管弦楽組曲のピアノ編曲版CD(全曲)

kolly_overture.jpg
カール=アンドレアス・コリー(Karl-Andreas Kolly, 1965-)の新譜、「管弦楽組曲 ピアノ編曲版」を紹介します。
バッハが4曲のこした管弦楽組曲(序曲) BWV 1066~BWV 1069 を、なんとコリー本人がピアノソロに編曲して録音したものです。
コリーは今までもバッハの代表的なクラヴィーア曲はもちろんのこと、ピアノ編曲も含め多くのCDを録音してきました。
バッハのスペシャリストによる自編自演集ということで、それだけで大きく期待してしまいます。
管弦楽組曲のピアノ編曲としては、何と言っても「G線上のアリア」として有名な第3番のエアの編曲が突出して多いですが、4つの管弦楽組曲の全曲編としてはレーガーの連弾用編曲くらいでしょうか。
第1番~第3番に限定すると、ラフ編ストラダル編マルトゥッチ編などがそれぞれ全楽章編曲されています。第4番の全楽章はピアノソロ編曲としては初めてだと思います。楽譜の出版をぜひとも期待したいところです。
ちなみに、既存の編曲を見比べながらコリー編を聴いてみると、特に各曲冒頭の序曲はラフ編に編曲の骨格がそっくりなことに気づきました。ラフ編をベースにして、トリルの入れ方やバスのオクターブ増強などにより効果的に出来る部分について、少し手を加えているのではないかと推測します。
HMVでの商品リンク
Amazonでの商品リンク
<収録曲>
管弦楽組曲 第1番 ハ長調 BWV 1066
管弦楽組曲 第2番 ロ短調 BWV 1067
管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV 1068
管弦楽組曲 第4番 ニ長調 BWV 1069
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

Inspire To/From J.S.Bach


先月リリースされた黒岩悠氏のCD、「Inspire To/From J.S.Bach」を紹介します。
タイトルが示す通り、バッハが先輩の曲をもとに作曲した曲と、バッハのオリジナル、後の音楽家による編曲を組み合わせたプログラムになっています。
その収録曲が絶妙で、『トッカータとフーガ ニ短調』や『主よ、人の望みの喜びよ』などの超有名曲と、『トッカータ ハ短調』や『カンタータ第106番の前奏曲』など知る人ぞ知る名曲とを組み合わせており、幅広い音楽愛好家が楽しめる内容なのではないでしょうか。
私も例に漏れず、大いに楽しませてもらいました。何と言っても初めて聴く編曲が二つもあったのは、バッハのピアノ編曲コレクターとしても収穫でした(片方は編曲者が明らかになっていませんが)。
その一つ、スタンチッチ編曲のカンタータ 第106番の前奏曲(ソナティナ)。スタンチッチが残した『カンタータによる4つの前奏曲』(Vier Kantaten – Vorspiele, 1922)という曲集の第1曲のようです。この曲は、他の音楽家による編曲の存在を知らなかった頃に自分で編曲したことがあるため、とても愛着のある曲でした。
スタンチッチ(Svetislav Stančić, 1895-1970)はブゾーニの弟子とのこと。もう少し勉強してから、別記事を書きたいと思います。
もう一つは、匿名の音楽家による編曲とされる「バディネリ」。きらびやかな高音や細分化された音形など、軽妙かつ工夫の凝らされた編曲です。
編曲以外では、決然とした演奏であるトッカータ ハ短調 BWV 911も良演。ラインケンの音楽の園にもとづくソナタ BWV 965 は、ピアノでの録音は珍しい方ですが、なかなか陽の当たらないこのような佳曲に命を吹き込んでくれるのはとてもありがたいです。
全体としてとても素晴らしい選曲・録音なのですが、惜しむらくは、CD全体の収録時間数が若干短いこと。もう少し多くの曲を聴いてみたかったものです。
<収録曲>
トッカータとフーガ ニ短調 BWV 565(ブゾーニ編曲)
・トッカータ ハ短調 BWV 911
・ラインケン『音楽の園 第1番』によるソナタ イ短調 BWV 965
カンタータ 第106番『神の時こそいと良き時』より 前奏曲(スタンチッチ編曲)
管弦楽組曲 第2番 BWV 1067より「バディネリ」(匿名音楽家編曲)
カンタータ 第147番より『主よ、人の望みの喜びよ』(ヘス編曲)
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

