ等の比較的メジャーなバッハのピアノ編曲、3枚目はピアノ編曲の他にバッハをモチーフに作曲された近代の作品が収録されています。私は相当のバッハの編曲を知っているつもりでしたが、特に3枚目には初めて見るような編曲が多数ありました。また楽譜も半数は見たことがありません。曲目データベース上も整理しきれていないのですが、まずは編曲者・曲目とともに紹介します。
【CD1】
RALPH VAUGHAN WILLIAMS (1872-1958)
Chorale Prelude ‘Ach, bleib bei uns, Herr Jesu Christ’ BWV649
CONSTANT LAMBERT (1905-1951)
Chorale Prelude ‘Der Tag, der ist so freudenreich’ BWV605
EUGENE GOOSSENS (1893-1962)
Brandenburg Concerto No. 2 in F major, BWV1047: II. Andante
ARNOLD BAX (1883-1953)
Fantasia, BWV572
JOHN IRELAND (1879-1962)
Chorale Prelude ‘Meine Seele erhebt den Herren’ BWV648
HERBERT HOWELLS (1892-1983)
Chorale Prelude ‘O Mensch, bewein dein Sünde groß’ BWV622
LORD BERNERS (1883-1950)
In dulci jubilo, BWV729
WILLIAM GILLIES WHITTAKER (1876-1944)
Chorale Prelude ‘Wir glauben all’ in einem Gott, Vater’ BWV740
ARTHUR BLISS (1891-1975)
Chorale Prelude ‘Das alte Jahr vergangen ist’ BWV614
FRANK BRIDGE (1879-1941)
Aria ‘Komm, süsser Tod’ BWV478
WILLIAM WALTON (1902-1983)
Chorale Prelude ‘Herzlich tut mich verlangen’ BWV727
JOHANN SEBASTIAN BACH (1685-1750)
– Partita in E major, BWV1006a (Violin Partita No. 3 in E major, BWV1006): III. Gavotte en Rondeau
– Sonata in D minor, BWV964 (Violin Sonata No. 2 in A minor, BWV1003): III. Andante
OTTO SCHRÖDER
Cantata BWV106 (Actus Tragicus): Sonatina
CYRIL SCOTT (1879-1970)
Aria ‘Mein gläubiges Herze’ from Cantata BWV68
HARRIET COHEN (1895-1967)
Chorale ‘Ertödt’ uns durch dein’ Güte’ from Cantata BWV22
Chorale Prelude ‘Liebster Jesu, wir sind hier’ BWV731
Recitative and Aria ‘Wirf, mein Herze, wirf dich noch’ from Cantata BWV155
PERCY ALDRIDGE GRAINGER (1882-1961)
Blithe Bells (Cantata BWV208 ‘Was mir behagt, ist nur die muntre Jagd’)
【CD2】
CAMILLE SAINT-SAËNS (1835-1921)
Sinfonia from Cantata BWV29 ‘Wir danken dir, Gott, wir danken dir’
Adagio from Cantata BWV3 ‘Ach Gott, wie manches Herzeleid’
Sinfonia from Cantata BWV35 ‘Geist und Seele wird verwirret’
WILHELM KEMPFF (1895-1991)
Largo from Keyboard Concerto in F minor, BWV1056
Chorale Prelude ‘Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ’ BWV639
Chorale and Chorale Prelude BWV307/734
Chorale ‘Jesus bleibet meine Freude’ from Cantata BWV147
CARL TAUSIG (1841-1871)
Chorale Prelude ‘Wir glauben all’ an einen Gott, Schöpfer’ BWV680
ANONYMOUS, 19th century
– Cantata BWV182 ‘Himmelskönig, sei willkommen’: Sonata (Grave. Adagio)
– Cantata BWV42 ‘Am Abend aber desselbigen Sabbats’: Sinfonia
CHARLES-VALENTIN ALKAN (1813-1888)
Siciliano from Flute Sonata in E-flat major BWV1031
HAROLD BAUER (1873-1951)
– Cello Suite No. 6, BWV1012: V. Gavotte I & II
– Cello Suite No. 1, BWV1007: V. Minuetto I & II
FERRUCCIO BUSONI (1866-1924)
Adagio from Toccata in C major BWV564
Chorale Prelude ‘Nun komm’ der Heiden Heiland’ BWV659
MAX REGER (1873-1916)
Toccata and Fugue in D minor, BWV565
【CD3】
GIUSEPPE MARTUCCI (1856-1909)
Orchestral Suite No. 3 in D major, BWV1068: II. Air
Orchestral Suite No. 2 in B minor, BWV1067: VI. Menuet and VII. Badinerie
WILLIAM GILLIES WHITTAKER (1876-1944)
Pastorele in F Major BWV590
TIVADAR SZÁNTÓ (1876-1953)
Prelude and Fugue in G minor, BWV535
ANTONY GRAY
– ‘Letzte Stunde, brich herein’ – Aria from Cantata BWV31 ‘Der Himmel lacht, die Erde jubilieret’
JUDITH WEIR (b.1954)
– Roll off the Ragged Rocks of Sin (arranged from the aria ‘Wer bist du? Frage dein Gewissen, from Cantata BWV132 ‘Bereitet die Wege, bereitet die Bahn’)
EARL WILD (1915-2010)
Hommage à Poulenc (arranged from Keyboard Partita No. 1 in B-flat major, BWV825: IV. Sarabande)
FRANÇOIS SARHAN (b.1972)
– Prelude and Fugue in C major, BWV846
MICHAEL BLAKE (b.1951)
– BWV Fragments
– Oh Clare (arranged from ‘Jesu, Joy of Man’s Desiring’ – Chorale from Cantata BWV147 ‘Herz und Mund und Tat und Leben’, as arranged by Myra Hess)
MICHAEL FINNISSY (b.1946)
– Joh. Seb. Bach
FRANK MILLWARD
– Crucifixion Blues (arranged from Mass in B minor, BWV232: ‘Crucifixus’)
ANDREW TOOVEY (b.1962)
– Cantus Firmus
SALLY MAYS
– ‘O Haupt voll Blut und Wunden’ – Chorale from St Matthew Passion, BWV244
ANDREW SCHULTZ (b.1960)
– Sleepers Wake – Karalananga – from Journey to Horseshoe Bend
GABRIEL JACKSON (b.1962)
– Carillon: In Dulci Jubilo
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ジョン・ルイスの平均律第1巻のジャズ編曲盤