フィオレンティーノ編曲のバッハ

イタリアのピアニスト、セルジオ・フィオレンティーノ(Sergio Fiorentino, 1927-1998)のバッハピアノ編曲を紹介します。私は2000年前後にまとまってAPRからリリースされたフィオレンティーノの録音の数々を聴いてすっかり虜になりました。スクリャービンやリストも素晴らしいのですが、バッハも、バッハのピアノ編曲もまた素晴らしいのです。その中で、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ト短調 BWV1001全曲の編曲と、「主よ、人の望みの喜びよ」の編曲が、楽譜集『Sergio Fiorentin: Transcrizioni da concerto per pianoforte』(出版社:Editzioni Curci)に収録されました。無伴奏ヴァイオリン・ソナタ BWV1001全曲の編曲は大変な力作で、ピアノで演奏するために多くの旋律や和音を加えながらも、オリジナルの端正な佇まいを良く伝えてくれます。下の写真は第1楽章・アダージョ、第2楽章・フーガの冒頭です。
fiorentino_transcriptions.jpg
バッハのほかにも、ブラームスの『愛の歌』の数々や、フォーレの『夢のあとに』など美しい編曲が60ページ以上にわたり収録されています。カマクラムジカディアレッツォなどで注文可能です。
これらの編曲が収録されたCD、今でも全く手に入らないほど入手困難ではないので紹介します。ヴァイオリン・ソナタの編曲はこちらのCDに、『主よ、人の望みの喜びよ』はこちらのCDに収録されています。もちろん10CDのコレクション版にも含まれています。
<楽譜の収録曲>
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ト短調 BWV 1001
バッハ/コラール「主よ、人の望みの喜びよ」 BWV 147
・パガニーニ/カプリース ホ長調 Op.1-9
・シューマン/献呈 Op.25-1
・シューマン/蓮の歌 Op.25-7
・ブラームス/愛の歌 より Op.25-1, 2, 3, 6
・チャイコフスキー/ワルツ 変イ長調 Op.40-8
・フォーレ/夢のあとに
・マーラー/恋人の婚礼のとき

Product Cover look inside Trascrizioni da concerto Composed by Sergio Fiorentino, Riccardo Risaliti. Published by Edizioni Curci (CU.EC11724).


—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

コルトー編のバッハピアノ編曲が収録されたCD

アルフレッド・コルトー、言わずと知れた大ピアニストですがバッハの曲も幾つか編曲しています。最も有名なのは、協奏曲 BWV1056の第2楽章を「アリオーソ」として編曲したもの。これは多くの録音があります。また、有名なトッカータとフーガ ニ短調 BWV 565も編曲しており、これもいくつか録音が残っています。それ以外にはオルガン協奏曲 ニ短調 BWV 596があり、コルトー本人の録音が残されていますが、今のところ楽譜の存在が確認できていません。
さらに、協奏曲 BWV 1052と協奏曲 BWV1056の二台ピアノ用の編曲(リダクション)も残しています(確認できていないだけで、他にもあるかもしれません)。
さて、今回は最近リリースされたものも含め、コルトー編曲のバッハが収録されたCDを紹介します。
まずは中国のピアニスト、ユエ・へ の演奏で『アルフレッド・コルトーによるピアノ独奏編曲集』。バッハのアリオーソトッカータとフーガの他、フォーレ、フランク、シューベルト、ショパンなどの名曲の編曲が含まれています。コルトーのピアノソロ用編曲だけを並べたCDというのは今まで他に無く、極めて意欲的な取り組みといえるでしょう。
次に、去年ハイペリオンから出たスティーブン・ハフの 『Stephen Hough’s French Album』 。こちらもアリオーソトッカータとフーガですが、トッカータとフーガはさらにハフが華やかにアレンジしています。
最後にもう一つ、コルトー本人の演奏によるブランデンブルク協奏曲集のCD。ブランデンブルク協奏曲はコルトー指揮(第5番は弾き振り)でオケ付きですが、余白にピアノソロ編曲であるアリオーソオルガン協奏曲 ニ短調 BWV 596が収録されています。これは必聴です。
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

Alexander Ioheles plays Bach

Transcribed For Piano: Antony Gray今回もバッハのピアノ編曲が収録されたCDの紹介です。Alexander Ioheles/Alexander Ioheles Vol.1 – J.S.Bach: Lute Partita BWV.997, Partitas for Solo Violin No.2, No.3, etc [VVCD00246]
アレクサンドル・イオヘレス(Alexander Ioheles, 1912-1978) は、ロシアのピアニストであり教育者。ヨヘレス(Jocheles)と表記されることもあるようです。
私は今回初めて知りましたが、レパートリーの中心にバッハの音楽があり、しかもバッハの王道プログラムではなく、若干知名度の低い名曲を中心に取り上げていたとのことで、バッハ好きの私から見て大歓迎な音楽家でした。ピアニストとしてはイグムノフの弟子であり、その後モスクワ音楽院、グネーシン音楽学校で後進の指導に当たっていました。
Vista Vera のライナーノーツによると、このCDに収録された録音も今回初出(録音年代は1960年~1975年)とのこと。他で聞けないペトリ編のリュート・パルティータや、イオヘレス本人の編曲など、興味深いプログラムです。全体的にゆったりと味わい深く、ペダルを多用した演奏です。
なお、CDにも一部の曲目には編曲者名が無く、タワーレコードなど日本のサイトでも「編曲者不詳」と表示されていますが、おそらくサン=サーンス編曲で間違いないと思われます。
また、ネメロフスキー(Aleksandr Nemerovsky, 1859-1915)はロシアの作曲家で、トッカータとフーガヴィヴァルディ=バッハの協奏曲などの編曲を知っていましたが、シチリアーノの編曲があるとは知りませんでした。なお、日本の通販サイトは一律「メネロフスキー」と表記されていますが、おそらく間違いでしょう。

2013/8/15追記:ネメロフスキー編のシチリアーノイオヘレス編の各種編曲、それぞれ楽譜を入手しました。

<収録曲目>
ペトリ編曲:リュートのためのパルティータ ハ短調 BWV997
ゴドフスキー編曲:「サラバンドとドゥーブル」~無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ロ短調 BWV1002 より
サンサーンス編曲:「序奏とコラール」~カンタータ第3番 BWV3 より
サンサーンス編曲:「レチタティーヴォ、アリアとコラール」カンタータ第30番 BWV30 より
サンサーンス編曲:「アリア」~カンタータ第36番 BWV36 より
サンサーンス編曲:「ガヴォット」~無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV1006 より
サンサーンス編曲:「ラルゴ」~無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 BWV1005 より
イオヘレス編曲:コラール前奏曲「おお、人よ、自分の罪の大きさを嘆け」 BWV622
ペトリ編曲:「羊たちは安らかに草を食み」~カンタータ第208番 BWV208 より
イオヘレス編曲:「レチタティーヴォ」~カンタータ第51番 BWV51 より
イオヘレス編曲:「アリア」~マニフィカト BWV243 より
ネメロフスキー編曲:「シチリアーノ」~フルートとチェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031 より
—-(ご参考)Amazonでの入手方法—-