今回は、ジョン・ルイス率いるカルテットやトリオなどのアンサンブルで演奏する、平均律クラヴィーア曲集 第1巻 の全曲をジャズ編曲したCDを紹介します。
バッハのジャズ編曲としてメジャーなのは、ジャック・ルーシエの「Play Bach」シリーズなどがありますが、このジョン・ルイスの録音のユニークなところは、抜粋ではなく平均律第1巻の前奏曲とフーガを全曲編曲して演奏しているところです。前奏曲はピアノ・ソロで、フーガはアンサンブルで演奏するスタイルで、バッハのほぼ原曲どおり始まり、ジャズ風に展開され、また原曲に回帰するような編曲です。
もちろん全曲が一気に編曲されたわけではなく、5年もかけて少しずつ作られては録音されてきたようです。昨年末に韓国のレーベルから4枚組みにまとめて発売されたものを私は購入しました。上のリンクはその4枚組のものです。バラでも売っている(Vol. 4だけ見当たらず)ようで、以下Amazonのリンクを用意しておきます。
ピアノ編曲の中でもジャズ編曲というのは一つの分野になるほどたくさんありますが、残念ながら私のバッハ編曲研究の中ではまだ十分に語れるほど情報が集められていません。将来的にはここでたくさん紹介できるように、少しずつ情報を集めていこうと思います。
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(4枚組)(Vol. 1)(Vol. 2)(Vol. 3)

右手のためのシチリアーノ(フルートソナタ BWV1031より)

バッハ片手用編曲の16曲目は、フルート・ソナタ BWV 1031 の第2楽章、シチリアーノを、右手だけで演奏できるように編曲しました。この曲も非常に有名で、多くのピアノ編曲が存在します。片手用としても、ヴィットゲンシュタインによる左手用の編曲がありますが、私は敢えて右手用に編曲しました。
片手に編曲するにあたり、シチリアーノの付点リズムを崩さないように注意を払い、メロディー最優先としました。低音は親指を使ってシンコペーション気味に記譜していますが、そこは強調したい点ではなく、手の大きさから同時に演奏できない部分をずらして弾くくらいの感覚です。また、和声感を支える分散和音は主張しすぎず流れるように演奏してもらいたいために、音符を小さくしました。
J. S. Bach/ Siciliano from Flute Sonata BWV 1031, arranged for piano right hand only by Hiroyuki Tanaka.
2013/6/22に、第10回こだわり〜ミニ演奏会で演奏しました。
右手だけで演奏できるレパートリーは左手だけのものに比べて極端に少ないですが、周囲にも必要とする方が何人かいらしゃいます。少しずつ増やしていきたいと思います。