Transcribed For Piano: Antony Gray

Transcribed For Piano: Antony Gray
今回もCDの紹介です。少し前になりますが、今年の春、バッハのピアノ編曲をたくさん集めた興味深いCDが発売されました。「Transcribed For Piano: Antony Gray」で、CD3枚組です。1枚目は「A Bach Book for Harriet Cohen」やコーエンの編曲を中心に、2枚目はサン=サーンス、ケンプ、ブゾーニ、タウジッヒ等の比較的メジャーなバッハのピアノ編曲、3枚目はピアノ編曲の他にバッハをモチーフに作曲された近代の作品が収録されています。私は相当のバッハの編曲を知っているつもりでしたが、特に3枚目には初めて見るような編曲が多数ありました。また楽譜も半数は見たことがありません。曲目データベース上も整理しきれていないのですが、まずは編曲者・曲目とともに紹介します。
【CD1】
RALPH VAUGHAN WILLIAMS (1872-1958)
Chorale Prelude ‘Ach, bleib bei uns, Herr Jesu Christ’ BWV649
CONSTANT LAMBERT (1905-1951)
Chorale Prelude ‘Der Tag, der ist so freudenreich’ BWV605
EUGENE GOOSSENS (1893-1962)
Brandenburg Concerto No. 2 in F major, BWV1047: II. Andante
ARNOLD BAX (1883-1953)
Fantasia, BWV572
JOHN IRELAND (1879-1962)
Chorale Prelude ‘Meine Seele erhebt den Herren’ BWV648
HERBERT HOWELLS (1892-1983)
Chorale Prelude ‘O Mensch, bewein dein Sünde groß’ BWV622
LORD BERNERS (1883-1950)
In dulci jubilo, BWV729
WILLIAM GILLIES WHITTAKER (1876-1944)
Chorale Prelude ‘Wir glauben all’ in einem Gott, Vater’ BWV740
ARTHUR BLISS (1891-1975)
Chorale Prelude ‘Das alte Jahr vergangen ist’ BWV614
FRANK BRIDGE (1879-1941)
Aria ‘Komm, süsser Tod’ BWV478
WILLIAM WALTON (1902-1983)
Chorale Prelude ‘Herzlich tut mich verlangen’ BWV727
JOHANN SEBASTIAN BACH (1685-1750)
– Partita in E major, BWV1006a (Violin Partita No. 3 in E major, BWV1006): III. Gavotte en Rondeau
– Sonata in D minor, BWV964 (Violin Sonata No. 2 in A minor, BWV1003): III. Andante
OTTO SCHRÖDER
Cantata BWV106 (Actus Tragicus): Sonatina
CYRIL SCOTT (1879-1970)
Aria ‘Mein gläubiges Herze’ from Cantata BWV68
HARRIET COHEN (1895-1967)
Chorale ‘Ertödt’ uns durch dein’ Güte’ from Cantata BWV22
Chorale Prelude ‘Liebster Jesu, wir sind hier’ BWV731
Recitative and Aria ‘Wirf, mein Herze, wirf dich noch’ from Cantata BWV155
PERCY ALDRIDGE GRAINGER (1882-1961)
Blithe Bells (Cantata BWV208 ‘Was mir behagt, ist nur die muntre Jagd’)
【CD2】
CAMILLE SAINT-SAËNS (1835-1921)
Sinfonia from Cantata BWV29 ‘Wir danken dir, Gott, wir danken dir’
Adagio from Cantata BWV3 ‘Ach Gott, wie manches Herzeleid’
Sinfonia from Cantata BWV35 ‘Geist und Seele wird verwirret’
WILHELM KEMPFF (1895-1991)
Largo from Keyboard Concerto in F minor, BWV1056
Chorale Prelude ‘Ich ruf zu dir, Herr Jesu Christ’ BWV639
Chorale and Chorale Prelude BWV307/734
Chorale ‘Jesus bleibet meine Freude’ from Cantata BWV147
CARL TAUSIG (1841-1871)
Chorale Prelude ‘Wir glauben all’ an einen Gott, Schöpfer’ BWV680
ANONYMOUS, 19th century
– Cantata BWV182 ‘Himmelskönig, sei willkommen’: Sonata (Grave. Adagio)
– Cantata BWV42 ‘Am Abend aber desselbigen Sabbats’: Sinfonia
CHARLES-VALENTIN ALKAN (1813-1888)
Siciliano from Flute Sonata in E-flat major BWV1031
HAROLD BAUER (1873-1951)
– Cello Suite No. 6, BWV1012: V. Gavotte I & II
– Cello Suite No. 1, BWV1007: V. Minuetto I & II
FERRUCCIO BUSONI (1866-1924)
Adagio from Toccata in C major BWV564
Chorale Prelude ‘Nun komm’ der Heiden Heiland’ BWV659
MAX REGER (1873-1916)
Toccata and Fugue in D minor, BWV565
【CD3】
GIUSEPPE MARTUCCI (1856-1909)
Orchestral Suite No. 3 in D major, BWV1068: II. Air
Orchestral Suite No. 2 in B minor, BWV1067: VI. Menuet and VII. Badinerie
WILLIAM GILLIES WHITTAKER (1876-1944)
Pastorele in F Major BWV590
TIVADAR SZÁNTÓ (1876-1953)
Prelude and Fugue in G minor, BWV535
ANTONY GRAY
– ‘Letzte Stunde, brich herein’ – Aria from Cantata BWV31 ‘Der Himmel lacht, die Erde jubilieret’
JUDITH WEIR (b.1954)
– Roll off the Ragged Rocks of Sin (arranged from the aria ‘Wer bist du? Frage dein Gewissen, from Cantata BWV132 ‘Bereitet die Wege, bereitet die Bahn’)
EARL WILD (1915-2010)
Hommage à Poulenc (arranged from Keyboard Partita No. 1 in B-flat major, BWV825: IV. Sarabande)
FRANÇOIS SARHAN (b.1972)
– Prelude and Fugue in C major, BWV846
MICHAEL BLAKE (b.1951)
– BWV Fragments
– Oh Clare (arranged from ‘Jesu, Joy of Man’s Desiring’ – Chorale from Cantata BWV147 ‘Herz und Mund und Tat und Leben’, as arranged by Myra Hess)
MICHAEL FINNISSY (b.1946)
– Joh. Seb. Bach
FRANK MILLWARD
– Crucifixion Blues (arranged from Mass in B minor, BWV232: ‘Crucifixus’)
ANDREW TOOVEY (b.1962)
– Cantus Firmus
SALLY MAYS
– ‘O Haupt voll Blut und Wunden’ – Chorale from St Matthew Passion, BWV244
ANDREW SCHULTZ (b.1960)
– Sleepers Wake – Karalananga – from Journey to Horseshoe Bend
GABRIEL JACKSON (b.1962)
– Carillon: In Dulci Jubilo
—-(関連音源)Amazonでの入手方法—-