ドーヴァー版:ブゾーニ編バッハ編曲楽譜集 第2弾

Goldberg Variations and Other Bach Transcriptions for Solo Piano (Dover Music for Keyboard and Piano Four Hands)
ドーヴァーから、ブゾーニのバッハ編曲集楽譜の第二弾が出版されました。編者は、過去の記事:ブゾーニ版バッハ集のCD 第1弾のピアニスト、サラ・デイヴィス・ビュークナー(Sara Davis Buechner)。収録曲は以下の通りです。
ゴルトベルク変奏曲 BWV 988
半音階的幻想曲とフーガ BWV 903
対位法的幻想曲(BWV 1080に基づく)
ピアノ協奏曲 ニ短調 BWV 1052
この楽譜には、ブゾーニ版バッハ全集の冒頭に掲載されていたものの、今まで初版以来転載されることのなかった「献呈(Widmung)」が付録でついています。以前このページでも何度かWantedとして書いてきたもので、自分で耳コピ譜を起こしたくらいです。今回長年探していた楽譜を見ることができて、とても嬉しいです。さてこの曲、平均律第1巻の第1番のフーガの主題と、フーガの技法(の未完の3重フーガの3つ目、B-A-C-H)の主題を組み合わせた、1ページの手書き譜でした。
10年ほど前に耳コピ採譜した楽譜がこちら。
Busoni/ Widmung (realized by H. Tanaka)
今回ドーヴァー版に掲載された手書き譜がこちら。
Busoni/ Widmung (manuscript)
ゴルトベルク変奏曲ピアノ協奏曲 ニ短調については、Breitkopf版のリプリントのようです。過去に何度かCDの紹介を書いているので、その記事をご参照下さい。
過去の記事:ブゾーニ版バッハ集のCD 第1弾(2008/10/5)
過去の記事:ブゾーニ編のピアノ協奏曲 二短調 BWV 1052(2009/3/26)
半音階的幻想曲とフーガのブゾーニ編は、特に幻想曲において多くの改変が加えられています。オリジナルのアルペジオ表記部分、およびレシタティーヴォ部分は低音和音が増強され重厚な響きになっています。フーガも部分的にバスのテーマ時にオクターブを重ねるところがあります。10年以上前に私が挑戦したことがあり映像が残っているので紹介します。(今聞き直してみるとだいぶ音が間違っていたりするのですが聞き流して下さい)


対位法的幻想曲は、細かい記載は無かったのですが、1912年の最終稿です。
その他にも、 An Experiment in New Organic Music Notation として、半音階的幻想曲を独自の記譜法 Klavier Noten Schrift で掲載されています。
以上、収録内容を取り上げました。ドーヴァー版として廉価で入手しやすくなったことは歓迎されるべきことですね。

Bach Metamorphosis

Bach metamorphosis
先月、また大変興味深いCDがリリースされました。Bach Metamorphosis、変容するバッハですね。今までであまり取り上げられなかった編曲、または現代の音楽家による編曲が収録されており、私も半分くらいの編曲の楽譜が未入手です。
ピアニストは Angelika Nebel 、以前も Bach Transcriptions for Piano というレア編曲を集めたCDを出していた人です。今回はメジャーレーベルなのが素晴らしいです。とりわけ、最後に収録されたプラド編の「6声のリチェルカーレ」が秀逸。
HMVではこちらで購入可能です。
収録曲は以下のとおりです。