ジョン・ルイスの平均律第1巻のジャズ編曲盤

今回は、ジョン・ルイス率いるカルテットやトリオなどのアンサンブルで演奏する、平均律クラヴィーア曲集 第1巻 の全曲をジャズ編曲したCDを紹介します。
バッハのジャズ編曲としてメジャーなのは、ジャック・ルーシエの「Play Bach」シリーズなどがありますが、このジョン・ルイスの録音のユニークなところは、抜粋ではなく平均律第1巻の前奏曲とフーガを全曲編曲して演奏しているところです。前奏曲はピアノ・ソロで、フーガはアンサンブルで演奏するスタイルで、バッハのほぼ原曲どおり始まり、ジャズ風に展開され、また原曲に回帰するような編曲です。
もちろん全曲が一気に編曲されたわけではなく、5年もかけて少しずつ作られては録音されてきたようです。昨年末に韓国のレーベルから4枚組みにまとめて発売されたものを私は購入しました。上のリンクはその4枚組のものです。バラでも売っている(Vol. 4だけ見当たらず)ようで、以下Amazonのリンクを用意しておきます。
ピアノ編曲の中でもジャズ編曲というのは一つの分野になるほどたくさんありますが、残念ながら私のバッハ編曲研究の中ではまだ十分に語れるほど情報が集められていません。将来的にはここでたくさん紹介できるように、少しずつ情報を集めていこうと思います。
—-(関連音源)Amazonでの入手方法—-

(4枚組)(Vol. 1)(Vol. 2)(Vol. 3)

Bach Metamorphosis

Bach metamorphosis
先月、また大変興味深いCDがリリースされました。Bach Metamorphosis、変容するバッハですね。今までであまり取り上げられなかった編曲、または現代の音楽家による編曲が収録されており、私も半分くらいの編曲の楽譜が未入手です。
ピアニストは Angelika Nebel 、以前も Bach Transcriptions for Piano というレア編曲を集めたCDを出していた人です。今回はメジャーレーベルなのが素晴らしいです。とりわけ、最後に収録されたプラド編の「6声のリチェルカーレ」が秀逸。
HMVではこちらで購入可能です。
収録曲は以下のとおりです。

1. 前奏曲とフーガ イ長調BWV536(ブラウンフェルス)
2. いざ来たれ、異教徒の救い主よBWV661(イリイーン)
3. 小フーガ ト短調BWV578(ブリスキエル)
4. 「クリスマス・オラトリオ」BWV248よりパストラール(ルーカス)
5. 主のひとり子なるキリストBWV601/われらの主イエス・キリスト、ヨルダン川に来たれりBWV684(ディデンコ)
6. おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆けBWV622(タウジッヒ)
7. ああ、われらのもとにとどまれ、主イエス・キリストBWV649(ヴォーン・ウィリアムズ)
8. 「フルートソナタ」BWV1031の2よりシチリアーノ(フィリップ)
9. ただ愛する神の摂理にまかす者BWV642(ゴンチャロフ)
10. われらが神はかたき砦BWV720(マードック)
11. ああ、いかにはかなく、いかに空しきBWV644(イリイーン)
12. 「音楽の捧げもの」BWV1079より6声のリチェルカーレ(プラド)
ピアノ:アンゲリカ・ネーベル

Recordings from Feinberg’s Private Archive

J.S.Bach: Well Tempered Clavier, Clavier Works & Feinberg's Piano Transcriptions, etcサムイル・フェインベルグ(Samuil Feinberg, 1890-1962)に関しては、このホームページでも何度も取り上げてきました。今回紹介するCDは、フェインベルグの没後50年を区切りに整理されてリリースされた、プライベート録音集。中身を確認してみるとほとんどが初出という、マニア垂涎アイテムでした。
Amazonやタワーレコードのサイトで表示されているタイトルや商品説明が、「J.S.Bach: Well Tempered Clavier, Clavier Works & Feinberg’s Piano Transcriptions, etc」のようになっていて4枚組なので、既出の平均律全集と余白に編曲が収録されたコンピレーションCDかと思わせておりあまり期待していませんでした。しかし!なんと平均律の録音は既出のものとは別の、おそらく公式録音の前に、音楽院のホールにある録音設備でテスト的に収録されたもののようなのです。残念なのが、第1巻の後半(13−24番)が消失しているのですが、第2巻は全曲揃っています。公式録音もそうですが、フェインベルグの平均律は全曲を通して1曲かのように感じさせる演奏、そしてここでは明らかに公式録音と違う演奏が聴けます。
そして4枚目、いくつかのシンフォニアや、イギリス組曲のブーレ、フーガなど初めて耳にする録音が多数。フーガ イ短調 BWV 944は、録音の存在は知りつつも長らく入手がかなわなかったものなので、とても嬉しいです。このフーガには短いプレリュードがついており、バッハの楽譜上はアルペジオと書かれた和音が書かれているだけですが、ここではフェインベルグによるリアリゼーションを聴くことができます。

4枚目の収録曲は以下の通りです。
 ・3声のシンフォニアから、2, 5, 9, 12, 15番
 ・イギリス組曲 第2番 BWV 807 ブーレI, II
 ・パルティータ 第1番 BWV 825
 ・トッカータ ニ長調 BWV 912
 ・オルガンコラール前奏曲のフェインベルグ編曲
 ・フーガ イ短調 BWV 944
その他、装丁も豪華になっており、ライナーノーツも写真含めかなり充実しています。
何にせよ、このCDはフェインベルグファンにとって愛蔵盤となることは間違いありません。

Gelber and Weissenberg plays Bach Transcriptions

Gelber and Weissenberg plays Bach Transcriptions
EMIから、初CD化含むバッハ編曲集のコンピレーションCDがリリースされました。演奏者はブルーノ・ゲルバー とアレクシス・ワイセンベルク。ワイセンベルクの録音は、以前も紹介したワイセンベルグのバッハ編曲集CDと同じもの(一部曲目省略あり)のため、ここではゲルバーの演奏を中心に紹介します。
1967年パリでの録音で、今回が初CD化(トラック1−7)とのこと。当時26歳、若いころの演奏だけあって、その勢いは凄まじいものがあります。特にシャコンヌニ長調の前奏曲とフーガ、そしてカンタータ29番のシンフォニア。また、低音の鳴らし方が実に豪快、例えばサンサーンス編のシンフォニアで全音符がタイで繋げられた保続音は、連打して存在感を出していたり、演奏者なりのさらなる工夫が聞けます。
これらの激しい部分のある3曲の間には気品のあるコラール前奏曲が挿入されていて癒されます。最後にはシロティ編のオルガン前奏曲 ホ短調 BWV555でしっとりと締めくくります。演奏会のアンコールのようなプログラミングなのでしょうか。
併録のワイセンベルクの演奏も素晴らしいですし、価格も安いですし、かなりオススメできるCDだと思います。
HMVではこちらで購入できます。
収録曲は以下のとおりです。

1. 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004~シャコンヌ (ブゾーニ)
2. コラール前奏曲「我,汝を呼ぶ,主イエス・キリストよ」BWV639 (ブゾーニ)
3. コラール前奏曲「来たれ,異教徒の救い主よ」BWV659 (ブゾーニ)
4. カンタータ 第29番より シンフォニア BWV29/1 (サンサーンス)
5−6. プレリュードとフーガ ニ長調 BWV532 (ブゾーニ)
7. プレリュード ホ短調 BWV555 (シロティ)
8. カンタータ第147番BWV147~コラール「主よ,人の望みの喜びよ」 (ヘス)
9. コラール前奏曲「いまぞ喜べ,愛するキリストの信者たちよ」BWV734 (ブゾーニ)
10. フルート・ソナタ第2番BWV1031~シチリアーノ (ルストナー)
11-12. プレリュードとフーガ イ短調BWV543 (リスト)
13. プレリュード ロ短調BWV855a (シロティ)
14-15. トッカータとフーガ ニ短調BWV565 (ブゾーニ)
【演奏】
ブルーノ・ゲルバー (1-7)
アレクシス・ワイセンベルク (8-15)