1. 前奏曲とフーガ イ長調BWV536(ブラウンフェルス)
2. いざ来たれ、異教徒の救い主よBWV661(イリイーン)
3. 小フーガ ト短調BWV578(ブリスキエル)
4. 「クリスマス・オラトリオ」BWV248よりパストラール(ルーカス)
5. 主のひとり子なるキリストBWV601/われらの主イエス・キリスト、ヨルダン川に来たれりBWV684(ディデンコ)
6. おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆けBWV622(タウジッヒ)
7. ああ、われらのもとにとどまれ、主イエス・キリストBWV649(ヴォーン・ウィリアムズ)
8. 「フルートソナタ」BWV1031の2よりシチリアーノ(フィリップ)
9. ただ愛する神の摂理にまかす者BWV642(ゴンチャロフ)
10. われらが神はかたき砦BWV720(マードック)
11. ああ、いかにはかなく、いかに空しきBWV644(イリイーン)
12. 「音楽の捧げもの」BWV1079より6声のリチェルカーレ(プラド)
ピアノ:アンゲリカ・ネーベル

Recordings from Feinberg’s Private Archive

J.S.Bach: Well Tempered Clavier, Clavier Works & Feinberg's Piano Transcriptions, etcサムイル・フェインベルグ(Samuil Feinberg, 1890-1962)に関しては、このホームページでも何度も取り上げてきました。今回紹介するCDは、フェインベルグの没後50年を区切りに整理されてリリースされた、プライベート録音集。中身を確認してみるとほとんどが初出という、マニア垂涎アイテムでした。
Amazonやタワーレコードのサイトで表示されているタイトルや商品説明が、「J.S.Bach: Well Tempered Clavier, Clavier Works & Feinberg’s Piano Transcriptions, etc」のようになっていて4枚組なので、既出の平均律全集と余白に編曲が収録されたコンピレーションCDかと思わせておりあまり期待していませんでした。しかし!なんと平均律の録音は既出のものとは別の、おそらく公式録音の前に、音楽院のホールにある録音設備でテスト的に収録されたもののようなのです。残念なのが、第1巻の後半(13−24番)が消失しているのですが、第2巻は全曲揃っています。公式録音もそうですが、フェインベルグの平均律は全曲を通して1曲かのように感じさせる演奏、そしてここでは明らかに公式録音と違う演奏が聴けます。
そして4枚目、いくつかのシンフォニアや、イギリス組曲のブーレ、フーガなど初めて耳にする録音が多数。フーガ イ短調 BWV 944は、録音の存在は知りつつも長らく入手がかなわなかったものなので、とても嬉しいです。このフーガには短いプレリュードがついており、バッハの楽譜上はアルペジオと書かれた和音が書かれているだけですが、ここではフェインベルグによるリアリゼーションを聴くことができます。

4枚目の収録曲は以下の通りです。
 ・3声のシンフォニアから、2, 5, 9, 12, 15番
 ・イギリス組曲 第2番 BWV 807 ブーレI, II
 ・パルティータ 第1番 BWV 825
 ・トッカータ ニ長調 BWV 912
 ・オルガンコラール前奏曲のフェインベルグ編曲
 ・フーガ イ短調 BWV 944
その他、装丁も豪華になっており、ライナーノーツも写真含めかなり充実しています。
何にせよ、このCDはフェインベルグファンにとって愛蔵盤となることは間違いありません。

Gelber and Weissenberg plays Bach Transcriptions

Gelber and Weissenberg plays Bach Transcriptions
EMIから、初CD化含むバッハ編曲集のコンピレーションCDがリリースされました。演奏者はブルーノ・ゲルバー とアレクシス・ワイセンベルク。ワイセンベルクの録音は、以前も紹介したワイセンベルグのバッハ編曲集CDと同じもの(一部曲目省略あり)のため、ここではゲルバーの演奏を中心に紹介します。
1967年パリでの録音で、今回が初CD化(トラック1−7)とのこと。当時26歳、若いころの演奏だけあって、その勢いは凄まじいものがあります。特にシャコンヌニ長調の前奏曲とフーガ、そしてカンタータ29番のシンフォニア。また、低音の鳴らし方が実に豪快、例えばサンサーンス編のシンフォニアで全音符がタイで繋げられた保続音は、連打して存在感を出していたり、演奏者なりのさらなる工夫が聞けます。
これらの激しい部分のある3曲の間には気品のあるコラール前奏曲が挿入されていて癒されます。最後にはシロティ編のオルガン前奏曲 ホ短調 BWV555でしっとりと締めくくります。演奏会のアンコールのようなプログラミングなのでしょうか。
併録のワイセンベルクの演奏も素晴らしいですし、価格も安いですし、かなりオススメできるCDだと思います。
HMVではこちらで購入できます。
収録曲は以下のとおりです。

1. 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004~シャコンヌ (ブゾーニ)
2. コラール前奏曲「我,汝を呼ぶ,主イエス・キリストよ」BWV639 (ブゾーニ)
3. コラール前奏曲「来たれ,異教徒の救い主よ」BWV659 (ブゾーニ)
4. カンタータ 第29番より シンフォニア BWV29/1 (サンサーンス)
5−6. プレリュードとフーガ ニ長調 BWV532 (ブゾーニ)
7. プレリュード ホ短調 BWV555 (シロティ)
8. カンタータ第147番BWV147~コラール「主よ,人の望みの喜びよ」 (ヘス)
9. コラール前奏曲「いまぞ喜べ,愛するキリストの信者たちよ」BWV734 (ブゾーニ)
10. フルート・ソナタ第2番BWV1031~シチリアーノ (ルストナー)
11-12. プレリュードとフーガ イ短調BWV543 (リスト)
13. プレリュード ロ短調BWV855a (シロティ)
14-15. トッカータとフーガ ニ短調BWV565 (ブゾーニ)
【演奏】
ブルーノ・ゲルバー (1-7)
アレクシス・ワイセンベルク (8-15)

無伴奏チェロ組曲 第1番 BWV1007のピアノ編曲 (2)

無伴奏チェロ組曲 第1番の前奏曲は、おそらく誰でも知っているような有名なバッハの器楽曲ではないでしょうか。
無伴奏チェロ組曲のピアノ編として、以前シロティやラフの編曲を紹介しましたが、今回は日本人作曲家による編曲、これがまた大変素晴らしいので紹介します。
一つは、昨年11月に全音ピアノ・ピースとして出版された、後藤丹氏編曲のものです。以前紹介したラフの編曲は、原曲の分散和音を伴奏にメロディーをつけるような編曲で、拒絶反応を示す人が多いだろうと想像しますが、後藤編は決して奇を衒う編曲ではなく、シンプルかつ適度にピアノらしい響きを表現できる編曲だと思います。冒頭の楽譜を見てみると、かなり低い音域で始まることがわかります。このあと徐々に高音域を使って展開されていきます。
Bach=Goto/ Prelude from Cello Suite BWV 1007
終結部は若干音も厚くなり音域が広く、ピアノの特性を生かした華麗さを兼ね備えていることが見て取れるかと思います。
Bach=Goto/ Prelude from Cello Suite BWV 1007
容易に入手できる全音ピアノ・ピースですので、ぜひ多くの人に弾いてもらいたいです。
さてもう一つは、松谷卓氏編曲のもので、「ぷりんと楽譜」で出版されています。こちらはずっと自由な編曲であり、パラフレーズと呼ぶべきかもしれません。23小節に及ぶ前奏。そして楽譜上にはコードネームが付記されていますが、すでに原曲に無い音が(小さい音符で)追加されています。主旋律の残響音の効果を狙っているものでしょうか。
Matsutani/ Prelude from Bach's Cello Suite BWV 1007
また、カデンツァについては半拍ずらしたオクターブのカノンにしていて、これもまたとても効果的。
Matsutani/ Prelude from Bach's Cello Suite BWV 1007
私の知る限り、無伴奏チェロ組曲第1番前奏曲のピアノ編曲の中では、最もピアノでよく響く編曲だと思います。素晴らしい作品です。
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左手のためのトッカータとフーガ ニ短調(BWV 565)

バッハ片手用編曲の15曲目は、超有名なオルガン曲、トッカータとフーガ ニ短調 BWV565を、左手だけで演奏できるように編曲しました。
私の今までの編曲の中で最も長く、13ページにわたる大作になりました。難易度も、少なくともテクニック面では上級レベルでしょう。
3ヶ月くらい前に着想し、ようやく最後まで通して弾けるように編曲が完了しました。技巧的で激しい曲調、長大なフーガなど、今回は今までの編曲にはない多くの挑戦がありました。
色々な方に弾いてもらうためにはもう少し弾きにくいところを改善する必要がありそうです。
J. S. Bach/ Toccata and Fugue in d minor BWV 565, arranged for piano left hand only by Hiroyuki Tanaka.
5年前に書いた記事の通り、この曲は数多くのピアノ編曲が存在し、私が保有するもので20種類を軽く超えています。
その中でも今のところ片手用の編曲は見かけません。私の編曲作品を末席に並べさせてもらえればと思います。